スタイリングだけじゃなく中身もワイルドな性能を持つ「BMW M2」に試乗

今でも6速MTが選べる新型「BMW M2」に試乗して「460PS」と「オーバーフェンダー」を堪能

新型M2が搭載するのはS58型3.0リッター直6ツインターボ。つまり現行のM3/M4と同じユニットで、その最高出力は460PSはわずか20PSしか変わらない。
新型M2が搭載するのはS58型3.0リッター直6ツインターボ。つまり現行のM3/M4と同じユニットで、その最高出力は460PSはわずか20PSしか変わらない。
サーキット走行も視野に入れたBMW Mハイパフォーマンスモデルの末弟、M2。今となっては希少なマニュアルトランスミッションの選択肢を備えた最新のM2は、G87型へとフルモデルチェンジを敢行してどのような進化を遂げたのか?

BMW M2

搭載されるユニットは現行のM3/M4と同じ

トランスミッションは8速ATと6速MTが選択可能なのも嬉しい。

2022年、M銘柄の世界販売台数は驚くことに17万7000台余を記録したという。コロナ禍の中、対前年比で8.4%増のスコアは立派なもの。その原動力となったのが主力のM3/M4のフルモデルチェンジであったことは想像に難くない。この2銘柄とSUV系のモデルが販売的な屋台骨を支える中、Mブランドのエントリー的な役割を果たしているのがM2だ。初代のF87型は2015年の登場以来、6万台を超える販売台数を記録。そのうちの6%を日本市場が占めているという。もっとも、日本においてM2が支持される理由はコスパ的なところもあれど、絶妙なサイズとパワーという側面も大きい。特にE30やE36の世代からM3に親しみ、Mブランドへの理解が深い層は、M2にかつてのそのイメージを重ねているところもあるはずだ。

そんなモデルゆえ、注目される最初のフルモデルチェンジ。G87型となった新しいM2。そのディテールを吟味するに、その内容を端的に表現すればM3/M4の凝縮版としても大袈裟ではない。とりわけ注目されるのは搭載エンジンだろう。初代は汎用設計のN55型に独自のチューニングを加えていたが、マイナーチェンジを機にM専用のS55型にスイッチしていた。新型M2が搭載するのはS58型。つまり現行のM3/M4と同じユニットだ。3.0リッター直6ツインターボの最高出力は460PS。M3/M4のスタンダードモデルより20‌PS低いだけで、トルクは550Nmとまったく同じ。そしてレッドゾーンは7200rpmからと、こちらも同じ設定となる。

搭載するトランスミッションは初代の2ペダル仕様7速M DCTから、ZF製8HPをベースとする8速Mステップトロニックに改められた。そして6速MTも継続して設定されている。駆動伝達系では後軸側に電子制御でロック率を可変できるMスポーツディファレンシャルを配するのも初代と同じだ。

往年の2002ターボや3.0CSLを重ねてしまう

Mが手掛ける最新の直6が搭載されるという安堵もさておき、新しいM2のハイライトはスタイリングにもみてとれる。ベースとなる2シリーズクーペに比べると60mm、前型に比べても30mm拡幅されたボディは迫力十分。バンパーに設けられたインレットの武骨な開口面が不敵さを更に高めている。パンと張ったフロントアーチやリヤブリスターに、1970年代の2002ターボや3.0CSLを重ねてしまうのはクルマ好きのおじさんの性だろうか。

そのフェンダーの内側に収まるタイヤのサイズはM4に設定されたそれとまったく同じだ。あくまでディメンション的にみれば、M2は同じエンジンを搭載するM4のショートホイールベース版という側面も窺える。その差は110mmというから、運動性能への影響は大きいはずだ。

内装・装備は最新のBMWのフォーマットに則ったもので、メータークラスターとインフォテインメントをひと繋ぎとするカーブドディスプレイを採用、iDriveのOSも最新の8.0が内包されている。サイドブレーキが電動式となったのはドライビングの自由度を最優先するMT派には痛いところだが、一方でATモデルにはアダプティブ・クルーズ・コントロールを筆頭に先進運転支援システムもひと通りのものが揃えられる。日本での価格はMTもATも変わらないというから、選択は悩みどころだろう。

用意された試乗車はMT仕様だ。乗り込むや、10kgの軽量化に貢献するというオプションのセミバケットシートのタイトな掛け心地が気を引き締めてくれる。

身のこなしの素早さにM4との車格差を実感

走り始めてまず気づいた変化のポイントはMTのシフトフィールだ。個人的にBMWのそれは縦方向のトラベルの手応えが希薄なものが多い印象だが、新しいM2では歯車に噛み込まんとするカッチリした手応えが高められている。クラッチのリンケージに癖もなく、操って嬉しいMTとしての味わいは一歩深まったように思う。

低速域での乗り心地はさすがにドライなところはあるが、細かな入力の角は丸められていて我慢を強いられるほどの不快さはない。この辺りは電子制御可変ダンパーの採用によるカバー域の拡大が効いているのだろう。そして速度域が上がるのに呼応して、フラットライド感はしっかり高まっていく。伝わり来るボディ剛性や摺動モノの精度はやはりベースのM240i辺りとは一線を画するところだ。

旋回のシャープネスはディメンションから想像するよりも刺々しくはなく、ゲインの立ち上がりから舵角を深めていくところでのGやロールの繋がり感も綺麗だ。一方で、急転舵を要するようなつづら折れでは身のこなしの素早さにM4との車格差を実感する。試乗コースにはアップダウンとコーナーとが折り重なるイギリスのカントリー路のような難所もあったが、サスのストローク感や上屋のバウンドの収まりも綺麗に躾けてあって、期待通りの軌跡をしっかり捉え続けてくれた。

FRの知見に長けたBMWの仕事

ベースとなる2シリーズクーペと比べて60mm、前型に比べても30mm拡幅されたボディは迫力十分。

タイヤの接地性の高さは加速にも現れていて、460PSをFRで収める難しさを鑑みればトラクションコントロールの類が介入する機会は驚くほど少ない。このクルマに乗る何よりの歓びである、直6を伸び伸びと回し切ることについて、コンパクトな体躯が不利に働かない辺りは、さすがFRの知見に長けたBMWの仕事だと感心させられた。珠玉の内燃機をシンプルに味わい尽くすという一点をもってしても、M2は今考えられる最高のパッケージだと思う。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/BMW AG
MAGAZINE/GENROQ 2023年6月号

SPECIFICATIONS

BMW M2

8速AT〈6速MT〉

ボディサイズ:全長4580 全幅1887 全高1403mm
ホイールベース:2747mm
車体重量:1725kg〈1700kg〉
エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2993cc
最高出力:338kW(460PS)/6250rpm
最大トルク:550Nm(56.0kgm)/2650-5870rpm
トランスミッション:8速AT〈6速MT〉
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルジョイントスプリングストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/35ZR19 後285/30ZR20
0-100km/h加速:4.1〈4.3〉秒
最高速度:250km/h(リミッター介入。Mドライバーズパッケージは285km/h)
燃料消費率:9.8-9.6L/100km〈10.2-10.0L/100km〉(WLTPモード)
車両本体価格:958万円 ※価格以外の諸元は本国仕様

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

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