「ポルシェ 911とBMW M4」永遠のライバルのスポーツカー2台比較試乗

永遠のライバル「ポルシェ 911とBMW M4」ラグジュアリースポーツカー2台それぞれの魅力を考えながら比較試乗

1000万円台のスポーツカーの世界で、常にベンチマークとされているのが911だ。一方、Dセグメントベースのホットモデルとして高い人気を誇るM4。気筒数は同じ、価格も近いがパッケージがまるで異なるドイツの珠玉の2台、その印象の違いは。(GENROQ 2023年12月号より転載・再構成)

BMW M4 Coupe Competition M xDrive
X
Porsche 911Carrera T

どちらも排気量3.0リッターの6気筒ツインターボ

「カレラSの足」に「カレラのエンジン」を組み合わせた911カレラTは、911シリーズの中ではベーシックグレードに近い存在。一方のM4 コンペティションM xDriveは、名実ともに4シリーズのトップパフォーマー。かくのごとく2台の立場は違えども、価格はカレラTの方が200万円高いだけと、意外と近い関係にある。

ピュアスポーツカーとスポーツクーペ、それぞれの世界を代表する2台の戦いは、パワーと車重を巡る戦いでもある。どちらも排気量3.0リッターの6気筒ツインターボであることには変わりないものの、最高出力は385PS対510PS、最大トルクは450Nm対650Nmで、いずれもM4に軍配が上がるのだ。

ただし車重は7速MTのカレラTが1460kgと軽いのに対し、4WDを採用するM4は1790kgとヘビー級(いずれも車検証上の数値)。それでもパワーウエイトレシオ、トルクウエイトレシオともにM4が優っている点は特筆すべきだ。

それでは、ワインディングロード中心に比較試乗するとどんな結果になるのか。私個人の率直な印象を、以下に記していこう。

心が沸き立つような刺激

まずはカレラTで全開加速を試すと、まずまず軽快ではあるものの、決して大パワーに圧倒されるという感じにはならない。大迫力の発進加速を味わいたいだけであれば、スポーツ系BEVを選んだ方が無難だろう。けれども、ボクサー6の個性的な鼓動感、そして心が沸き立つような刺激を味わいたいなら、カレラTの方がはるかに魅力的。そこには良質なメカニズムでなければ表せない官能性が、確かに存在している。

一方、M4に搭載されるストレート6は、なるほどカレラTより一段とパワフルだ。しかも「回すとパワーが出る」NAエンジン的なカレラTとは異なり、M4はスロットルペダルと踏んだ直後に生み出される中速トルクが分厚く強大。ただし、M4はエンジン音が控えめなうえ、バイブレーションもほぼ伝わってこない。「これがシルキー6の味わい」といってしまえばそれまでだが、ストレート6ならではの精緻な鼓動感は、M4だったらもっと強調してもよかったのではないか。

カレラSと同じスポーツサスペンションが装備されているとの触れ込みのカレラTだが、足まわりがスムーズにストロークするという点ではタイプ992のなかでも断然トップ。個人的には、このくらい足が動いてくれたほうが4輪の接地感が掴みやすくて嬉しい。そのハンドリングはタイプ991までのカレラによく似ていて、乗り始めた直後から自信を持って操ることができる。

比較的ソフトな足まわりでも、大きなピッチングやローリングで不安定な姿勢に陥ることなく、4輪がしっかりと路面を捉え続けてくれるのは、911の低重心設計が効を奏しているからといって間違いない。しかもステアリングフィールが潤沢で、かすかな操舵にも的確に応答してくれる。ちなみに全高はM4よりちょうど10cm低い129cm。スポーツカーにとって、やはり低さは正義だ。

一方のM4は、先代とは別物のしなやかな設定で、ロードホールディングは格段に向上。それでいながらボディの不用意な動きはうまく抑え込まれているので、たとえばトレーリングブレーキでターンインしてからブレーキをリリースしても、これまでと違って安定したハンドリングを維持してくれる。この点は高く評価したいけれど、それでもカレラTに比べれば重心高の高さは如何ともしがたく、ハードコーナリングではつま先立ったような接地感を示すことがあった。先代に比べればしなやかな足まわりも、カレラTとの比較ではぎこちなさを感じてしまう。

微舵応答が穏やかなステアリング

それらと並んで残念だったのが、M4のステアリングフィールである。路面の感触を的確に伝えてくれる点ではカレラTに遜色がないものの、反力感が乏しいこともあって、フロントのグリップが抜けていく様子がわかりにくい。ステアリングホイールから前輪までが完全に剛体結合されているかのような微舵応答を示すカレラTに比べると、わずかな操舵に対する反応がやや穏やかに感じられる点も、スポーツ派ドライバーには物足りないところだろう。

こう書くと、なんだかM4がスポーツクーペとして実力不足と思われるかもしれないが、これはあくまでもワインディングロードで比較した場合の印象である。ハイウェイであれば510PSのパワーを駆使して余裕あるクルージングが楽しめるはずだし、そんなときには微舵応答が穏やかなステアリングが味方になってくれるはず。要は、カレラTとM4とで得意科目が大きく異なっているだけといえなくもないのだ。

それでも、ワインディングロードでは車重や重心高がクルマのキャラクターを決定的に左右することは間違いない。とりわけ、M4は4シリーズがエンジン車とBEVでプラットフォームを共用するようになった影響なのか、着座位置がはっきりと高くなったことが気になる。この点、シートが路面のすぐ上に位置するカレラTであれば、スポーツカーの醍醐味を満喫できるはずだ。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年12月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ911カレラT

ボディサイズ:全長4530 全幅1852 全高1291mm
ホイールベース:2450mm
乾燥重量:1470kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
排気量:2981cc
最高出力:283kW(385PS)/6500rpm
最大トルク:455Nm(46.4kgm)/1950-5000rpm
トランスミッション:7速MT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR21
車両本体価格:1757万円

BMW M4クーペ・コンペティションM xドライブ

ボディサイズ:全長4805 全幅1885 全高1395mm
ホイールベース:2855mm
乾燥重量:1790kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCツインターボ
排気量:2992cc
最高出力:375kW(510PS)/6250rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2750-5500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/40R18 後285/35R19
車両本体価格:1440万円

問い合わせ
BMWカスタマー·インタラクション·センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

わずか1470kgという、モデル最軽量を実現した「ポルシェ 911カレラT」。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…