今年も盛況を極めた「フィナーリ・モンディアーリ・フェラーリ 2023」

「フィナーリ・モンディアーリ・フェラーリ 2023」で見たレーシング・フェラーリの愛され方

ムジェロに集結した200台を超えるレーシング・フェラーリと、それをグランドスタンドで迎えるフェラーリファン。サーキットはまさに年に一度のお祭りに相応しい華やかさに包まれた。
ムジェロに集結した200台を超えるレーシング・フェラーリと、それをグランドスタンドで迎えるフェラーリファン。サーキットはまさに年に一度のお祭りに相応しい華やかさに包まれた。
世界各地で開催されるフェラーリ・チャレンジ。その最終決戦の場として始まったフィナーリ・モンディアーリは、今やフェラーリのモータースポーツ活動の1年を振り返る重要なファンイベントだ。フェラーリにおけるレーシングの重要性を存分に体験できる魔法のような空間を取材した。(GENROQ 2024年1月号より転載・再構成)

Finali Mondiali Ferrari 2023

年に一度のレーシング・フェラーリの祭典

もともと各地域のフェラーリ・チャレンジのチャンピオンを決定する最終戦として1998年に始まった「フィナーリ・モンディアーリ・フェラーリ」。当時の主役はF355チャレンジだったという。

現在、欧州、北米、英国、日本という4シリーズが開催されるが、そのうちの欧州と北米のコンチネンタルシリーズ最終戦を兼ねた年に一度のレーシング・フェラーリの祭典として、フェラーリ・チャレンジだけでなく、F1クリエンティやXXプログラムなど様々なカテゴリーのフェラーリが会場内を埋め尽くし、近年では新車の発表、と言っても市販のスポーツカーではなくレーシングカーのニューモデルの発表も行われる。とにかくフェラーリファン(ティフォシ)にとっては夢のようなイベントである。

当然のことながら毎回サーキットで開催されるが、2023年の開催地はイタリア・トスカーナ州のアウトドローモ・インテルナツィオナーレ・デル・ムジェロである。ちなみに2022年はイモラで開催され、来年もふたたびイモラが予定されており、コロナ禍以降は交代で開催されるようになっている。今回は10月24日のクラブチャレンジを皮切りに29日まで6日間にわたり開催された。私は、そのイベント会場を訪れ、ティフォシの熱気に触れたので報告したい。

200台を超えるレーシング・フェラーリが集結

今年のフィナーリ・モンディアーリ・フェラーリの目玉は、なんと言っても2つの24時間レースを制した2台のレーシングカーであろう。耐久レースの最高峰、ル・マン24時間レースのトップカテゴリーに50年ぶりに復帰し、58年ぶりに総合優勝を成し遂げた499Pと、強豪ひしめくニュルブルクリンク24時間レースで、同じく総合優勝を遂げた296GT3だ。ともに2023年デビューで、いきなり勝ってしまったという点も共通している。

もちろん主軸となるのは、例年どおりにワンメイクシリーズ、フェラーリ・チャレンジだ。その最終戦に世界中からフェラーリ488チャレンジEvoが集結した。エントリーリストによれば欧州シリーズのトロフェオ・ピレリ・クラスに30台、同じくコッパ・シェル・クラスに44台、北米シリーズからも30台という合計104台もの参加があったのだ。

純粋にサーキット走行を楽しむオーナーのための専用マシン向けのXXプログラムには、FXXや599XX、FXX Evo Kといった歴代XXモデルが多数参加し、事前情報では過去最多の57台がエントリーしたという。もちろんレーシング・フェラーリの花形であるF1クリエンティも開催され、個人所有のF1マシンが19台も走行したという。あるいは過去30年間で登場したGTレーシングカーが参加できるクラブ・コンペティツィオーニGTも、このプログラムのために特別に製作された488GTモディフィカータを含めて39台の大量エントリーがあった。都合200台を超えるレーシング・フェラーリがムジェロに集結し、サーキットはまさに年に一度のお祭りに相応しい華やかさに包まれた。

老いも若きもそれぞれの形で楽しむフェラーリ

このイベントは、オーナーや関係者だけでなく、いわゆる一般入場が可能で、会期中グランドスタンドも含めて、ファン向けイベントとしては驚くほどの来場者の姿があった。なおグランドスタンドにはフェラーリの従業員やスクーデリア・フェラーリ・クラブの会員のみが入れるなど、フェラーリ・ファミリー向けのイベントという側面もある。ちなみに関係者に今回のフィナーリ・モンディアーリ・フェラーリの来場者数を聞いたが、それは明かさなかった。否、その数字に興味がなかった。普段、フェラーリに熱狂するオーナーやファン、そしてファミリーの笑顔がそこにあれば、数字に意味はないということの表れかもしれない。

フィナーリ・モンディアーリ・フェラーリでは、レーシング・フェラーリだけではなく、フェラーリの現行スポーツカーラインナップもすべて展示されていた。パドック中央広場のステージには、近年発表されたワンオフ、フューオフのスペチアーレがずらりと並べられ、フェラーリやピレリなどオフィシャルショップもあって、サーキットのエキゾーストノートをBGMにのんびりと過ごすこともできる憩いの場であった。パドックのもっとも奥にある、国際的なスポーツ大会も開催可能な体育館ほどもある巨大テントの中には、歴代のF1マシンがところ狭しと並べられ、レーシングもスポーツカーもすべてを堪能するには滞在した3日間では到底足らないほどであった。

私も可能な限りサーキット場内を巡り、フェラーリファンとともにイベントを楽しんだが、カップル、小さな子ども連れ、老夫婦まで老若男女が、それぞれの形でフェラーリを楽しんでいた。1998年から、コロナ禍を除いて毎年のように開催されたイベントは毎回ティフォシを熱狂させてきた結果がここにある。

このイベント中、これまで試乗したことのないフェラーリ・スポーツカーへのメディア向け体験試乗を勧められ、日本未導入のローマ・スパイダーでムジェロサーキット周辺を数十分ドライブしたところ、すれ違うクルマは手を振り、ホーンを鳴らし、何かしらのリアクションを示してくれた。まるでファミリーの片隅に入れてもらえたような、実際にはホームステイレベルとはいえ、どこかくすぐったい感じだ。

フェラーリはイタリアの国技に近い

もう10年以上前のことだが、レーシングドライバーの田中哲也氏が458GT3のシェイクダウンでサーキットを訪れたという。その際、458GT3しか走っていないのにサーキットを訪れ、その走りを見に来ている観客が数十人もいたそうだ。シェイクダウンであってもフェラーリが走るなら見る。この感覚は日本人にとって野球や相撲に近いのではないかと感じた。プロ野球の練習に訪れる多くのファンや、相撲部屋で稽古を覗くファンなどまさに国技に近い形で、フェラーリはイタリアに根付いているのかもしれない。

次回のフィナーリ・モンディアーリ・フェラーリは、2024年10月16〜20日、イモラのアウトドロモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディノ・フェラーリで開催される予定だ。今回のイベントで200台を超えるレーシング・フェラーリがティフォシを熱狂させたように、来年も歓喜の渦がイモラで生まれることを期待してやまない。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/FERRARI S.p.A.、GENROQ
MAGAZINE/GENROQ 2024年 1月号

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吉岡卓朗

ゲンロクWeb編集長。趣味はクルマを用いたラリーやレースなどモータースポーツ活動だったが、現在はもっぱ…