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EVのリセールバリューが悪いのではない、一部の車種の影響が…
どうも日本では「EVのリセールバリューは悪い」ことを揺るぎない事実として、EV普及についての施策を考えている節がある。
たしかに、国内の中古車市場において、もっとも流通しており、EV相場への影響が大きい日産リーフについては中古車相場は低くなっている。とくに初代リーフについては、リセールバリューが良いとはいえないのは事実だ。
スマートフォンなどでもそうだが、通常リチウムイオン電池というのは充放電を繰り返すことで劣化していく。たとえばiPhoneのバッテリー状態は、「設定→バッテリー→バッテリーの状態と充電」という順にクリックしていくと数値で見ることができる。筆者の経験でいうと、購入直後は当然のように100%の最大容量を誇っていたバッテリーも2年程度の使用で80%台に落ちてしまう。
こうした現象はEVにおいても起きうる。実際、筆者がかつて所有していた初代リーフ(30kWh型)では、5年程度の利用でメーターのバッテリー表示が「セグ欠け」してしまった。これは初代リーフにおいては当たり前のように起きる症状で、バッテリーの性能劣化を意味している。
バッテリー性能が劣化してしまったことを、隠すことなくユーザーに知らせる姿勢は評価すべきだが、セグ欠けしたリーフというのは当然ながら中古車市場で評価は下がってしまう。結果として、初代リーフはリセールバリューが悪いという情報が広まることになったといえる。
ある銘柄のバッテリーはほとんど劣化しない
しかしながら、その事象だけを見て「リーフのリセールバリューが悪い=EVのリセールバリューが悪い」と考えてしまうのは、あまりにも短絡的といえる。台数的には少ないが、リーフに先行して誕生した軽EV、三菱アイミーブやミニキャブミーブの中古車相場を見ていると、けっしてリセールバリューが悪いとは思えないのだ。
ファクトベースでいうと、EVのリセールバリューが悪いのではなく、あくまでも「初代リーフはリセールバリューが悪い」という風に捉えるべきだ。
もっとも、アイミーブやミニキャブミーブ全般の中古車相場が高めになっているわけではない。具体的にいえば、10.5kWhと表記されるスペックのバッテリーを積んだグレード、モデルは高い相場を維持している。
その理由は、搭載する10.5kWhバッテリーの性能にある。このバッテリーのサプライヤーは東芝で、中身は同社が「SCiB」としてブランディングしている製品。その特徴は、とにかく劣化に強いことだ。
10年落ちに近い年式のアイミーブであっても、10.5kWh搭載車であればバッテリーの性能は基準値(バッテリー容量残存率)を100%で満たしていることが多い。むしろ、基準値を超えて105%あたりの数値を示す個体も珍しくないほどだ。
SCiBバッテリーを積んだアイミーブ&ミニキャブミーブについては中古車相場は崩れていない。はっきりいって同年式の初代リーフよりずっと高値をつけている。
これからは「バッテリー性能維持=中古車相場の安定」の時代が来る?
結論をまとめれば、EVはバッテリー劣化が激しいので中古車を買うのは危うい……というのは、少なくとも日本国内で流通しているモデルでいうと初代リーフによって生まれた風潮といえる。
リチウムイオン電池の特性として充放電によって劣化が進むのは事実であるから、中古EVにはバッテリーが傷んでいるというリスクはあるが、バッテリーの管理が進化してきていることもあって、初代リーフにおけるバッテリー劣化ほど心配しなくてもよくなっていくだろう。
実際、2代目リーフの中古車相場は、初代に比べると安定傾向にある。バッテリーの劣化を抑制できていることが相場に好影響を与えているといえる。
逆にいえば、中古EVを購入する場合は、バッテリーの劣化についてリサーチする必要がある。バッテリーの劣化が少ないモデルであれば、それなりに安心して選べるだろうし、逆に、そうではないモデルは避けたほうが吉といえる。
中古車販売店によっては、EVについてバッテリー容量残存率を計測、表記しているケースもある。これからEVの中古車流通が増えていくことを考えると、走行距離と同じような感覚でバッテリー容量残存率の数字を気にして中古車を探す時代がやって来るかもしれない。
2022年に新型車として登場したEVについては、何年も使われた個体が存在しないためバッテリー劣化に関するリアルな情報を得ることは難しい。数年後に、どのくらい劣化しているか、それとも高い残存率を示しているかでリセールバリューは変わってくるだろうし、それに伴って中古EVを購入するリスクも変わってくるだろう。
いずれにしても情報のアップデートを意識することが重要となりそうだ。