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軽自動車におけるスーパーハイトワゴン市場は、ホンダのNBOXやダイハツのタントが牽引する人気ジャンルで、軽自動車市場の約40%のシェアを占めるという。さらにそこにはスズキのスペーシアギア、ダイハツのタントファンクロスといったSUVテイストモデルも人気を集めている。
三菱はeKシリーズのスーパーハイトワゴンとしてeKスペースを設定しており、SUVテイストモデルとしてはeKクロススペースを設定していた。さらにここに三菱伝統の車名である「デリカ」の名を冠し、より走破性を高めたモデルを投入。
それが「デリカミニ」だ。
発売に合わせた取材会で、代表執行役副社長・中村達夫氏と商品企画責任者・藤井康輔氏がこのニューモデルへの意気込みを語った。
看板モデルの名に恥じない”三菱らしさ”
発表からはすでに4ヶ月、事前予約スタートからも3ヶ月が経過しており、東京オートサロンなどのイベントにも展示された「デリカミニ」の前評判は上場で、それが9000台という予約数にも表れている。
特に男性からは”カッコイイ”、女性からは”カワイイ”と評される「カッコカワイイ」デザインが人気に一端になっているという。
今回の発表取材会に登壇した代表執行役副社長・中村達夫氏はデリカミニでも”三菱らしさ”を強調。環境・安心・安全・快適が同社が謳う”らしさ”ではあるが、中村達夫氏はさらに三菱車は単なる移動のための手段ではなく、乗って、遊んで、生活を豊かにする、ワクワクするクルマであると語った。
また、私見としてデリカミニは三菱が提供するライフステージに応じたクルマの出発点、エントリーモデルとしての位置付けも期待しているという。ターゲットであるアクティブなユーザーがデリカミニからスタートし、エクリプスクロスやアウトランダー、あるいはデリカD:5へと乗り継いでいくことを考えているそうだ。
また、商品企画責任者の藤井康輔氏はデリカミニひいては三菱クルマは、ドライバーはもちろん同乗者も不安なく目的地まで移動でき、アクティビティを楽しみ、遊び疲れた後でも安心して帰路につけるクルマでなければならないと言う。そのための各種先進安全装備であり、デリカに期待される悪路走破性を実現する4WDと専用セッティングの足回りである。
さらに、かつては三菱といえばWRCのランサーエボリューションやパリダカのパジェロといったラリーやオフロードに強いイメージがあった。厳しい経営環境の中でこういったモータースポーツは長らく控えられてきたが、2022年にはアジアクロスカントリーラリーに三菱ワークスとして出場し、優勝。三菱のスポーツイメージを牽引するラリーアートも復活を果たした。
まさに、今の三菱は”走りの三菱””走破性の三菱”を再構築していく、まさにその端緒についたところだ。そんな折に市場に投入されるデリカミニの役割は大きいと言えるだろう。
気になる4WDの走破性は?
“デリカ”の名を冠する以上、高い走破製が求められるのではないか?という問いに対しては、フルタイム4WDシステムを搭載し、サスペンションも専用開発したショックアブソーバーに165/60R15サイズの大径タイヤを組み合わせる。三菱のテストコースで磨き上げることで、ラフロードでの走行性能と乗り心地を確保している。
中村達夫氏も実際にラフロードでステアリングを握り、その走行安定性に関心したそうだ。
また、「グリップコントロール」機能を備え、スリップした駆動輪をブレーキで制御し、雪やぬかるみからの発進を容易にしている。さらに、急な下り坂をブレーキ制御で安心して進める「ヒルディセントコントロール」、休憩車の坂道でもずり下がりしない「ヒルスタートアシスト」も装備。2WD車でも三菱の唱える「安心・安全・快適」なドライブをあらゆる路面で実現する。これが4WD車であればさらに鬼に金棒だ。
遊び心あふれるふたつのスタイル
スタイルや機能性など個性的なカスタムを楽しむのが”デリカ”オーナー。三菱ではエクステリアやインテリアに豊富な純正アクセサリーを用意した。会場には「Active Tone Style」と「Wild Adventure Style」というアクセサリー装着車を展示し、デリカミニのスタイルを提案していた。
■Active Tone Style
都会的なスタイリッシュさに、毎日をワクワクさせる外観を演出。
ダイナミックシールドやフロントグリルとテールゲートのガーニッシュをグロスブラックとし(エクステリアパッケージA)、前後の車名エンブレムも通常のボディカラー同色凹字からホワイトの凸字にしている(エンブレムセットA)。黒と白のコントラストの強い差し色がアクセントになり、スタイルを際立たせている。
特に個性的なのがボディサイドに貼られたステンシル風のデカール(オマージュデカール)。
フロントドアに貼られているのが排気量や環境性能の★印などのエンジンの仕様を表したもので、用品担当曰く「昔よく貼られていたDOHCやTURBOなどのステッカーをオマージュし、ステンシル書体でスタイリッシュに演出した」とのこと。
特に遊び心を感じさせるのがリヤクオーターパネルのストライプとワード。
「DEL-C32A」と書体と合わせて何やりミリタリーなテイストを漂わせており、一見するとなんのことかわからないが、実はこの文字は「デリカミニ」を表しているそうだ。特に「-(ハイフン)」が横にした「I」「32」が「ミニ」を意味しており、あえて「32」を「A」に持ってきているのもそんな遊び心の現れた。
■Wild Adventure Style
ある意味デリカミニの本命的なスタイルで、ダイナミックシールドやフロントグリルとテールゲートのガーニッシュはシルバー(エクステリアパッケージB)で、ノーマルのガンメタリックとはまた違った印象になっている。前後の車名エンブレムもActive Tone Style同様凸文字で、こちらはブラックだ(エンブレムセットB)。
なお、これらのパッケージやエンブレムセットは個別で装着も可能で、自分の好みに合わせて組みわせることもできるそうだ。
そしてこちらも遊び心あふれるオマージュデカールが用意されている。
リヤクオーターパネルのストライプと車名ロゴは、1980年代風の書体でデリカの車名とストライプを入れており、懐かしさを感じさせる。
さらに、フューエルリッドにも円形のデカールが貼ってあり、これもデリカの車名をうまくデザインしている。フューエルリッドのサイズに合わせたものだが、どこに貼るかはオーナーの自由だ。
デリカと言えばマッドフラップでしょ!
高い車高でオフロードをガシガシ進むイメージのデリカはマッドフラップを装着していることが多い。デリカミニでもそんなデリカのイメージを再現するべく、専用のマッドフラップをアクセサリーとして設定しる。
デリカミニに用意されているマッドフラップは見た目ばかりのファッションモノではなく、実用性も考えられている。特に泥除けの性能、デリカらしいヘビーデューティさを演出するためにはある程度の長さが必要だが、長すぎると駐車時に輪止めとタイヤの間に挟まって最悪の場合はバンパーを落としてしまうことになる。また、通常であればホイールハウスの内側の後方に設置するが、デリカミニではサイズ的にやはり前述のトラブルに繋がりかねない。
そこで、一般的には輪止めの高さと干渉しないレベルで長さを確保しつつ、装着位置をリヤバンパーとすることでタイヤとのクリアランスも確保している。
これなら、デリカでよく見るワイヤーでマッドフラップ下端を持ち上げる必要がなくなる(それはそれでデリカらしいカスタムではあるが)。
なお、スペースの都合でフロントはリヤに比べて控えめにならざるをえなかったそうだ。
用品担当イチオシのアクセサリーは?
そんな充実したアクセサリーラインナップが用意されるデリカミニだが、用品担当にイチオシのアクセサリーを訊いてみた。
ひとつは「オールウェザー」マット。座席足元に敷くマットで、濡れても滑りにくく外して丸洗いも可能と、アウトドアユースにピッタリのアイテム。前後セットで、車両左側には大きく車名の頭文字である「D」のロゴをあしらっている。
もうひとつは「インパネトレイマット」。スマートフォンなどを置くのに便利なインストゥルメントパネルパネルの収納スペースに敷くシリコン製のマットで、置いたものが滑りにくくなる。こちらもオールウェザーマットとお揃いの「D」のロゴがあしらわれている。
このように、デリカミニにはスタイルや実用性を高める様々なアクセサリーが用意されており、自分の好みに合わせてカスタマイズが可能になっている。
中村達夫氏はこれまでのデリカがそうであったように、ユーザーと一緒にデリカミニのカスタムの世界を構築していきたいと語っている。
激戦が予想される軽スーパーハイトワゴンSUV市場
約180万円から約223万円と、スズキ・スペーシアギアやダイハツ・タントファンクロスよりやや高めの価格設定になっている。特にターボ4WDはその傾向が顕著だ。経済性を重視するユーザーも多い軽自動車市場においてこれは厳しいのではないかと思われるが、中村達夫氏は「もちろん販売台数は追いたいが(月販目標販売台数は2500台)、まず何より三菱の価値に共感してくれるユーザーに届けたい」と語る。
実際、予約の60%が4WD車であり、グレード比率は80%以上が上級グレードである「Premium」が選択しているという。先行予約で特に気に入ったユーザーが購入していることを差し引いても、中村達夫氏の言葉を裏付けるのに十分な数字と言えるだろう。
デリカミニもデリカD:5同様に、このクルマにしかない価値を提供する1台として激戦が予想される軽スーパーハイトワゴンSUV市場で存在感を示しそうだ。