ついに誕生!新型軽「デリカミニ」 三菱の伝統が生み出した軽スーパーハイトワゴンは走りにこだわるアウトドア系!

2023年1月、東京オートサロンでお披露目された三菱の新型・軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」がついに正式発表となった。気になるメーカー希望小売価格はエントリーグレードのNAエンジン・FFで180万4000円、最上級グレードのターボエンジン・4WDでも223万8500円。デリカという付加価値を考えると、じつにリーズナブルな設定となっている。2023年5月の発売開始まで、あと1か月ほどに迫ったタイミングで「デリカらしさ&ミニらしさ」をチェックしてみたい。
REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)

デリカD:5と意外に似ていないデリカミニ

デリカミニ(手前)とデリカD:5(右奥)を並べてみると、デザインのコピペ要素はなく、完全に別物なのがわかる。

三菱自動車から新型軽自動車「デリカミニ」が正式に発表された。すでに東京オートサロンなどでガンガンに見せてきているのでスタイリングに新鮮味を感じなくなっているかもしれないが…。「デリカ」という三菱伝統の名前にふさわしいアウトドア・テイストあふれるルックスは軽スーパーハイトワゴンというカテゴリーにおける圧倒的な商品力を感じさせる。

それにしても、デリカ・ファミリーにおける末っ子のデリカミニと長男格のデリカD:5を並べてみると、スタイリングとしてはまったく別物であることがわかる。デリカD:5は、いまどきのクロスオーバーSUVやミニバンに求められる押し出しの強いフロントマスクとなっているのに対して、デリカミニは軽自動車らしい「目元パッチリ」な可愛さをアピールするフロントマスクとなっている。

それでも、どちらもデリカに見えるというのは、三菱自動車のデザイン力であり、初代デリカから数えて55年もの長きにわたりデリカ・シリーズを続けているきているというDNAによるものだろう。

eKクロス スペースからの価格上昇はごくごくわずか

撮影車は最上級グレード「T Premium」の4WDを純正アクセサリーで着飾った仕様。ホワイトパール・ブラックマイカの2トーンカラーは8万2500円の有料色。アダプティブLEDヘッドライトは7万7000円のオプションだ。

注目すべきは想像以上にリーズナブルな価格設定だろう。正式発表を機に、以下のメーカー希望小売価格が発表された。

T Premium:FF 207万4600円/4WD 223万8500円
T:FF 188万1000円/4WD 209万2200円
G Premium:FF 198万5500円/4WD 214万9400円
G:FF 180万4000円/4WD 201万5200円

「T」がターボエンジン、「G」が自然吸気エンジンとなり、トランスミッションは全車がCVT。いずれのグレードにもFFと4WDの駆動方式が用意されるのは「デリカ」という名前にふさわしいといえる。

さて、このグレード名に見覚えがあるというのは三菱の軽自動車に詳しい人だけかもしれないが、デリカミニと入れ替わるように2023年3月に「eKクロス スペース」が生産終了となっていて、デリカミニのグレード名自体はeKクロス スペースと変わっていない。

そしてeKクロス スペースのメーカー希望小売価格は次のようになっていた。

T Premium:FF 206万8000円/4WD 220万円
T:FF 200万7500円/4WD 213万9500円
G Premium:FF 198万円/4WD 211万2000円
G:FF 177万1000円/4WD 190万3000円

同等レベルで装備が充実した最上級グレードで比べても、デリカという名前による付加価値アップを感じさせないほど、価格が現状維持となっている。ホンダがN-BOXを2~3万円高のイメージで価格改定したこともあり、非常に戦略的な価格設定となっている。デリカミニという新しい価値だけでなく、コストパフォーマンスの点でも軽スーパーハイトワゴンとして魅力ある商品といえそうだ。

撮影車は「アクティブトーンスタイル」とネーミングされたディーラーオプション・パッケージを装着した状態。マッドフラップやテールゲートガーニッシュがデリカらしさを強調する。

4WDの価格アップ幅が大きいのは走りへのこだわりが理由

「ワイルドアドベンチャースタイル」というディーラーオプション・パッケージを装着したデリカミニ。キャンプサイトがよく似合う。

デリカミニの外観をよく見るとわかるように、ボンネットやドアといったスチールパネル部分は、三菱の軽スーパーハイトワゴンである「eKスペース」と共通だ。この情報だけを聞くと、フロントマスクをデリカ・テイストに変えただけの商品企画と思ってしまうかもしれないが、さにあらずだ。

デリカという名前を冠するには走りにおいてもデリカらしさを追求すべし、というのが三菱の判断だ。そこで4WDについては、eKスペースの設計に対してタイヤサイズの大径化や、そのタイヤに合わせたショックアブソーバーのセッティングといった変更がなされている。その開発においては、三菱のエンジニアがデリカという名前を前提に味付けをしたという。eKクロス スペースと比べると、4WDの価格アップ幅が大きくなっているのは、こうしたこだわり故といえる。

タイヤサイズが変わったことで先進安全機能などの再設定も必要となったというが、それだけの手間をかけるだけの成果が得られたということは、デリカミニの開発陣の誰に聞いても自信満々に答えてくれる。もちろん、ガンガンにオフロードを攻め込むようなことは想定していないが、キャンプ場の連絡路など段差の大きな未舗装路を走ったときには、明らかに違いが感じられるということだから期待したい。

デリカミニの4WDにはエンジンにかかわらず、165/60R15という大径タイヤが与えられる。アルミホイールも4WD全車に標準装備だ。

ユーティリティは軽スーパーハイトワゴンのトップクラス

インテリアのデザインはeKスペースと基本的に共通。9インチサイズのナビゲーションをディーラーオプションで用意する。

東京オートサロンでのお披露目から開始された事前受注では7000台を超えるオーダーを集めているというデリカミニ。ちなみに、もっとも人気のグレードは最上級のT Premiumの、それも4WDといのは三菱がデリカミニを生み出した強い思いに共感しているファンが多いことを示している。

ただし、開発陣によるとFFの価格を抑えたのは「デリカミニの可愛いルックスを気に入っていただいた方に乗ってほしいと考えたからです」ということで、スズキ・スペーシアギアやダイハツ・タントファンクロスなどをSUVと軽スーパーハイトワゴンのクロスオーバーとして評価しているユーザー層も取り込もうとしているようだ。

そうした軽スーパーハイトワゴン全体の中でのデリカミニの特徴といえるのは、ユーティリティ系装備が充実していることだ。

Premium系グレードには高速道路の同一車線運転支援システムである「MI-PILOT」やオートホールド付きEPB、アラウンドビューモニター付きデジタルルームミラー、リヤサーキュレーターが標準装備となっている。

ライバルに対するストロングポイントといえるのが、ハンズフリー機能を備えた電動スライドドアの標準化だ。Premium系では運転席・助手席側の両サイドにハンズフリー機能付き電動スライドドアが備わり、標準系でも助手席側はハンズフリー機能付き電動スライドドアとなる。

デリカという伝統を感じさせるルックスだけでなく、装備面を比較していっても、軽スーパーハイトワゴンの中で選びたくなるモデルに仕上がっている。

はたして、多くの事前受注が集まったことで、はやくも納期が長くなるという噂も聞こえてくるデリカミニ。気になる向きは、いち早く販売店に向かうことをおすすめする。

ハンズフリーでスライドドアを開閉できる機能が標準装備なのはeKクロス スペースと同様だ。
広いキャビンの空調効果を高めるサーキュレーターも標準装備する。

車両スペック

イメージカラーは「アッシュグリーンメタリック/ブラックマイカ」の2トーン(8万2500円の有料色)
パワートレインは全グレードで3気筒エンジン+インテグレーテッドスタータージェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様となる。
デリカミニT Premium(4WD)
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1830mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1060kg
排気量:659cc
エンジン:直列3気筒DOHCガソリンターボ
最高出力:64PS(47kW)/5600rpm
最大トルク:100Nm/2400~4000rpm
モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:2.0kW
モーター最大トルク:40Nm
駆動方式:4WD
トランスミッション:CVT
WLTCモード燃費:17.5km/L
最小回転半径:4.9m
タイヤサイズ:165/60R15
乗車定員:4名
メーカー希望小売価格:223万8500円

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…