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広い室内空間と実用性は特筆 剛性感ある走りと回頭性も◎
BMWといえばかつては縦置きエンジンのFRレイアウトが売りで、2009年に登場した初代X1もFRベースだった。そんなX1も15年発売の2代目=先代からはエンジンを横置きするFFレイアウトを採用。今ではボディ形式を問わず、コンパクトBMWはあらかたFFレイアウトになった。
エクステリア
こうしてBMWのエントリーモデルとして確固たる地位を築いているX1だけに、今年3月に国内発売となった新型も、まさに正常進化というべき内容だ。FFレイアウトはもちろん踏襲されて、外寸やホイールベースも拡大されてはいるが、その拡大幅は20〜45㎜にとどまり、現実のサイズ感は従来と変わらない。そんな新型X1だが、先代から大きく変化したポイントもある。それは一般的なエンジンモデルに加えて、電気自動車(BEV)がカタログモデルとして用意されることだ。
乗降性
そのBEVモデルは、車名を「iX1」といい、いま最もコンパクトで手頃なBMWのBEVでもある。搭載電池の総電力量は66.5kWhで、一充電航続距離は465㎞(WLTCモード)と、クラストップとはいわないが実用には十分。698万円という価格はエンジンモデルと100万円前後の差で、複数の補助金を駆使すれば、実質価格でエンジン車より安く購入することができる可能性があるほど。コスパは素直に高い。また、新たに導入されたリースサービス「BMW iライフパッケージ」には、出先の公共充電器による充電費用まで含まれる。
インストルメントパネル
一方のエンジンモデルは当初2.0ℓガソリンターボのみだったが、5月末には2.0ℓディーゼルも追加。ディーゼルは「X1初のマイルドハイブリッド車」でもあり、19.5㎞/ℓというWTLCモード燃費はセグメントトップ級を謳う。欧州ではエンジン車の一部にFFモデルが用意されるものの、日本仕様はiX1も含めて全車4WDだ。
居住性
グレードは全車に落ち着いたセンスの「xライン」とスポーティな「Mスポーツ」が用意される。タイヤサイズは全車共通だが、「Mスポーツ」のみ(iX1だけは両グレードとも)電子制御可変ダンパーが追加される。新型X1/iX1の全長はメルセデスGLAより長く、アウディQ3と並ぶ。全高はGLAやQ3より高く、ジャーマンスリーのライバルと比較して広めの室内空間と高い実用性も、X1の売りのひとつだ。
うれしい装備
ただし、iX1は床下に電池を敷き詰めている影響か、後席のフロアは高くなっており、体格のいい乗員だと太ももが少し浮く着座姿勢になる。また、エンジン車に備わる後席スライド機能も省略される。正確で剛性感あふれる走りは手慣れた仕立てで、驚きはないが完成度は高い。中でも印象的なのはBEVのiX1の走りで、のけぞるほどの加速レスポンスなのにスムーズなパワートレインのしつけは見事。
月間販売台数 NO DATA 現行型発表 23年2月(グレード追加 23年9月) WLTCモード燃費 19.5 ㎞/ℓ ※ディーゼル車
ラゲッジルーム
さらに積極的に走ったときの、絶妙なトルク配分による回頭性もまさに「駆け抜ける歓び」としか言いようがない。iX1はシレッと普通な存在感といい、リースプログラムを含めた戦略的な価格、そしてこの走り……で、EVに対するBMWの本気をヒシヒシと感じさせるクルマだ。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.153「2024年 国産&輸入SUVのすべて」の再構成です。