コンビニにも行ける、肩肘張らないランボ(価格とサイズは除く)【ランボルギーニ・ウルス】

ランボルギーニ・ウルス
ランボルギーニ・ウルス
「世界初のスーパーSUV」という謳い文句とともに、2017年にワールドプレミアされたランボルギーニ・ウルス。世界的なSUVの流行もあり、今ではランボルギーニの屋台骨を支えるモデルとなった。その価格は約3000万円。果たして庶民がその価値を体感できるのだろうか!?

TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)
PHOTO●Motor-Fan.jp

普段はジェントル。モード変更で性格一変、驚愕の速さ

さて、ランボルギーニである。ウルスである。ランボルギーニと言えば、ウラカンやアヴェンタドールといったスーパーカーを思い浮かべると思う。SUVカテゴリーでは世のブームに則って、比較的後発でリリースしたと思っている人が多いかもしれない。

ランボルギーニ・ウルス
2018年に日本上陸を果たしたランボルギーニのスーパーSUV、ウルス。現在はランボルギーニの販売台数の約6割を占める中心モデルとなった。

しかし、米軍用に開発した「チータ」を初め、1986年に発表した「LM002」など、SUVが登場する遙か前から同社はスーパーなオフロードカーを造ってきたのである。LM002は、世界一苛酷と言われるラリーレイド「パリ・ダカールラリー」にも出場し、その優れた悪路走破性と耐久性を実証した。

ランボルギーニ・ウルス
ランボルギーニ・ウルスのボディサイズは全長×全幅×全高:5112×2016×1638mm、ホイールベース:3003mm。

欧州メーカーのSUVは、BMW X3やポルシェ・カイエンのドイツ勢に端を発している印象が強いが、高性能なエンジンを積んだスーパーオフローダーという概念は、紛れもなくランボルギーニが開拓したものである。

しかし皮肉なことに、そんなランボルギーニも今やフォルクスワーゲン傘下。このウルスもまた、アウディQ7やフォルクスワーゲン・トゥアレグ、ポルシェ・カイエンといったアライアンスでプラットフォームを共有している。

ランボルギーニ・ウルス
トヨタ・ランドクルーザーと比べると全長と全幅は10cm以上大きいのに、全高は30cm近く低いウルス。異形の存在感を漂わせる。

ただ、そのデザインの派手さはプラットフォームを共有するモデルの中ではピカイチだ。ではランボルギーニではどうかというと、個人的にはおとなしめの印象というのが正直なところ。SUVというカテゴリーの中では、アヴェンタドールのような意匠を実現することは難しいが、もう少しラテン系らしいホリの深さが欲しいところではある。

さて、ボディの左側に回って車内に入ると、インパネはウラカンで見たデザインが概ね再現されている。あの、ジェット戦闘機のアームONスイッチのような紅いカバー付きイグニッションも健在である。

ランボルギーニ・ウルス
中央の赤いフラップの奥がスタート&ストップスイッチ。その上がシフトレバー、左はドライブモードの選択用、右はエンジン/ステアリング/足周りの調整用スイッチが並ぶ。

しかし、SUVはセンターコンソールが立ち上がり、中央が平面がちになる。そこに二つのモニターを埋め込んでいるのはいいが、メーターも液晶であることから、まるで現代の航空機の味気ないコックピットのようになってしまっている。これがいいんだという向きもあるかもしれないが、外装同様にランボルギーニらしい加飾が細部に欲しかったところだ。

ランボルギーニ・ウルス
アグレッシブなエクステリアと比べると、インテリアは正統的(!?)。そのおかげで、他車から乗り換えてもさほど違和感を抱くことなく走ることができる。

前述の通りメーターは液晶で、グラフィックはさすがに凝っている。メーターパネルに日本語が表示されてしまうのは、少々現実に戻されてしまうが、オーナーとなって日常的に使うともなれば致し方がないところなのであろう。メーターの右側には、多分に漏れず様々な車両インフォメーションが映し出される。さらに、センターにあるモニターにも一部の情報が映し出されるが、これはインターフェイスが煩雑になるため、少々やり過ぎではという感もある。

ランボルギーニ・ウルス
ホールド性の高いフロントシート。
ランボルギーニ・ウルス
身長180cmの乗員がドライビングポジションをとるとご覧のとおり。
ランボルギーニ・ウルス
セカンドシートはオプションで2名掛けも用意される。
ランボルギーニ・ウルス
3mを超えるホイールベースのおかげもあり、180cmの乗員でも膝周りの空間は余裕がある。

さて、ウルスのパワーユニットは、ポルシェが開発を主導してきた4L V8ツインターボ。これに8速ATとトルセン式フルタイム4WDというパワートレーンが組み合わされる。前後輪駆動トルク配分は40対60で、走行状況に応じてフロントは最大70%、リアは最大87%が配分される仕組みだ。特徴的なのはリアホイールステアリングを備えていることで、車速とドライブモード次第で±3度まで舵角を付けることができるという。

ランボルギーニ・ウルス
最高出力650hp、最大トルク850Nmを発生する4L V8ツインターボ。

650psというSUVでは桁違いの最高出力を発生することから、かなり身を構えて例のイグニッションスイッチを押した。果たして、鋭い咆哮と共にエンジンに火が入るかと思いきや、拍子抜けするほどジェントリーな始動。間違ってQ7を借りてしまったかと動揺してしまうほどである。

発進も加速もいたって静かで、これが4L V8ツインターボ、これがランボルギーニと言われてもピンと来ない人が多いかもしれない。ウラカンなどは、走っているとその排気音で、周囲のクルマが次々と除けていくくらいの“威光”を放つが、このウルスはおとなしめのエクステリアデザインと併せて、よく周囲に馴染んでいる。そういう意味では肩肘が張らないランボルギーニと言える。

ランボルギーニ・ウルス
街中では(サイズを除いて)意外なほど運転しやすいウルス。コンビニへ買い物にも行けるランボルギーニだ。

件のリアホイールステアリングは、都市部の細街路では非常に役立つ。5112mmという決して小さくない全長ながら、ステアリングホイールをそれほど回さずともスイスイと狭い路地を曲がっていけるのは4WSの効力であろう。

乗り心地も非常にいい。タイヤが前285/40ZR22、後325/35ZR22というアグレッシブなサイズながら、神経質なところがない。エアサスということもあるが、ハーシュネスを上手に吸収する脚もまた、ランボルギーニというブランドイメージとはちょっと違うものであった。

ランボルギーニ・ウルス
8枚切りの食パンのように薄いタイヤを履くウルス。そうとは思えないほど乗り心地がいいのには驚かされた。

さて、走り出すまで忘れていたが、このウルスにもまたドライブモードが搭載されている。いわゆるテレインセレクトだが、イタリア語表記なので日本語に訳してご紹介したい。「STRADA」、これはいわゆるノーマルモードといったところだ。加えて「SPORT(スポーツ)」「CORSA(競技)」「TERRA(オフロード)」「NEVE(雪)」が設定されている。TERRAとNEVEは今回の市場では体験することができなかったが、SPORTに変えた瞬間に、ウルスの印象は大きく変化する。

ランボルギーニ・ウルス
モードを切り替えると液晶メーターの表示も変化する。写真は街乗り用の「STRADA」。
ランボルギーニ・ウルス
こちらは「CORSA」。タコメーターの形状が異なるほか、Gセンサーが表示される。
ランボルギーニ・ウルス
「TERRA」など不整地用のモードでは車両の姿勢や駆動状況が表示される。

さっきまで品のいい紳士だと思っていたら、スイッチひとつでイケメンのラテン系に豹変。まるでジローラモ氏のように分かりやすい色男のごとく、エンジンフィール、エキゾーストの音質が一気にランボルギーニになる。この仕掛けには少々驚かされた。有料道路で隣を走っていたドライバーが、驚いた顔をするのも無理はない。

ランボルギーニ・ウルス
ランボルギーニ・ウルス

で、ウルスのプライスはいくらというと、税込み価格3068万1071円。まさに、筆者のような庶民には高嶺の花である。たしかに色気はあるし、車内スペースユーティリティなど実用性も十分にある。例えば、家族持ちや初ランボルギーニの人には、エントリーしやすいモデルと言えるだろう。だが、くどいようだが3000万円である。

ランボルギーニ・ウルス
容量たっぷりのラゲッジルーム。
ランボルギーニ・ウルス
荷室側壁のスイッチで背もたれは前倒し可能。

バリューフォーマネーという点で考えれば、自分は格下でもポルシェ・カイエンを選ぶかもしれない。カイエンも派手さはないが、ステアリングを握った瞬間に感じられる上質感、走り出した時から得られるポルシェという満足感がたしかにある。ウルスがあらゆる面でコストがかかり、いいクルマであることは分かるが、やはりもう一歩踏み込んだイタリア車らしさが欲しかったというのが、正直な感想だ。ただし、そこがランボルギーニらしいとも言えるが。

ランボルギーニ・ウルス  主要諸元

■ボディサイズ
全長×全幅×全高:5112×2016×1638mm
ホイールベース:3003mm
車両重量:2200kg
乗車定員:4-5名
■エンジン
形式:水冷V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3996cc
最高出力:478kW(650HP)/6000rpm
最大トルク:850Nm/2250-4500rpm
■駆動系
トランスミッション:8AT
駆動方式:4WD
■シャシー系
サスペンション形式:Fマルチリンク・Rマルチリンク
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク・Rベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前285/45R21(最大285/35R23)・後315/40R21(最大325/30R23)
■価格
3068万1070円

ジープ・グランドチェロキーL

使える3列シートが○。アルヴェルの卒業生にもピッタリ!?【ジープ・グランドチェロキーL】

絶好調のジープが勢いに乗ってフラッグシップのグランドチェロキーを10年ぶりにフルモデルチェンジ。同モデルで初めてサードシートを採用したことが話題だ。大柄なボディのおかげもあって、室内はゆとりたっぷり。アルファード/ヴェルファイアといった高級ミニバンでは飽き足らなくなった人にも注目していただきたい、アメリカンラグジュアリーSUVだ。 TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO●Motor-Fan.jp

キャデラック・エスカレード

アメリカ大統領御用達ブランドの最高峰SUVは、サイズも高級感も圧巻!【キャデラック・エスカレード】

高級SUVといえば、レンジローバーやメルセデス・ベンツGクラスといった欧州車が定番。人気があるだけに、街中で目にする機会も多い。他人とかぶるのがイヤならば、アメ車というチョイスがある。エスカレードは、アメリカを代表するラグジュアリーブランドであるキャデラックの最高峰SUV。欧州勢を上回る存在感は、リッチマンの懐を大いに刺激しそうだ。 TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO●Motor-Fan.jp

キーワードで検索する

著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…