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新世代スッキリ系デザインがいい
本来ならフィットから始まったとするべきなのだろうが、個人的な印象としては、ヴェゼルから始まり、シビックときて、ステップワゴンが第3弾のように感じている。ホンダの新世代スッキリ系デザインのことだ。シンプルという表現で片付けてしまっては不十分で、気品がある。プラチナホワイト・パールのステップワゴンなど、白磁の面取り壺といい勝負だと感じるくらい、筆者の注意を引き付けてやまない。
もちろん、ステップワゴンは鑑賞の対象ではなく生活の道具で、使ってナンボだ。そこのところも一切抜かりはなくて、3時間弱の試乗時間中、感心しきりだった。スマートキーを受け取ってまずいじったのが、パワーテールゲートだ(タイプ別設定)。ボタンを操作することで、任意の場所で止めることができる。途中で止めて、全開、全閉、また開けて、止めて、全開と繰り返し遊んでしまった(感心しながら)。
「ドアハンドル、軽く引くだけで開きますよ」と聞いて、パワースライドドアのアウタードアハンドルを軽く引いてみると、あっけないほど簡単にドアが開く。新型ステップワゴンでドアを開く行為は、「私はいま、ドアを開けたいんです」という意思表示をクルマに示すだけで済んでしまう。電動アシスト自転車の便利さに慣れてしまうと、完全人力自転車に乗るときに抵抗を感じてしまうのと同種の衝撃的な発明だ。静電タッチセンサーも付いていて、軽く触れるだけで開閉することも可能である。
2列目シートに乗り込んでからがまた楽で、ドアを閉めるのにいちいち体をひねってドアハンドルに手を伸ばす必要がない。ピラーに設定されたスイッチを押すだけでいい。開くときも同様。2列目がセパレートシートの場合、シートベルトは先代のようなボディ付けではなくシート内蔵になったので、やはり、体を大きくひねる必要がなく、楽にシートベルトを装着できる。
ホンダ車ではステップワゴンに限った話ではないが、スマホのポケットやUSBチャージャー(AIRは非装備)が充実しているのがうれしい。あと3時間くらい、あっちを眺めたり、こっちを見回したり、あちこち触ったりいじったりしたかったのだが、時間が限られていたので、運転席に乗り込んで走り出すことにした。
e:HEVモデル エンジンがかかっても静か
インテリアもスッキリ系で、ヴェゼルやシビックとの共通性を強く感じる。きれいにまとまっているのはいいが、何がどこにあるかよくわからないというようなことはなくて、初めて乗っても直感で操作することができる。ハザードスイッチはちゃんと、あるべき場所(インパネのど真ん中)にあって咄嗟の瞬間に戸惑うことがない。トイレに入って「流す」ボタンが見あたらなかったときの動揺といったらないが、ステップワゴンにはそういう心配が要らない。
ステップワゴンは視界が良く、取り回しがいい。Aピラーの根元を後ろに下げてボンネットフードを長くしたのに加え、前端を高くしてフードが前のほうまで視界に入るようにした。「女性の方のアンケートを重要視した結果」だそうで、ボンネットフードが視界に入る範囲は、調整を繰り返したそう。あまり見えないと車両感覚がつかみづらく不安だし、見えすぎると必要以上にクルマが大きく感じてしまう。ちょうどいいところを探した結果、いまの形に落ち着いたそう。フロントセクションの四角い形はスタイリングが先にあったのではなく、視界が先だ。
という話は試乗後に聞いた。動かして5秒で車両感覚をつかんだ実感はあり、なんの不安を抱くことなく駐車場の出口にある精算機に幅寄せし、角を2回曲がって広い道路に出た。30km/hか40km/hか出たところで「うわ、なにこのクルマ、静か」と感心した。最初に運転したのは、ハイブリッドシステムを搭載するSPADA e:HEVだった。モーター走行だったこともあるが、それにしても静かである。セカンドシートの乗員だけでなく、サードシートに座った乗員とも、普段の声量で何の苦労もなく会話ができる。
強めの加速が求められるシーンでは発電のためにエンジンが始動するが、注意していなければ気づかないほどに静かだ。それに、耳に届くエンジン音が神経を逆なでするような嫌な音でないのがいい。とにかく、静かで心地いい。クランク剛性をアップした効果もあるのだろう。エンジン運転時にゴロゴロした振動が発生して、「おや?」っと思わせるようなこともない。スッキリした外観とスッキリした内装、それに目に触れる物の質感と、手に触れる物の操作したときの質感が高く、無意識のうちに、新しいステップワゴンは“上質”との印象を乗り手に植えつけるようだ。
ガソリンターボモデル こちらも静か(e:HEVほどではないが)
ガソリンエンジン車はエンジンだけの力で走るので、アクセルペダルを踏んでいるとき、エンジンは常時回っている。試乗したのはAIRのAWD(四輪駆動)だった。当然のことながらエンジンの音は常時耳に届くが、新型ステップワゴンが“静かなクルマ”との印象に変わりはなかった。より静かなのがe:HEVだ。
1.5L直列4気筒ターボエンジンは低い回転域から充分な力を出してくれるので、市街地を周囲の流れに合わせて移動するような状況では、低い回転域から徐々に回転数を上げながら、リニアに車速を上げていく。アクセル操作に対する反応がいいので、ストレスを感じてカバッと踏み込みたくなるような心境に陥ることはない。トランスミッション(CVT)の制御も含め、ドライバーの意に添ったトルクを発生する装置として、よくできている。
大の大人6名フル乗車 SPADA PREMIUM LINE e:HEV
SPADA PREMIUM LINE e:HEVにもチョイ乗りしたが、その際はステップワゴンの開発に携わったホンダのエンジニア3名に取材陣3名が加わって6名乗車で移動した。ドライバーは筆者だ。それまでの3名乗車と何ら変わることなく、ストレスを感じずに(と言ったらウソになり、理由は後述)短いドライブを終えた。試乗後、「運転上手ですね」との言葉をいただいたが、9割はお世辞にしても、運転する筆者はもとより、助手席、セカンドシート、サードシートの乗員がストレスを感じず過ごすことができたのだとしたらそれは、クルマのおかげが大きい。
細心の注意を払う必要などまったくなく、ステップワゴンは思いどおりに加速し、スムーズに曲がり、狙いどおりに止まる。加速したとき、ステアリングを切ったとき、ブレーキを踏んだときのクルマの反応は穏やかで、「急」な動きが出にくい。
しかも、運転していて楽しい。シートの出来がいいし、ステアリングの感触(触感、握り心地、操作フィール)も良く、前述のように視界も良くて、ストレスを感じない。ストレスを感じるとすれば、残りの5名がドライバーを置いてけぼりにして楽しそうに会話を楽しんでいることだったが、筆者の運転やクルマの動きに不安を感じて、6人も乗っているのに室内が無音になるよりはいいだろう。
ホンダSTEP WGN e:HEV SPADA 全長×全幅×全高:4830mm×1750mm×1840mm ホイールベース:2890mm 車両重量:1840kg サスペンション:Fマクファーソン式/R車軸式 エンジン エンジン形式:2.0ℓ直列4気筒DOHC エンジン型式:LFA 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.5 最高出力:145ps(107kW)/6200rpm 最大トルク:175Nm/3500rpm 燃料:レギュラー モーター H4型交流同期モーター 最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm 最大トルク:315Nm/0-2000rpm WLTCモード燃費:19.6km/ℓ 市街地モード19.3km/ℓ 郊外モード20.5km/ℓ 高速道路モード19.2km/ℓ 車両本体価格:364万1000円
ホンダSTEP WGN AIR 4WD(7人乗り) 全長×全幅×全高:4830mm×1750mm×1855mm ホイールベース:2890mm 車両重量:1855kg サスペンション:Fマクファーソン式/R車軸式 エンジン エンジン形式:1.5ℓ直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:L15C 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm 圧縮比:10.3 最高出力:150ps(110kW)/5500rpm 最大トルク:203Nm/1600-5000rpm 燃料:レギュラー トランスミッション:CVT WLTCモード燃費:13.3km/ℓ 市街地モード9.9km/ℓ 郊外モード13.8km/ℓ 高速道路モード15.0km/ℓ 車両本体価格:324万0600円