マツダCX-3 200万円切りでいいところは全部ある1.5ℓモデル。乗り心地はCX-3でベスト。不満なし

マツダCX-3 15S Touring  車両価格○199万1000円 試乗車はオプション込み206万8000円
2020年5月にマツダCX-3のラインアップに加わったSKYACTIV-G1.5の1.5ℓガソリンエンジン・モデルに試乗した。CX-3のかっこよさはそのままに、価格が200万円以下というなかなかうれしいグレード。実際に試乗してどうだったか? 燃費や乗り心地はどうか?

良いところはなにも省かれていない

マツダのコンパクトクロスオーバー、CX-3がデビューしたのは2015年2月。すでに6年半が経過している。今回、マツダ横浜R&Dセンターで対面したCX-3 15S Touringは、2020年5月に追加された1.5ℓガソリンエンジン車である。

CX-3は、デミオ(現MAZDA2)ベースのクロスオーバーだが、デザインが驚くほどかっこよく、エンジンは1.5ℓのディーゼルエンジン(SKYACTIV-D1.5)のみという潔いんだか、思い切りすぎたんだか(!?)というスタートだった。コンパクトなサイズ(全長×全幅×全高:4275mm×1765mm×1550mm)にプレミアムなデザインとパワートレーン、そしてソウルレッドのボディカラーが相まって、注目を集めたわけだ。

編集部の地下駐車場に駐めたCX-3。コンパクトなサイズはやはり都会ではうれしい。

現代のコンパクトクロスオーバーは80-90年代におけるトヨタ・セリカ、日産シルビア、ホンダ・プレリュードのようなポジションに位置づけられるクルマだと思う。もっとも重要なのは「カッコいい」こと。CX-3は、そのハードルは余裕でクリアした。

が、ディーゼルエンジンは高価だ。年間走行距離がそんなに延びない都会のユーザーにとっては、メリットを充分に享受できないという面もあった。そこで、2017年に2.0ℓガソリン(SKYACTIV-G2.0)を追加、 2018年にディーゼルエンジンが1.8ℓ(SKYACTIV-D1.8)に変更されている。そして、この春の1.5ℓモデルの追加となったわけだ。

結論めいたことを言ってしまうと、「最初から1.5ℓモデルがあったら大ヒットしたんじゃないか?」と思った。

比較的軽いプライスタグ(エントリーグレードの15Sは189万2000円)、贅沢装備は省かれたけれど必要充分な装備、そしてなにより相変わらずカッコいいスタイル。さらに加えれば、最近のマツダの一押しカラーであるポリメタルグレーメタリックがいい。

全長×全幅×全高:4275mm×1765mm×1550mm ホイールベース:2570mm
トレッド:F1525/R1520 最低地上高:160mm 最小回転半径:5.3m
車重:1210kg 前軸軸重750kg 後軸軸重460kg

今回試乗した15S Touringは1.5ℓの上級グレードだが、あくまでも「エントリーグレード」としての役割を担っているため、装備は比較的簡素だ。

価格は
1.5ℓ:15S Touring 199万1000円
2.0ℓ: 20S PROACTIVE S Package FF 6AT 248万6000円
1.8ℓDE: XD PROACTIVE S Package FF 6AT 278万9600円

となっている。この価格は魅力だ。外観は、タイヤ/ホイール径の違いがもっとも大きいが、それ以外で気づく(それも気づく人はごく少数だろう)ところはないと言っていい。

この1.5ℓモデル、想像通り人気を集めているという。ユーザーがいかに「手軽に買えるカッコいいコンパクトクロスオーバー、CX-3」を待望していたかがわかる。いままで、「ちょっと割高感があって手が出しにくかったんだよね」という層が1.5ℓモデルを購入しているのだ。ユーザーは賢い。

ボンネットフード開けるとエンジンルームはこう見える。フードはダンパーレス。
ご興味のある方は少ないと思いますが、これがエンジンカバー。
裏側はこうなっている。
エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:P5-VPS(SKYACTIV-G1.5)型 排気量:1496cc ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:111ps(82kW)/6000rpm 最大トルク:144Nm/4000rpm 過給機:× 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:44ℓ

SKYACTIV-G1.5は、最高出力111ps/最大トルク144Nmだから、もちろんパワフルではない。SKYACTIV-G2.0の150ps、SKYACTIV-D1.8の270Nmと比べれば非力は明らかだ。だが、それで足りない?と問われれば、「いえ、大丈夫です」と答える。

メーター読みで100km/h巡航時のエンジン回転数は2150rpmほど。ちょっと力が足りないなと思うのは、多人数乗車(たとえば大人が4人乗った場合など)の登坂のような状況だ。街で使うおしゃれで便利なクーペ感覚で乗るなら問題ない。言い換えれば4人乗車、長距離移動が多いならSKYACTIV-G2.0かD1.8がいい。いや、4人乗車のシチュエーションが多いならそもそもCX-3を選ばないか。

いつものように横浜から新宿の編集部まで首都高速道路を使って帰った時の燃費は18km/ℓを超えた。なかなかいい。

やや背高のプロポーションが生み出すちょっと高い視点と広い視界が運転しやすさにつながる。全長×全幅×全高:4275mm×1765mm×1550mmというサイズは、やはりとても使いやすい。ただし、最小回転半径が5.3mとサイズの割にやや大きいのがちょっと気になった。小回りがあまりきかない。ちなみにMAZDA2だと最小回転半径は4.7mだ。マイカーのBMW3シリーズ(F30型)が5.4m。大きなタイヤを履いたクロスオーバーの宿命だが、もうちょっとハンドルが切れてくれたらうれしい。

車両価格が200万円を切るエントリーグレードだと気づく人はほぼいないだろう。

1.5ℓモデルに装着されていない機能はなんだろう?

1.5ℓの15S Touringの価格はお手頃なのには、もちろん理由がある。いわゆる快適装備・便利装備が省略されているのだ。なにがついてないか? それは不便だろうか?

乗り込んでみる。インテリアは(エクステリアもだが)紛うことなきマツダデザインだ。シートに座るってまっすぐ脚を伸ばしたところにブレーキペダルとオルガン式のアクセルペダルがある。真正面にスピードメーターがある。これが気持ちいい。

室内長×幅×高さ:1810mm×1435mm×1210mm

最初に気づくのは、上級モデルが装備するコンバイナー式のヘッドアップディスプレイがないこと。これは付いていたらうれしいけれど、なくても不自由しない。コンバイナー式でなく前面ガラス反射式のHUDだったら、付いてなかったら残念に思うかもしれないが。

ドアを開けると、こんな景色が広がる。
今回の試乗車15S Touring
ディーゼルエンジン搭載のXD L Package

ステアリングホイールについているスイッチが少ないことがわかる。コンバイナー式のヘッドアップディスプレイも装備しない。

それからステアリングホイールについているスイッチの数が違う。もちろん、スイッチにはそれぞれコントロールする機能があるわけだから、それが1.5ℓモデルには付いていないわけだ。

15S Touringについてないのは
●スマート・ブレーキ・サポート(SBS)&マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)
●ドライバー・アテンション・アラート
●交通標識認識システム(TSR)
●アダプティブLEDヘッドライト(ALH)(ヘッドランプはLED式)
●自動防眩ルームミラー(防眩ルームミラーになる)
●コンバイナー式HUD
といったところだ。つまり、全車速ACCはなし。あると便利なALHもない。でも、なくても特段不自由することはないだろう。

スウィングアウトシスター(Swing Out Sister)のベストアルバム『The Best of Swing Out Sister』。『ブレイクアウト』が大ヒットしたのは1886年。いまから30年以上も前のことなのだから驚く。今聴いても新鮮。
このベスト盤は1996年リリース。一曲目の”Now You’re Not Here” はドラマの主題歌にもなったはず。

CDプレーヤーを装着している場合(今回の15S Touringの試乗車にはCD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー3万3000円が付いていた)CDをかけみることにしている。6スピーカーのオーディオシステムだが、200万円以下というカテゴリーならとてもいい音が楽しめた。ただし、音質は自分好みに調整することが前提だが。最近のマツダはオーディオの音がいい。一番感動したのはMAZDA3、CX-30という新世代商品群になってからの標準オーディオだ。CX-3はそれには及ばないが、なかなかいい(オーディオ評論家ではないので、あくまでも個人の感想だが)。

乗り心地は、シリーズでもっともいいかも。燃費はどう?

今回200kmほどいつものコースを走ってみた。燃費はどうだったか? 走りはどうだったか?

これも結論めいたことを最初に言ってしまうと、CX-3のなかでもっとも乗り心地がいいのは15Sだ。CX-3は、デミオベースのシャシーに、18インチサイズの大径タイヤを履いていたからデビュー当時は、タイヤが暴れるような乗り心地の荒さを感じ。その後の改良でずいぶんよくなっているが、今回の15S Touringがベストだと思う。
装着しているタイヤは
15S Touring:215/60R16(外径664.4 mm)
20S:215/50R18(外径672.2mm)
XD:215/50R18

175cm(標準体型)が運転席でドライビングポジションをとって、後席に座ると膝周りの余裕はこの程度。

上級グレードが18インチになのに対して15Sは16インチを履く。これが乗り心地にとってはプラスになっている。

大きなホイール/タイヤを履くとかっこいい!のはわかるけれど、乗り心地が犠牲になっては元も子もない。CX-3の場合は、16インチサイズのタイヤがもともと最適だったのではないかと思う。乗り心地は、15Sが一番いい。

後席はけっして広くはないが、「クーペ」だと思って使えば、広さを感じるはず。15S TOuringのシートは、クロス ブラック(グレーステッチ)
2020年5月の商品改良で、フロントシートは、シートバックの素材を変更することで骨盤を立てて脊柱が自然なS字カーブを維持できる新世代シート技術が入った。ちょっと座面のクッションが薄い感じがしたが……。

前述したように、エンジンはパワフルではないが必要充分だ。ちなみに上級モデル(つまりもっとパワフルなエンジン)との車重の違いは次の通りだ。

2.0ℓSKYACITV-G2.0搭載モデルは車重1250kgだから15S Touringより40kg重い。
1.8DE搭載モデルは車重1270kgだから15S Touringより60kg重い。

モード燃費は
15S FF AT:WLTCモード 17.0km/ℓ
20S PROACITVE S Package 16.0km/ℓ
XD 23.2km/ℓ

である。

今回、200km走って、燃費は16.2km/ℓだった。WLTCモード燃費の95.3%を達成(高速道路での走行が多かったので、平均速度は41km/hだった)。同じ頃、試乗したトヨタ・ヤリスの1.5ℓ+CVTモデルで同じコースを走った際の燃費が18.4km/ℓだったから、デビュー年次、ボディ形状(CX-3は背の高いクロスオーバー)を考えると16.2km/ℓは健闘した結果だと思う。

ボディカラーはポリメタルグレーメタリック。マツダの新・一押しカラーだ。ソウルレッドクリスタルメタリックがオプションカラーで6万6000円(税込)なのに対して、このカラーは標準色。

3日間ほどCX-3と生活を共にした。全高1550mm以下(日本だとこれ以下だと機械式駐車場に入る)のクロスオーバーの使いやすさを満喫できるのは、じつはCX-3のサイズくらいなのではないだろうか? 少し前に乗ったVW T-クロスもとてもよかった。トヨタのヤリスクロスもそうだろう。このクラスはこれから強力なライバルがどんどん登場するはずだ。

そのとき、デビュー6年半経ったCX-3がライバルと伍して戦っていくとしたら、いまでもまったく色褪せない美しいスタイルと、この1.5ℓモデルのコストパフォーマンスが武器になるだろう。

CX-3をいま手に入れるなら、まずは1.5ℓモデル(15S Touring)を試乗してからだ。足りない要素があれば、2.0ℓ、1.8ℓディーゼルモデルを検討するというのがいいと思う。CX-3 1.5ℓエンジンモデル、気に入りました。

トランクスペースは、必要充分だと思う。
下にはサブトランクもあって便利に使えそうだ。
200km走って、燃費は16.2km/ℓだった。WLTCモード燃費の95.3%を達成。(高速道路での走行が多かったので、平均速度は41km/hだった)
マツダCX-3 15S Touring
 全長×全幅×全高:4275mm×1765mm×1550mm
 ホイールベース:2570mm
 車重:1210kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
 エンジン形式:直列4気筒DOHC
 エンジン型式:P5-VPS(SKYACTIV-G1.5)型
 排気量:1496cc
 ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm
 圧縮比:13.0
 最高出力:111ps(82kW)/6000rpm
 最大トルク:144Nm/4000rpm
 過給機:×
 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
 使用燃料:レギュラー
 燃料タンク容量:44ℓ
 駆動方式:FF
 WTLCモード燃費:17.0km/ℓ
  市街地モード14.4km/ℓ
  郊外モード17.2km/ℓ
  高速道路モード18.3km/ℓ
 車両価格○199万1000円
 オプション込み206万8000円
 CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー3万3000円
 360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー4万4000円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…