日産4WDは「e-4ORCE」だけじゃない! コスパで見ればコチラが上? 氷上走行でe-POWER×4WDの実力を体感する! GT-Rも……

日産の氷上試乗会が開催された。日産の4WD(四輪駆動)モデルを一堂に揃え、その走りを一気にテストできるまたとない機会だ。注目はやはり最新4WDシステムであるe-4ORCEを搭載したアリアとエクストレイルだが、e-POWERのAWDもその走りは侮れないものがあった。そして、ある意味では日産4WDのトップモデルであるGT-Rも氷上での走りを試すことができた。
PHOTO:MotorFan.jp/日産自動車 REPORT:MotorFan.jp

日産氷上試乗会では、その最新システムである電動4WDのe-4ORCEの実力を堪能した。その緻密な制御がもたらす安定感が生む安心感たるや、さすが”技術の日産”の面目躍如と言ったところ。
しかし、今のところe-4ORCEを搭載するモデルはアリアとエクストレイルの2車種しかなく、試乗車であったBEVのアリア「B9 e-4ORCE limited」は790万円。e-POWERのエクストレイル「G e-4ORCE」でも449万9000円。その性能を考えれば十分にバリューフォーマネーではあるものの、気軽に選択できる金額とは言い難い。

今や日産のトップモデルとも言えるアリアもエクストレイルに対し、より普及帯のモデルの4WDシステムはどうなっているのだろうか? 特に日産の看板とも言えるe-POWERモデルでも、e-4ORCEを搭載するエクストレイル以外のモデルはどのようなものか気になるところだ。

コンパクトSUV「キックス」

エクストレイルよりもコンパクトなSUVで、パワートレーンはHR12DEエンジンと前後にEM47/MM48を搭載するe-POWERの電動4WD。e-POWERの電動4WDはエクストレイルと同じだが、e-4ORCEは採用されていない。
日常でも使いやすいサイズもさることながら、「X FOUR」が306万1300円、「オーテック」で344万8500円と100万円〜150万円安い。
e-4ORCEではないとはいえ、前後モーターによる駆動力制御はメカニカル4WDに約3倍の制御規模で緻密に行われる(先代エクストレイルのインテリジェント4×4比)。ちなみにe-4RCEはさらにそこから1.5倍の制御規模ということになる。

キックス「オーテック」

試乗車として用意されたのはスタンダードグレード「X FOUR」と、「オーテック」でどちらも4WDだ。試乗コースは定常円、8の字、スラロームが用意されるスキッドパッドだった。
試乗したのは「オーテック」の方だ。

試乗車のキックス「オーテック」
タイヤはブリヂストン・ブリザックVRX2を装着。

氷上という限定された路面状況で安全に気を使って走っている分にはそれほど大きな違いは感じられない。e-4ORCEとまではいかなくとも基本的に安定性が高く、スムーズに加速していく。減速ではブレーキよりもe-ペダルの回生ブレーキがやはりタイヤをロックさせる心配がなくて安心感が高い。旋回も速度を出し過ぎない限りは始終安定して曲がってくれる。切りすぎや突っ込みすぎといった操作に対しては、クルマ側が安定方向に制御する仕組みになっており、極端な動きは見せない。逆にいえば、わざと派手なアクションを起こして走るようなドライビンは難しいと感じた。

発電用のHR12DEエンジンにフロントEM47、リヤMM48のモーターを組み合わせるe-POWERの電動4WD。
ドライブセレクトレバーが電動車で共通化されており、乗り換えても操作で迷うことは少なかった。
イメージカラーのブルーで彩られたシートには「AUTECH」のロゴも刺繍される。ワンランク上の仕上がりだ。

日産4WD復活の鍵は電動化にあり! エクストレイル&アリアに搭載された「e-4ORCE」は最強の四輪駆動システムか? その実力を氷上でテスト!!

日産の氷上試乗会が開催された。日産の4WD(四輪駆動)モデルを一堂に揃え、その走りを一気にテストできるまたとない機会だ。注目はやはりBEV(バッテリー電気自動車)であるアリアとe-POWERによるモーター駆動のエクストレイルに搭載された新たな4WDシステムである「e-4ORCE」。特にアリアのe-4ORCEは初の4WD・BEVだけに、注目せざるを得ない。 PHOTO:MotorFan.jp/日産自動車 REPORT:MotorFan.jp

ベーシックカー「ノート」&「ノート・オーテック・クロスオーバー」

e-POWERモデルの最もベーシックな車種にあたるのが「ノート」で、4WDモデルのパワートレインはHR12DエンジンにフロントEM47、リヤMM48のモーターを組み合わせるのはキックスと同様だ。ただし、キックスのEM47が136ps/28.6kgmの出力に対し、ノートは116ps/28.6kgmと違いがある。MM48はどちらも68ps/10.2kgmと変わらない。
このパワートレインのスペックはノーマルでもオーテック・クロスオーバーでも同じだ。

ノート・オーテック・クロスオーバー
ノート・オーテック・クロスオーバー
ノート・オーテック・クロスオーバー
e-POWERはHR12Dで発電しEM47(フロント)とMM48(リヤ)の2モーターを駆動する。
タイヤはブリヂストン・ブリザックVRX3。

価格はいずれも4WDで、ノート・オーテック・クロスオーバーが283万4700円。ノーマルのX FOURが246万9500円。e-POWERの2モーター4WDでありながら、SUVテイストのオーテックバージョンでも300万円を切り、ベーシックなX FOURであれば250万円も切るという価格設定は非常にバリューと言えるだろう。

オーテック・クロスオーバーのフロントシート。ブルーのステッチと「AUTECH」のロゴがあしらわれる。
オーテック・クロスオーバーのインパネまわり。ブルーのステッチをあしらい特別感を演出する。
X FOURのフロントシート。ステッチとロゴを除けば形状などは同じ。
X FOURのインパネまわり。機能やインターフェースに違いはない。

いざ、氷上を走らせてみると、SUVであるキックスとの違いはあまり大きくなかった。e-POWER+4WDの制御が基本的に安定方向に振られているため、走行時の安定感や安心感は同じような感覚になっているようだ。むしろ、こちらの方が車高や着座位置が低いことから、より安定しているようにも感じられた。
特にキックス・オーテックとノート・オーテック・クロスオーバーは共にオーテック仕様ということもあり、根幹に共通する走りのイメージがあるように思われた。

むしろX FOURの走りが思いのほか良かったのが印象深かった。操作に対してあまり素直で神経質なところがなく、定常円でも一定舵角で旋回姿勢をを維持するのがより容易だったのだ。
キックスよりも控えめなパワーに、約100kg軽量なのはオーテック・クロスオーバーも同様ながら、タイヤサイズがオーテック・クロスオーバーが195/60R16に対しX FOURが185/60R16と異なっており、このサイズがX FOURにフィットして扱いやすさに繋がっていたのかもしれない。

手前からノート・オーテック・クロスオーバー。ノートX FOUR。キックス・オーテック。
ノート X FOURのタイヤはブリヂストン・ブリザックVRX2。

SUVを求めるのでなければ、ノートのe-POWER 4WDは非常に扱いやすく、慣れない雪道でも安心感があるので必要以上に緊張せず疲労軽減にも効果があるのではないだろうか。
X FOURもオーテック・クロスオーバーも、雪道で発揮する力は雨や強風、不整地などのアクコンディションでの安心感で2WDを上回るのは間違いない。価格は2WDからの約+30万円となるが、雪道を走る機会がなくとも決して高い投資ではない。

日産のフラッグシップスーパーカー「GT-R」

GT-R Premium edition T-spec

R35型の日産GT-Rはスカイラインから独立して日産のフラッグシップとなるスーパーカーとしてデビューしたのが2007年。どこから15年余り、弛まぬ改良を続け現在でも一級品のスペックを持つ。
2023年1月13日〜15日に開催された「東京オートサロン2023」の日産ブースで、2024年モデルである特別仕様車「Premium edition T-Spec」と「NISMO Special Edition」が先行公開されたのも記憶に新しい。

日産GT-Rの2024年モデルが「オートサロン」で先行公開! 空力性能向上で洗練された乗り味に進化! 【東京オートサロン2023】

東京オートサロンが開幕! 日産自動車ブースでは、フロント周りを大きくイメチェンした2024年モデルのGT-Rが、正式発表に先駆けてお披露目された!

日産GT-R2024年モデル

今度のGT-Rは顔が違う! 空力を磨き上げた日産GT-R 2024年モデルが衝撃のデビュー【東京オートサロン2023】

東京オートサロンとGT-Rの縁は深い。R33型スカイラインGT-Rが1995年に、R34型が1999年にデビューを飾った。そして今年の東京オートサロンでは、R35型GT-Rの2024年モデルが初お披露目。そのキモはズバリ、空力。大幅にダウンフォースを増した「史上最高のGT-R」の登場だ。 PHOTO:中野幸次(NAKANO Kouji) REPORT:MotorFan編集部

全然違う、そうでもない? 日産GT-R 最新モデルと従来型を比べてみる

幕張メッセで開催中の東京オートサロン2023で先行公開された「日産GT-R2024年モデル」。空力を磨き上げたことで、だいぶフロントフェイスが変わった。では、どのくらい変わったか? 前型と並べてみよう。

試乗車として用意されたのは「Premium edition T-spec」。1590万4900円という価格は「Track edition engineered by NISMO T-spec」の1788万1600円に次ぐ非NISMO系の最高グレードで、専用の内装を与えられている。
熟成極まるVR38DETTにGR6型デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせたトランスアクスルFRベースの4WDはGT-Rならではの個性だ。

「Premium edition T-spec」の専用内装。
GT-RのシートやインテリアにはどことなくR32型の面影がある。
VR38DETT、3.8Lツインターボエンジン。
タイヤは試乗会で唯一ダンロップを装着。銘柄はDSX CTTだ。

なお、筆者はGT-Rを運転するのはこれが初めてであり、それがまさかの氷上。正直、GT-Rの真価を存分に味わうということはできなかった。
FRベースとはいえ熟成された4WD制御により、570ps/65.0kgmという恐るべきパワーを氷上でも可能な限り路面に伝えてくれているようで、ある程度アクセルを開けて発進しても多少左右に振られながら最小限の修正舵で加速していく。

ゼロ発進は流石の4WD。
μの低さもものともせず加速していく。
加速時の修正舵も少ない。

さすがGT-Rと感心しきりでコーナー入り口でステアリングを切ってもスピードが乗った1.7tを超える車体は舵角通りには曲がってくれず思い切りアンダーステアで膨らんでいく。それではとブレーキで減速してからコーナーに入ろうとすれば、あっという間にABSが作動しペダルにキックバックを伝えてくるが、やはり思い通りに曲がってくれない。

このような姿勢を作って走れるようなら良かったのだが……。

それならばとパワーオーバーで内側を向けようとすれば、有り余るパワーの程度がわからず一気にスピン。
このスーパーカーを初めて、しかも氷上で操るのは無理なのではと思い知らされた。結局、スピードは抑え急な操作を避けてそろそろっと走る……雪道ドライブの基本こそがGT-Rを氷上で安全に走らせる術だと感じた。
もっとGT-Rに慣れていればあるいは、もっと氷上というフィールドを楽しめたかもしれないだけに、本当に残念で仕方ない。

e-4ORCE、e-POWER 4WD、GT-Rと3種類の日産4WDを体験したわけだが、e-4ORCEの出来の良さは格別だった。2モーターEVの利点を高い制御レベルで見事に生かしており、そのハイレベルな制御による緻密かつ素早い反応速度は氷上という悪条件でまざまざと見せつけられた。
一方で、e-4ORCEではないe-POWER 4WDも車両の価格面を考えれば十分以上、それどころかメカニカル4WDを凌駕していると言えるだろう。非常にバリューフォーマネーだ。
そしてGT-R。これはもう別格。そもそも速く走るためのシステムであり、低μ路を走るためのシステムではないと感じられた。

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