度重なる改良で熟成の領域へ! マツダ ロードスター【最新スポーツカー 車種別解説 Mazda Roadster】

歴代モデルと同様、丁寧に改良を積み重ねることで熟成が図られている「マツダ ロードスター」。1.5lのパワーを使い切るドライビングが楽しい。21年のマイナーチェンジで足回りがさらに煮詰められ、タウンユースでは余裕あるしなやかさを、ワインディングでは安定した力強さでさらに楽しませてくれるだろう。
REPORT:橋本洋平(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽/神村 聖 

商品改良を繰り返し絶えず進化し続ける

登場から7年が経過している現行型だが、着実にマイナーチェンジを繰り返し熟成が図られている。それは歴代ロードスターが歩んできた道のりであり、現行型も変わることはない。

エクステリア

「S」ベースの特別仕様車「990S」は、 ダークブルーのソフトトップもチャームポイント。試乗車は、3万3000円高となる「スノーフレイクホワイトパールマイカ」をまとう。ロードスターは2021年冬に商品改良されたが、外観には手は入れられていない。
1.5l直列4気筒エンジンは、最高出力132ps/152Nmというスペック。ND型もライトウエイトらしく、パワーを使い切る楽しさを享受できる。ヘッドカバーはアルミ製で、磨く楽しみにも配慮する。「990S」は、エンジン制御ユニットの専用セッティングが施されている。
「990S」が履くホイールは、1 本あ たり800gの軽量化に寄与するレイズ製の「ZE40 RS」。フロントブレーキは青いロゴ入りのブレンボ製で、ベンチレーテッドディスク、対向4ピストンキャリパーを備える。
荷室容量は130lと小さめで、 奥行きは実測で約500mm、幅は最もワイドな所で約780mm。ゴルフバッグの積載はできないが、機内持ち込み可能サイズのスーツケースがひとつと小さめのバッグが収まる。

2021年末に行なわれた変更では、KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)なる運動学に基づいた車体姿勢の制御技術が盛り込まれたところがポイントだった。サスペンションジオメトリー×リヤイン側ブレーキに対してわずかな制動力を与えることで、アンチリフト力を生み出すことにより、新たなる走りを手にしたところがポイントのひとつだ。これは全グレードに対して搭載されている。

インテリア

手が届く範囲に操作系が適切に配置されたタイトなコクピット。「990S」のセンターコンソールボックスは樹脂製(Sレザーパッケージ以上は合皮)で、エアコン吹き出し口の加飾は、内側が青、外側がピアノブラック加飾になる。
「990S 」はベースの「S」と同様、3本のストライプが備わるファブリックシート。抜群のフィット感はもちろん、ルーフの開閉操作に配慮したためか、肩まわりで上体を支持するのではなく、腰まわりの拘束感を強めた印象を受ける。運転席には、座面前端部の高さを調整できるチルト機構が備わる。
中央に回転計を配した三眼式を採用。針はスポーツカーらしく6時の位置から始まる。
トランスミッションは内製化にこだわり、6速MTは軽量化や操作性を徹底的に追求。
アクセルはオルガン式で、クラッチミートはわかりやすい。

KPCの恩恵を最も受けているのが、リヤのLSDやスタビライザーを搭載せずに軽量化に突き進んだ990Sである。その名が示す通り、この特別仕様車は車重990kgを達成。Sというグレードで同様のものが存在するが、この990Sは内容がかなり異なり、ブレンボ製対向ブレーキ、レイズ製ホイール(6.5Jから7.0Jへ拡大)などを装備した、走りを意識したグレードとなっている。幌内側のインシュレーターも持っていないなどかなり硬派だ。また今回のマイナーチェンジで足まわりのセッティング変更も行なった唯一のモデルでもある。スプリングレートをアップさせる一方で、ダンパーはしなやかなセッティングを施すなど、新たな挑戦を行なっているところにも注目だ。

市街地ではしなやかに ワインディングでは安定感を

7年が経過してもデザインについては変更せず、中身を改良して新鮮味を出して行く手法はロードスターらしさが光っている。その最たるモデルが990Sだ。1t以下をなんとか達成したSというグレードもあるが、それとはまったく異なる印象がこのクルマには存在する。それはリヤのスタビリティをしっかりと確保した上でしなやかさも得ているところだ。かつてのSはリヤの動きに一体感がなく、高速域ではナーバスにも動いてしまうところが問題だったが、KPCを手にした現行モデルはそこをきちんと解決している。

うれしい装備

パーキングセンサーや車線逸脱警報などのオフスイッチをインパネ右下に用意。 
キー付きリヤコンソールボックスには、サングラスケースなどの小物が入る。 
カップホルダーは脱着式で、「S」と「990S」はひとつのみ。 センターコンソール後端にも装着できる。 
リヤストレージボックスは、出し入れの際はシートを前側に寄せる必要があるが、小物を収納できる。

DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)を利用し、リヤの左右に輪速差が出た時点0.3MPa ほどの僅かなレベルでイン側リヤにブレーキを掛けるKPCは、リヤの浮き上がりを抑えるだけでなく、コーナーのアプローチ段階でブッシュのたわみも抑制することに成功。ステアリングを切り込んだ瞬間からリヤが安定し、一方でアクセルを踏むとLSD効果も発揮。

ワインディングレベルで恐怖感を伴わない、レベルの高い走りを達成している。足まわりの変更やリヤスタビをもたないことで、タウンスピードからしなやかさを有していることも特徴。パワフルとは言えない1.5lエンジンだが、性能をフルに引き出して走るときの爽快感は、タイムを気にする他車とは異なるロードスターならではの世界観が存在する。

Country         Japan
Debut           2015年5月(商品改良:21年12月)
車両本体価格       262万3500円~335万6100円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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