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日産は2010年に世界に先駆け量産電気自動車「リーフ」を発売。さらに発電用エンジンを搭載して電気自動車の航続距離問題を解決し、電動車の優れた走行性能を多くのユーザーに提供するレンジエクステンダーEVの「e-POWER」をノートに搭載して発売したのが2016年。以来、日産はその両輪で熱心に電動車を展開してきた。近年、さらなる環境対応で将来的にクルマの電動化が確実になっていくなかで日産はその流れに一歩先んじた形だ。
2050年のカーボンニュートラル社会を目指し、まず2030年代早期に19車種のBEVを含む27車種の電動車を投入し、新型車の100%電動化を図る。
そのためには、電動車の価格をエンジン車と同等レベルにすることが必須であり、そのためにe-POWERとEV の部品や技術の共用化とモジュール化、コア技術の進化を進めていく必要がある。
そのための新型パワートレーンが「X-in-1」というわけだ。
新型電動ドライブトレーン「X-in-1」とは?
「X-in-1」はそういった名前のひとつのシステムではなく、EV用の「3-in-1」とe-POWER用の「5-in-1」の総称だ。これらは、それぞれに必要な構成パーツをモジュール化したものであり、EV用の「3-in-1」であればインバーターとモーターと減速機の3つ。e-POWER用の「5-in-1」であれはその3つに加え発電機(ジェネレーター)と増速機も含め5つになる。
これにより、x-in-1は現行のドライブトレーンよりも10%小型化でき、高剛性の構造を実現可能になる。それはひいては騒音や振動の低減にもつながり、電動車の走りをさらに快適なものへと進化させられるというわけだ。
さらに、両者で使用する3つのパーツは共用化することでコストを大きく下げることを目指している。すでに日産ではEVとe-POWERの各モデルで使用するインバーターやモーターを共用化しており、x-in-1によりその流れはさらに加速することになる。
くわえてモーター磁気回路を最適化し、磁石材料の進化によりx-in-1用のモーターではレアアースの使用量を1%以下(磁石重量比)とする。すでに日産では初代リーフに対し、二代目ノートe-POWERで75%レアアースの使用量を削減して起きており、その流れを加速させる勢いだ。
2021年に発表した専用設計の発電特化型高効率エンジン、2022年4月に発表した全固体電池によるバッテリー革新と合わせて、電動車のコスト削減を図っていく。
比べるとよくわかるe-POWERユニットの小型化
2016年に発売されたノートe-POWERに搭載された第一世代(さらには2010年頃の開発試作車)から、現行モデルに搭載される第二世代では、インバーターの冷却方式を変更し20%の小型化している。
インバーターの小型化はその中で使用されている各種パーツ……パワーモジュールや基盤、ハーネス、センサーなどの小型化と構成の工夫にの積み重ねによるものだ。
さらに、第三世代になる5-in-1はコンポーネンツのモジュール化によりさらに10%小型化する。下の写真は初代ノート、二代目ノートのそれぞれのe-POWERユニットだが、見比べるとその違いは明らかであり、エンジンは付いていないものの5-in-1はさらに小型化している。
30%のコスト削減でEVとe-POWERがエンジン車と同等の価格帯になる?
これらの新技術の投入により、e-POWERは2026年までにエンジン車と同等に、2030年にはEVもそれに並ぶことが目標だ。コスト削減は30%と言われているが、それが全て車両価格に反映されるというわけではないだろうが、EVやe-POWERが今より選びやすくなることは間違いない。
これにより2050年のカーボンニュートラル社会に向けて前進すると共に、日産が謳う電動車の優れた走りを多くのユーザーに提供できることなる。