スーパーカーブーム時に一世を風靡したミッドシップスポーツカー
群馬県太田市にある個人趣味のガレージ、Bibari-AUTOに集まる名車たち。今回は、ロータス・ヨーロッパに乗る佐藤明久さんを紹介しよう。
佐藤さんは以前、ケーターハム・スーパーセブンに乗っていた。極端にハンドリングだけ求めたモデルなだけに、さぞかし強烈な印象を残したのだろう、すっかり英国車、しかもオープンカーが大好きになってしまった。
スーパーセブンは大のお気に入りだったものの、数年して乗り換えることに。その時選んだのが同じ英国のオープンスポーツカーであるオースチン・ヒーレーMkII。より大人の雰囲気を味わえるスポーツカーだが、どうも佐藤さんの求めているものと違うように感じた。これで改めてロータスが好きなのだと痛感されたそうだ。
そこで再びロータスを探すことにする。今回選んだのはオープンカーではないものの、市販ミッドシップカーとして1966年に発売されたヨーロッパにした。
ヨーロッパは1966年に発売されたロータス初のミッドシップ車で、当初はメインの市場となるフランスでの整備性などを考慮してルノー製1.5リッターエンジンを搭載していた。この当時はサイドウインドウが開閉せず、シートスライドもないという極めてスパルタンな仕様。これが1968年のシリーズ2で改善され、英国本国でも発売が開始される。
そして1971年、エランやコーティナに採用されていたロータス製シリンダーヘッドを備える1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載するツインカムが発売される。シリンダーブロックはフォード製だったが、鋭いレスポンスとパワフルな特性を手に入れ、本格スポーツカーにふさわしいモデルへ成長した。
さらに1972年にはDOHCであるロータスツインカムエンジンの性能を引き上げた通称ビッグバルブエンジンを採用するツインカムスペシャルへと進化する。スペシャルには5速ミッションも用意され、高速でのクルージング性能が向上していた。
佐藤さんがヨーロッパを探していると、1台のツインカムに目が止まる。純正志向の佐藤さんだから、オリジナルに近い個体、さらには英国本国仕様を探していた。
これらの条件にピタリと合うのがツインカムだったというわけ。群馬県にお住いながら販売店がある愛知県まで実車を見に行って、最終的にその場で契約してしまった。それほどオリジナル度の高い個体だったのだ。
室内を見ると貴重な純正ステアリングホイールやセンターコンソールの灰皿が揃っていて、非常にオリジナル度は高い。だが、購入後は苦労の連続だった。
左右に分かれているガソリンタンクを連結する部分からガソリンが漏れたり、ヨーロッパの弱点であるリヤ・ハブベアリングが寿命になり、ブッシュ類も磨耗していたためゴム部品をすべて交換。さらにはキャブレターのオーバーホールやブレーキのマスターバックを交換するなど、ほとんどの機能部品を見直すことになった。
古いロータスは手がかかるもの。それを実体験として味わってこられたわけだが、今では不安なく絶好調を維持されている。取材時は小雨がパラついていたため当初は普段乗りのダイハツ・コペンで遊びに来られていたのだが、雨が止んだタイミングでヨーロッパに乗り換えていただいた。雨の中を走ることは極力避けるのも旧車乗りの常識なのだ。