加速性能は「スーパーカー並み!」テスラ4車種目の乗用車「モデルY」に乗った!【JAIA 輸入車試乗会 TESLA MODEL Y】

クルマにあまり興味のない人でも、北米の電気自動車(EV)メーカー“テスラ”の名前を聞いたことのある人は多いと思う。そのテスラから、4車種目の乗用車となる“モデルY”が昨年8月に投入された。ハッチバック車のモデル3をベースにSUVテイストに仕立てられたそのクルマを、改めてチェック&プチ試乗してみた。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

コクピットに計器類はいっさいなし。イメージはIT家電

全長は5ナンバー枠+50mm程度だが、全幅はレクサスLCと同等の1921mmとかなりの幅広。全高も高く、スマートでありながら、ややずんぐりとしたスタイリングが特徴だ。

まずクルマの概要から。ボディサイズは、全長4751mm×全幅1921mm×全高1624mm。テスラ車としてはモデル3のつぎにコンパクトだが、1921mmという全幅は、日本の駐車場事情では使いにくいシーンもあるかも知れない。

ホイールベースが2890mmと長いのは、床下になるべく多くのバッテリーを積みたいため。そのせいか最小回転半径は6.05mと、小回りは効かない。最低地上高はRWDの標準モデルで172mm、AWDの“Performance(今回の試乗車)”で157mm。

ルーフは、継ぎ目のない全面1枚ガラスを大胆に使う。

2WDが後輪駆動なのは、重量配分の関係。重たいバッテリーをホイールベース間に積めば、重量配分は自ずと50:50に近づくため、FWDにすると坂道発進でトラクションが足りなくなるし、旋回加速時にはアンダーステアが出やすくなるからだ。

車重は標準モデルで1930kg、より多くのバッテリーとフロントモーターを搭載するPerformanceが2000kg。バッテリーの電力量は公表されていないが、某ウェブサイトによれば、スタンダードモデルが57.5kWh、Performanceが75kWh。WLTCモードでの航続距離は、それぞれ507kmと595kmだとか。

たいていの車両の操作、設定をスマートフォンから行えるのは、テスラでは普通のことだ。

モーターの最高出力と最大トルクは、標準車が220kWと350Nm、Performanceが前158kW/後235kWと240Nm/450Nm。システム出力はバッテリーの最大出力に依存するため、後者はおそらく、足した値より低いはずだ。

続いて実車をチェック。フロントマスクはテスラ車に共通するグリルレスデザイン。冷却系への導風は、バンパーグリルの開口部から行う。ボンネットフードの下は容量117Lのトランクになっており、航空機内持ち込みサイズのキャリーバッグなら入りそうだ。

フロントラゲッジはそう広くはない。が、リヤに通常のラゲッジルームがあることを考えれば十分なエクストラスペースといえる。

全体のフォルムは4ドアクーペ。空気抵抗は小さそうだと思ったら、Cd値は0.23だそうだ。

タイヤサイズは前255/35R21、後275/35R21と、「そこまで必要なの?」と思える太さ。タイヤを細くして操舵角を増やしたほうが、喜ぶ人が増えるのではないか。リプレイスタイヤの価格も、あまり考えたくない。

ちなみに試乗車に装着されていたのは、ピレリのSOTTO ZERO3というスタッドレスのランフラットタイヤ。指定空気圧は前後とも290kPaと、けっこう高い。

フロント255&リヤ275の前後21インチタイヤは、ハイパフォーマンススポーツカー並み。ホイールデザインも格好いいが、あまり縁石近くまで寄せるのはやめた方が良いだろう。

ドアハンドルは外板とツライチになっており、端を押すと飛び出してくる。前ドアのサイドシル高は425mmとSUVとしては一般的だが、そこから床への落ち込みが45mmと小さく、乗り込むときに「床が少し高いな」と感じる。

ドアはサッシュレス式で、締切音は少し安っぽい。このあたりはフルドアのBYD ATTO3のほうが重厚感がある。

コクピットはテスラ車共通のイメージで、計器類はいっさいなし。機械式スイッチも、ウィンカーレバーとコラム式のシフトセレクター、あとはステアリングホイールの両スポーク上にあるだけ。オーディオや空調はもとより、ステアリング位置やミラーの調整など、ほとんどの車載装備品の操作は、センタークラスター上の液晶パネルか、ステアリングスポークの右ボタンを押して音声コマンドで行う。クルマというよりIT家電だ。

見事なまでにメカスイッチを排したインテリア。乗り慣れないと、戸惑うことは必至だろう。ここまでやるなら、ステアリングの球状スイッチも排除したくなる?

シート生地は本革ではなく合皮。ヴィーガンを意識した仕様だそうだが、それならわざわざ革に似せることはなかったのではないか。大豆で作った模造肉のハンバーグを見たときに、「お前ら結局、肉食いたいんじゃん」と思ったことを思い出した。

後席の乗降性は良好。ホイールベースが長いため、腰の動線はしっかり確保されているし、足抜けも良い。居住空間も十分広く、身長181cmの僕が座って、頭上と膝前には90mmの余裕が残る。ちなみにiPhone13の短辺が71.5mmだ。

長身者にとって好ましいのは、床から着座位置までの段差が大きいこと。ざっと測って330mmぐらいあるため、僕の体格でもモモの裏が浮かない。フロアトンネルはなく、足は前席下へスッポリ入る。後席の居住性はATTO3より上だ。

フロアコンソールの後部にリヤヒーターダクトがあるが、空調の操作はダッシュボードの液晶パネルからしかできない。オートエアコンの制御に自信があるのかも知れないが、後席乗員が操作できたほうが便利ではないか。

ラゲッジは床面長が1090mmと長く、幅もホイールハウス間で945mm。高さは後席背もたれの上までで480mmと大きいほうだ。さらに床下にはエクストラスペースがあり、ここにも機内持ち込みサイズのキャリーバッグは入りそう。

スクエアな空間が広く確保され、外観からのイメージ以上に積載性に優れたラゲッジルーム。

後席は4:2:4で背もたれが倒せ、ラゲッジとほぼフラットになる。前後長は2mぐらい確保できるので、大人2名なら車中泊もできるだろう。SUVらしく多用途性は高い。

テスラのオーナーがこのクルマで車中泊するかどうかはともかく、十分可能なスペースが用意されている。

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市街地でも扱いやすいノーマルモード。低速ではゴツゴツした乗り心地

では、走ってみよう。といっても、時間の都合で試乗会場の周りを10分ほど乗っただけなので、それほど詳細なレポートはお届けできない。

ノーマルモードでは動力性能は過激ではなく、市街地でも扱いやすい。アクセルペダルをオフにした際の回生ブレーキの効きは、ATTO3よりかなり強めだ。停止寸前の振る舞いは、3モードから選択できる。通常のATのようにクリープを残す“クリープ”と、停止までさせられる“ホールド”、ニュートラルにして惰行させる“ロール”の3種類だ。

取材時に同時に乗ることができた上陸したてのBYD ATTO3(右)。モデルYとはパフォーマンスも価格帯も異なるものの、世界を代表する二大EVメーカーとしては、比較される立ち位置にあるだろう。

ワンペダル操作は好みの分かれるところだが、僕は減速時にはブレーキペダルを踏むほうを好む。今時の回生協調ブレーキなら、それで回生量が減ることもないはずなのだが、オーナーズマニュアルを読んだ限りでは、テスラは協調を行なっていないようにも取れる。

乗り心地はタイヤサイズの影響がモロに出ており、低速域ではゴツゴツした印象は否めない。タイヤが硬いだけでなく、バネ下が重く、動きを抑えきれていない印象がある。255/45R19サイズのRWD車なら、また印象は違うはずだが、車重を考えても245/55R18あたりで十分ではないかと思う。

目の覚めるようなホワイト。ブラック内装とのコントラストが強烈で、間違いなくスタイリッシュではある。

動力性能は試せていないが、0-100km/h加速は3.7秒(RWDは6.9秒)とのこと。ガソリン車でこれに匹敵するのは、レクサスLFAやポルシェ911カレラS(992型)など。平たく言えば「スーパーカー並み」だ。

価格はRWD車が579万9000円、Performanceが750万9000円。どちらにするかと言われれば、僕なら前者で十分だ。

長いホイールベースと、広い車幅、高い全高など、後席スペースにとってはプラスの要素しかなく、とても広い空間が用意されている。見上げた天井は1枚もののガラスルーフだ。

テスラは基本的にディーラーを持たず(23年2月現在、東京に2店、福岡に1店のみ)、購入はウェブサイトから申し込む。修理や整備は全国5箇所あるサービスセンターに持ち込むか、出張サービスを利用。車検は自分で行うか、民間の整備工場に頼むことになる。

こうすることで低価格を実現しているのは理解できるが、購入を躊躇させる要因になっているのも、また事実ではないだろうか。

TESLA MODEL Y Performance

全長×全幅×全高 4751mm×1921mm×1624mm
ホイールベース 2890mm
車両重量 2000kg
駆動方式 四輪駆動
タイヤサイズ F:255/35R21 R:275/35R21

フロントモーター最高出力 158kW(215ps)
フロントモーター最大トルク 240Nm(24.4kgm)
リヤモーター最高出力 235kW(320ps)
リヤモーター最大トルク 450Nm(45.9kgm)

価格 7,509,000円

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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…