「買ってみたい」という人を止める理由は見当たらない。話題の最新電動SUV「BYD ATTO 3」に乗った!【JAIA 輸入車試乗会】

電池メーカーを母体に完成車メーカーへと進出するや、一気に世界最大のEVメーカーとなった中国BYD。日本でのデリバリーは始まったばかりだが、昨今、業界関係者の注目は非常に高いものがある。そんなBYDが日本に初上陸させた「ATTO 3」の出来栄えやいかに。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp

全長4455mm。激戦区ど真ん中の扱いやすいサイズ感

全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mm。全幅がやや広いものの、大き過ぎず、競合車種も多いボリュームゾーンだ。
スポーティかつクリーンなリヤビュー。車幅にゆとりがある分、サイド面は豊かな抑揚がつけられている。

世界最大のEVメーカーであるBYDが、いよいよ日本での販売を開始した。“BYD”という名前は、企業理念である“Build Your Dreams”の頭文字を取ったものだそうだ。

同社は1995年に電池メーカーとして中国深圳市に創業し、03年に国営西安秦川自動車を買収して自動車事業に参入。自動車部門を“BYD Auto”として分社化し、08年に世界初の量産プラグイン・ハイブリッド車“F3DM”をリリース。日本は15年から電動バスの販売を始めているほか、電動フォークリフトでも実績を挙げている。

企業理念の“Build Your Dreams”はリヤウインドウ下にロゴ化されている。

日本に投入される最初のモデルは、SUVのATTO3。全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mmというサイズは、国産車ならホンダ・ヴェゼルとZR-Vの中間で、少しばかりワイド、といったイメージだ。SUVだけれど4WDではなく、150kW/310Nmのモーターで前輪を駆動する。サスペンションは前ストラット/後トレーリングリンクをベースとしたマルチリンク式、という構成だ。

板状のプレードバッテリーがフロア下に配置される。

バッテリーには三元系(ニッケルコバルトマンガン酸)リチウムイオン電池より低コストで安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載。単セルのエネルギー密度が劣る分は、板状にした“ブレードバッテリー”をモジュール化せずにスタッキングすることでカバーし、バッテリーパック全体のエネルギー密度を三元系同等まで引き上げた。

総電力量は58.56kWhで、1充電あたりの走行可能距離はWLTCモードで485km。実力値でも350kmぐらいは安心して使えるのではないか。車両本体価格は440万円と、三菱エクリプスクロスPHEVより安い。

一充電走行可能距離は485kmとまずまず。440万円の正式価格は割安に感じられる。

外観はご覧の通り、気をてらわない手堅いデザイン。フロントグリルをスケルトン風に仕上げることで電動車っぽさを出している以外は、正攻法のSUVスタイルだ。幅を無理して抑えていないため、ショルダーの張り出しやフェンダーの造形に無理がなく、面品質も国産車に遜色はない。

一方で、「フィットネスジムをモチーフにした」という内装デザインは独創的。ポップでカジュアルな雰囲気は、スズキ・ハスラーに通ずるところがある。加飾類の合い・添い精度も良好だ。樹脂部品の質感はそれほど高くはないが、デザイン相応で悪くはない。ステアリングは本革巻きかと思ったら、合皮だそうだ。

エクステリアに比べると、インテリアの方が独創的かつ個性が強い印象だ。

センターディスプレイはタブレット端末そっくりで、ステアリングのスイッチ操作で縦向きにも横向きにも変えられる。角度もドライバー側に向けられたらもっと良いのだが、2自由度以上、動くようにすると、ガタや音を抑えるのが大変になりそうだ。

運転席のヒップポイント地上高は620mmぐらいか。身長181cmの僕なら、お尻を落としたところにシートがある感じ。サイドシル幅も150mm程度と細身なので、乗降性は良い。EVにありがちな床の高さも感じられない。

後席の乗降性も良好。特にサイドシルからリヤフェンダーにつながる部分をうまく逃しているので、降車時に足を出した際、ふくらはぎが干渉しない。非常に良い配慮だ。

後席の頭上スペースは、僕の体格で約50mm、膝前の余裕は約90mmと十分。床は平らで、前席下への足入れも良い。ただしヒールtoヒップの段差は小さめで、僕の体格ではモモの裏が浮いてしまう。

ラゲッジの床面は、長さ810mm×幅(ホイールハウス間)960mm×高さ(トノカバー下)350mm。高さ方向が小さめだが、フロアボードを床下に落とし込むと、同じ床面積のまま約165mmの深さが稼げる。総じてパッケージングは良いバランスだ。

乗り味はコンフォート系ながら、ワインディングも楽しめる

スポーティなシート形状。EVならではの床高感は感じられない。

では、走り出そう。独特な形状のシフトレバーの操作感は悪くない。ウィンカーレバーをJISに合わせて右に直しているあたりに、日本市場攻略への本気度が感じられる。

発進は穏やかで、アクセルを踏んだ瞬間の唐突感もまったくなし。回生ブレーキもエンジンブレーキ程度に穏やかなので、エンジン車から乗り換えても、違和感は抱かないだろう。それでいてトルク応答は速いし変速もしないので、勾配が頻繁に変わる山間部も滑らかに走れる。

前後方向、頭上まわりのスペースは十分広い。フロアに対して座面がもっと高いとさらにラクだ。

ちょっと気になるのが、歩行者に接近を知らせる警報音が車内に響き渡ること。クルマの遮音性の問題ではなさそうなので、音量自体が大きいのか、音源の取り付け位置が悪いかのどちらかだろう。あるいはADASのセンサーを使って、聞かせるべき相手がいないときには鳴らさないようにする、ということはできないだろうか?

乗り味はソフトなコンフォート系。タイヤは235/50R18と低ハイトだが、1750kgある車重を生かして、うまくゴツゴツ感を消している。操舵応答はマイルドながら、だらしなくロールするわけでもなく、ワインディングもそれなりに楽しめる。低速域で電動パワーステアリングが中立を締めようとする制御が強く、それに抗って切り込むと、カクンと手応えが抜けるのが気になるところか。

フロアボードを下段にセットすれば、165mm余分に高さを稼げる。

サスペンションの前後コンプライアンスは大きめで、段差乗り越え時のショックは少ない反面、乗り越えた後にブルっとした残響が生じる。「ちょっと前のトヨタ車っぽいな」と思ったら、トヨタとBYDはパートナーシップ関係にあり、トヨタは共同開発したEV“bZ3”を昨年秋に中国市場に投入している。BYDはトヨタ車を参考にしているのかも。

品質的にも性能的にも非常に良く作り込まれており、買ってみたいという人を止める理由は見当たらない。リセールバリューが気になるところだが、月額44,440円で4年間乗れるサブスクリプションも用意されているから、これを利用してみるのも良いのではないか。

タイヤサイズは235/50R18。取材車両はコンチネンタルのEcoContact 6 Qを履く。

問題は「どこで買えるの?」ということだが、当初は北海道から沖縄まで全国34店舗からスタートし、25年には100店舗超えを目指しているとのこと。居住地近くにディーラーがあるかどうかは、ウェブサイトhttps://byd.co.jp/e-life/dealer/で確認できる。

普通充電、急速充電の充電口位置は右フロントフェンダー。V2L、V2Hに対応する。
BYD ATTO 3


全長×全幅×全高 4455mm×1875mm×1615mm
ホイールベース 2720mm
最小回転半径 5.35m
車両重量 1750kg
駆動方式 前輪駆動
サスペンション F:マクファーソンストラット R:マルチリンク
タイヤ 前後:235/50R 18

モーター種類 交流同期電動機
モーター型式 TZ200XSQ
最高出力 150kW(204ps)/5000-8000rpm
最大トルク 310Nm(31.6kgm)/0-4620rpm

駆動用バッテリー種類 リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量 58.56kWh

トランスミッション 1段固定式

一充電走行距離(WLTC) 485km

価格 4,400,000円

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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…