新開発1.5Lターボ+第3世代e-POWER+e-4ORCE搭載のフラッグシップミニバン

新型日産エルグランドの実車に触れ、短時間ではあったがテストコースで試乗した。新しいエルグランドは「プレミアムグランドツーリングミニバン」をテーマに、乗る人すべてがくつろげる極上の快適空間と、どこまでも走りたくなる運転の楽しさにこだわって開発されたという。

新型日産エルグランド
新型日産エルグランド

乗り心地と走りについては、第3世代e-POWER(エンジンは発電に徹し100%モーターで駆動するシリーズ方式のハイブリッドシステム)と進化したe-4ORCE(電動駆動4輪制御システム)、インテリジェントダイナミックサスペンション(IDS:減衰力可変ダンパー)の統合制御で最適化を図っている。

現行エルグランドのパワートレーンは3.5L V6自然吸気エンジンもしくは2.5L 直4自然吸気エンジンとCVTの組み合わせで、2WD(FF)と4WDを設定している。新型はe-POWERのみの設定で、リヤにもモーターを搭載する4WDのみ。第3世代e-POWERの投入はエルグランドが初となる。エンジンは新開発の1.5L 直3ターボ。発電専用に設計された高効率なユニットとなっており、低燃費がウリだ。

発電に特化した1.5Lターボエンジンと5-in-1電動パワートレインからなる第3世代e-POWERを搭載する。

開発陣は実名を挙げることは避けているけれども、新型エルグランドの最大のライバルはトヨタ・アルファード/ヴェルファイアが想定される。なかでもど真ん中のライバルとなるのは、2.5Lハイブリッド車だろう。この仕様のWLTCモード燃費は2WD(FF)が17.5〜17.7km/L、4WD(リヤにモーターを搭載するE-Four)が16.5〜16.7km/Lだ。新型エルグランドはリヤにも高出力のモーターを搭載する4WDのみの設定なので、ドンピシャのライバルはアルヴェル2.5Lハイブリッド車の4WDということになる。

「数字は申し上げられないが、競合のハイブリッド車に対して負けない数字を達成しています」と開発者のひとりは筆者に説明した。「従来のe-POWERはガソリン車と共用のエンジンを使っていたのですが、今回は発電に特化することで燃焼効率のいい領域を広くすることができ、とくに高出力側が広くなっています。そのため、高速燃費が大幅に良くなっています」

試乗車のタイヤサイズは235/60R18。

今回は短時間短距離の試乗だったので燃費は確認できていない。従来のe-POWERは高速燃費が弱点とされてきたが、第3世代e-POWERはどうなのか、機会を待って確認してみたいと思う。

500Nm超のビッグトルクと、ライバルを凌駕する圧倒的な静けさ

最高出力や最大トルクなどのスペックは未公表だけれども、最大トルクはフロントとリヤのモーターを合わせると500Nm以上になると公表されている。エンジンにあてはめてみると、3.0L V6ターボあるいは5.0L V8自然吸気エンジン並みということになる。つまり、とっても大きなトルクを発生するということだ。しかも、モーター駆動なので応答性が高く、発進や過渡でのアクセル操作に対するレスポンスがいいのが利点だ。

この点については短い試乗時間でも確かめることができた。発進時にクルマの重たさを感じることはなかったし、アクセルペダルを踏み込むとイメージどおりに動き出す。巡航スピードに達するのにストレスは感じないし、なんなら力強く息の長い加速を披露してくれる。

新型日産エルグランドのインストゥルメントパネル。

そして、走行シーンを問わずとことん静かだ。高い静粛性を実現している技術のひとつは、第3世代e-POWERである。従来は複数の部品で構成されていた電動パワートレーン(走行用モーター、発電用モーター、減速機、増速機、インバーターで構成)をひとつのケースに収めた効果で剛性が高くなり、振動が低減されているという。さらにオーディオスピーカーから逆位相の音を発することでノイズを低減するアクティブノイズコントロール(ANC)が、とくに停車時〜低速走行時に効いている(機能のオンオフで確認した)。

また、高機能遮音膜を採用した超高遮音ガラスを広範囲に採用することで、主に風切り音の低減を図った。強い加速を望んだ際に発電用エンジンが高回転まで回るシーンではエンジン音が車室内に透過してくるが、ボリュームは低く抑えられているし、それ以外のシーンではエンジンの存在をまず意識することはない。ロードノイズもよく抑えられている。極めて静粛性の高いクルマ、という印象だ。

プレゼンテーションでは、新型エルグランドと競合他車とで、信号発進時相当の加速をした際の室内音について解説があった。エルグランドは競合車より約5dB(デシベル)静かとのことだ。では5dBとはどの程度の違いなのかというと、iPhoneで音楽を聴いているときのボリューム3クリック分に相当するという。つまり、3クリックボリュームを下げた静けさがエルグランドというわけ。

ラゲッジルーム(3列目シート使用状態)
ラゲッジルーム(3列目シート格納状態)

巨体を忘れさせる軽快な身のこなしと、妥協なき乗り心地

新型エルグランド、乗り心地がいいし、走りも好印象だった。これはe-4ORCEとIDSの連携が効いているように思う。説明文的に記せば、「路面に合わせたIDSの制御と、加減速時のe-4ORCEによる緻密なトルク配分およびブレーキ制御」の効果ということになる。要するに前後のモーターと減衰力可変ダンパーを緻密に制御することで、姿勢を最適に制御しているということだ。

新型日産エルグランド

加速時はリヤが沈み込む動きが出るし、減速時はフロントが沈み込む動きが出る。路面の凹凸に合わせて車体は上下に揺れる。交差点の角であれカーブの進入であれ、ステアリングを切り込むと車体は外側に倒れこむように姿勢が変化(ロール)する。カーブであれば、ドライバーの意図以上に外側にふくらんだり、内側に巻き込んだりするような動きが出ることもある。

意図して強めにアクセルを踏んだり、強めにブレーキを踏んだりしても、新型エルグランドはのけぞったり、前のめりになったりする動きが過度に出ない。それに、ステアリングを切り込んだ際のロールがゆっくりと発生し、乗員を不安に陥れるような動きが出ない。大きく重たく、重心は高いはずだが、イメージどおりに向きを変えてくれ、タイトなコーナーも俊敏にクリアしてくれる。想像以上に身のこなしが軽い。

新型日産エルグランド

ドライブモードはSTANDARD、SPORT、COMFORT、ECO、SNOW、PERSONALの6種類が用意されており、モードを切り換えるとパワートレーン、ステアリング、IDS、e-4ORCEの特性が切り替わる。例えば、スポーツを選択したとしても「硬い」と感じるようなハードな乗り心地にはならないし、コンフォートを選んでもふわふわしすぎない。「何かを妥協するようなことはしていない」と技術者。パーソナルでは、自分好みの組み合わせにできる。

新型エルグランド、なかなか、いや、かなり好印象だった。静粛性の高さが印象的だったし、瞬発力があり、力強い加速が高車速域まで持続するのも好印象。大きさや重さを感じさせず、思い通りに気持ち良く動いてくれるのも好印象だ。じっくり眺めたり、過ごしたりする時間的な余裕はなかったが、インテリアの質感も悪くなさそう。好印象だらけの初対面だった。