新型ジムニーオーナーが「ジムニーシエラ」に試乗してみると? 【ジムニーオーナーレポート Vol.19】

キャビンは同一。エンジンが660ccから1500ccに代わり、ワイドトレッド&オーバーフェンダー付きとなるのが、ジムニーとジムニーシエラの大きな違いだ。軽ジムニーオーナーの著者にとって、小型車のジムニーシエラはどのように感じられたのだろうか!
REPORT:出来利弘(TOSHIHIRO Deki)

軽ジムニーほどギヤチェンジが忙しくないジムニーシエラ

新型ジムニー&ジムニーシエラのデビュー当時、ジムニーシエラ 「5MT」だけは広報車がなかったためか、MTのジムニーシエラ試乗記はどこにも載っていなかったのだが、東京都内で唯一の新型ジムニーシエラ JC(5MT)の試乗車がスズキアリーナ杉並方南店にあるとの情報を得て、試乗してきた。

ジムニーと比較してジムニーシエラ はオーバーフェンダーによる迫力あるフォルムが印象的だ。フロントバンパーも少しワイドになっている。

自然吸気4気筒の1500ccエンジンを搭載し、迫力のあるオーバーフェンダーが特徴のジムニーシエラ。歴代ジムニーシエラの中で最も排気量が大きく、エクステリアデザインも格好良い。一方、多くの部分は軽のジムニー XCと共通で、特にインテリアはメーターパネルの表記を除いてほぼ同じだ。乗り込んで、見える景色も変わりない。

エンジンをかけて、「ブォーン、ブォーン」と空吹かししてみるとエンジンのピックアップが良い。回転上昇のレスポンスだけでなく、「回転落ち」も重めのフライホイールを採用しているという割にはかなり速い。ギヤを1速に入れ、軽いクラッチペダルを操作、走り出しも楽で低速トルクもしっかり出ており、渋滞路でもギクシャクする事なくとても走り易かった。

この辺りは軽の660ccターボであるジムニーの方がギヤを小まめに変えて上手く乗ってあげないといけないので、ジムニーシエラ の方が楽で少々ラフに扱ってもクルマが穏やかに受け止めてくれる感じだ。ギヤ比は燃費よりも走りの楽しさを重視した設定で、1、2、3と気持ちよくシフトアップしながらクルマとの対話を楽しめる。全体的に軽のジムニーより1000回転ほど低めの回転で走れるので車内は静かで落ち着いた感じがする。

直列4気筒DOHC16バルブエンジンはロングストロークタイプで低中速域から粘り強く、街乗りやオフロードで乗りやすく頼もしい。特別パワフルな訳ではないが、ガソリンエンジンらしいレスポンスに優れ、自然に乗れて気持ちいい。

エンジン3気筒のジムニーに対して、4気筒ということもあって特に高速走行では静かで余裕のある走りが楽しめそうだ。乗り心地も良好でロードノイズもよく押さえ込まれている。それでいて、路面の状況がとてもよくわかるのも嬉しい。ブレーキも素晴らしい。効き方が自然で制動力も十分にある。ブレーキを抜くときのブレーキパッドの離れ具合が自然なので「カックンブレーキ」になって、ギクシャクするようなことがない。街乗りの足として使うにはとても重要なポイントだ。

大きなオーバーフェンダーとワイドトレッド化で狭い道は走りにくくないか気になっていたが、考えてみればミラーtoミラーは軽のジムニーと同じなので、街中では車幅に気を使うことはほぼなかった。それよりも久しぶりに余裕で5ナンバーサイズに収まる車幅で街中を走れる「乗用車」として、とても魅力的に思えた。

キネティックイエローのボディカラーにブラックの無骨なオーバーフェンダーで本格オフローダーらしい迫力が増している。リヤバンパーもジムニーより少しワイドで長い。

小型車規格を想定した軽自動車はジムニー以外にも登場してほしい

国産乗用車は輸出メインで考えられ車幅は1800mmを超えるものが多くなったことで日本の街中では扱いにくくなっているだけに、国内でとても扱いやすい軽自動車枠の車体をベースに大きなエンジンとオーバーフェンダー装着により小型車規格とするクルマは実に魅力的な存在だ。

今後、他のメーカーからもこのパターンで1500ccやそれ以上のエンジンを搭載した車両を出して欲しいし、それに見合った安全性や剛性を与えることで、軽自動車としてはオーバークオリティなジムニーが存在するのと同様、小型車を見越した設計によりジムニー以外にも魅力的なモデルが増えて欲しいと感じた。デメリットとしては軽規格がベースのため、乗車定員が4人乗りのままであることくらいではないだろうか。

ジムニーシエラは15インチタイヤを採用し、ワイドトレッド化しているため、乗り心地は異なる。軽のジムニーの方は16インチタイヤだ。

リサーキュレーティングボール&ナットのステアリングは慣れないと切り遅れるのはジムニーと同じで、慣れが必要。コーナリングはワイドトレッドで安定しているが、軽のジムニーよりもややボディ剛性が低く感じられた。タイヤサイズの違いなども影響しているのかもしれない。

新型ジムニーに乗って、「軽で十分じゃないか」と思っていたが、ジムニーシエラ に乗ってしまうと「この余裕もいいな」と思ってしまったというのが正直なところだ。価格差もそれほどないので、長時間走行や長距離移動が多い人はジムニーシエラ の方が疲れも少なく、より用途に合うかもしれない。

オフロード走行やキャンプのためのクロスカントリーモデルとしてだけでなく、街乗りから高速走行用の足として乗る「純ガソリンエンジン車で最後に新車購入するクルマ」にジムニーシエラ JC(5MT)を選択する人は、きっと幸せなカーライフが送れるだろう。

インテリアは基本的にジムニーと同じで変わらない。5MTのジムニーシエラ は想像以上にバランス良くチューニングされていて、「走る」「曲がる」「止まる」を無意識にできるので疲れないが、スローなステアリングだけは慣れるまで注意。

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著者プロフィール

出来利弘 近影

出来利弘

1969年千葉県出身だが、5歳から19歳まで大阪府で育つ。現在は神奈川県横浜市在住。自動車雑誌出版社でアル…