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Zグレードから13.5万円高はリーズナブル
ヤリスクロスにGR SPORTがラインアップに加わったのは2022年8月。今回、ようやく、その試乗機会を得た。
ヤリスクロスGR SPORTをすでに所有している人も多いだろう。このヤリスGR SPORTのアップデートの内容と価格を見比べてみると、お得な買い物をしたと感じているに違いない。メーカーでしか手を入れることのできない、ハイスペックモデルのGRヤリスのサスペンションの一部流用や、モータースポーツ活動の知見を生かしたアップデートはドライブシャフトを1.5倍の強度を持つものへの変更、ハブやベアリング、ブッシュなども強化、サイズアップするなど変更箇所は多岐にわたる。
ボディワークも補強材や前後エクステリアデザインをGR専用のものを採用し、パワーユニットに関しても制御系を見直すことで、見た目はもちろん、あらゆる角度から乗り味向上に努めている。これで価格差はベースモデルのGグレードからは34.7万円高、上級グレードのZと比較する13.5万円高と、カタログモデルの一員として充分に成立するポジションにある。
接地感の高さと旋回トラクションの安定感が○
乗ってみれば車両全体のアップデート効果は大きいことがわかる。HEVモデルでありながら重量物をフロントに積んでいる感覚が薄いし、背の高さも意識させない。SUVのパッケージングによるスペース的なゆとりもあるだろうが、重量物がドライバー寄りに集中していうような重量バランスの良さがあって、前後左右の動きに無駄がない。
旋回中にアクセルのオンオフを行なうと、燃料制御システムのアップデートによるレスポンスの良さで、ターンインからアウトまで右足の操作に忠実に反応。GRヤリス譲りのフロントサスセクションの強化は路面を確実にキャッチし、パワーを正確に伝達する。
なかでも旋回中にパワーをかけていったときに内輪が暴れるようなことがなくグイグイと引っぱっていってくれる。GR SPORTに関してはFF一択だが、この接地感の高さと旋回トラクションの安定感はオンロードにおいてはヨンクの性能を補ってあまりある。
むしろ、日常領域の範囲ではヨンクユニットを持たないことによる軽さと正確なハンドリングによってGRらしさは最大限発揮されていると言える。
加減速の安定感も持ち味のひとつ。アクセルのオンオフに対する反応が良いにも関わらず、速度調整の際にもボディは常にフラット感をキープしてくれている。10mmダウンされた車高に加えて、荷重ののりづらいリアサス回りの大幅な変更によって常に高い接地感をキープ。
高速コーナーや連続するコーナーなどではリヤの追従性の良さが最大限発揮され、背が高いながらもコンパクトなボディを姿勢の乱れなく軽快に走らせてくれる。
コンパクトSUVに関しては欧州勢の安定感に後れを取っていた印象だったが、このヤリスクロスGR SPORTに関しては充分に渡り合える。HEVシステムによる経済性効果や静粛性の高さを考えると、日本車ならではきめ細やかな気遣い分だけリードしたと言って良い。
GRと聞くと少々専門的な走りに特化している印象も未だ濃いが、GR SPORTグレードの投入でズッと身近な存在となった。それも質感や安心感、などといった、一般ユーザーがほしい走りの良さとして、充分に恩恵に預かれる。こんなアップデートならぜひともベース技術としてさらなる展開も期待したい。
これがスタンダードになったら、きっとドイツ神話の声も小さくなってくるはずだ。
トヨタ・ヤリスクロス GR SPORT HYBRID(FF) 全長×全幅×全高:4185mm×1765mm×1580mm ホイールベース:2560mm 車重:1180kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ 型式:M15A-FXE 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:91ps(67kW)/5500pm 最大トルク:120Nm/3800-4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー 燃料タンク:36ℓ フロントモーター:1NM型交流同期モーター 最高出力:80ps(59kW) 最大トルク:141Nm 燃費:WLTCモード 25.0km/ℓ 市街地モード25.9km/ℓ 郊外モード:26.1km/ℓ 高速道路:23.9km/ℓ 車両本体価格:275万円