ホンダ・フィットに大人用スポーツバイクは積載可能? スポーツ自転車積載チャレンジ:第10回 ホンダ・フィット編】

自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性をチェックする「スポーツ自転車積載チャレンジ!」 第10回目は、筆者がかねてより試してみたかったホンダ・フィットを取り上げる。Bセグメントコンパクトではさすがに難しいような気もするが、果たしてその積載性やいかに。全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひ参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

ホンダ・フィット e:HEV RS

全長4080mm 全幅1695mm 全高1540mm 車両価格2,346,300円

センタータンクレイアウトや後席チップアップ、低床ラゲッジフロアなど、Bセグメントコンパクトの中でも随一の積載能力を誇るのがホンダ・フィットだ。取材車は、スポーティな走りとルックスを手に入れた新規追加の「RS」だ。

コンパクトカーにスポーツ自転車を積むならフィットしかない?

この企画で当初から「試してみたい」と思っていたのが、ホンダ“フィット”。センタータンクレイアウトで後席チップアップができるから、その状態で助手席を目一杯前にスライドさせれば、もしかすると前輪を外すだけでロードバイクが積めちゃうのでは? と思っていたからだ。

「ロードバイクの車輪なんて簡単に外せるんだから、後輪も外してリヤシートに積めばいいじゃない」という声が聞こえてきそうだが、ディスクブレーキのスルーアクスルは従来より一手間かかるし、シマノの変速機はシングルテンションになってから、プーリーケージを引っ張らないと着脱しにくくなった(マニアックな話でゴメン)。しかもチェーンの処理が面倒だから、後輪は外さずに積めたほうがいい。

というわけで、さっそく試してみたのだが、目論見通り、ピッタリ積めてしまった。積み下ろしする際も、自転車を持ったまま体を中に入れられるから、作業性も良好だ。

フィットの特徴は、リヤシートの座面がチップアップできること。「背の高い荷物が積めますよ(最大室内高1260mm)」ということで、カタログには観葉植物を載せた写真が掲載されている。でも、そんなもの運ぶことはほとんどないし、正直「使う機会はあるの?」と思っていたのだけれど、斜めに使ったら前輪を外しただけでロードバイクが積めてしまった!

積み込んだ後の固定方法を考える必要はあるけれど、後輪は跳ね上げた後席にちょうど当たるし、フロントフォークも床に着いており、車体は意外と安定している。助手席のスライド位置を調整するとか、リクライニング角を調整するとかすれば、それだけで倒れなくなりそうだ。

スペース的には「ほぼギリギリ」なのだが、逆に動いたり倒れたりもしにくい。ハンドルステムとBピラートリムの間にクッションを挟み、助手席のスライド位置や背もたれ角を調整してハンドルを押さえれば、走っても倒れなくなりそうだ。

ただしこの積みかたの欠点は、ドライバーしか乗れなくなること。一人で出かけるなら問題ないけれど、カップルで出かけるには、前後輪とも外してサドルも下げて、後席を折りたたんだラゲッジに並べて積むしかないだろう……、と考えて、後席を折りたたんでみたら、あれ? なんかスペース広くない? ひょっとして後輪は付けたままでも載るんじゃないの? と気がついた。

それなら試さないのは勿体無い。ということで、やってみたのだが、スペース的にはピッタリ収まり、フロントフォークのサポートも装着できた。SUVでも車輪は前後とも外さないと積めないものが少なくないのに、コンパクトカーでできてしまうとはビックリだ。

こちらは正攻法でラゲッジに積載。スペース的には収まるが、間口の天地が不足気味なので、積載作業はけっこう大変。一旦、斜めにする必要があるので、2台目を積むのは大変そうだなぁ……と思ったら。

ただし、積み込み作業はけっこう大変。バックドア間口の天地が不足気味なので、傾けた状態で中に入れなければならならず、最後は寝転ぶようにして作業しなければならない。とはいうものの、積み込みの際に障害になるのはサドルだけなので、僕のバイクより小さいフレームだとか、スローピングタイプのフレームならば、もっと楽に積めると思う。

そんなことを考えながら、撤収作業を開始。後席のドアを開けてフロントフォークのサポートを外したところで、ふと気づく。「このまま後席ドアから出せるんじゃないの?」

で、試してみたら大成功。体がクルマの外にあっても自転車の重心近くを持てるため、バックドアから降ろすよりもはるかに楽だ。しかも、積み込む際には逆のモーションで行えば、間口にサドルが引っかかることもなく、無理な姿勢を取ることなく楽々積める。

リヤシートを折りたたむと座面ごと沈み込むため、天地寸法はたっぷり取れる。ドアも90度近くまで開くため、ここから積み下ろしすれば、どこも引っかからない。自転車はシートチューブとハンドルが持てるので、作業は楽ちん。

ということで「後輪を付けたまま積めただけでも凄いよね」から「すごく積み降ろししやすいじゃん!」になったのだった。これなら無理してSUVを買うことはないし、自転車を積まない普段使いでも、コンパクトカーなら無駄はない。

ハンドル周りはヘッドレストの横までしか来ないので、助手席乗員の快適性も阻害されない。一人で乗る場合、背もたれを倒し気味にして自転車を固定するという手も使えそうだ。

ロードバイカーがフィットに乗るのは、なんだかすごくクレバーな選択に思えてきたぞ!

参考までに身長171cmの男性が横になってみると、頭の下に隙間を埋めるクッションなどを置きたいところだが、スペース的には若干の余裕を持って斜めに寝ることができた。ホンダ公式サイト(https://www.honda.co.jp/outdoor/stay-car/fit/)には、前席を目一杯前に出せば174cmの前後長が確保できるとある。お見事!

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積載自転車の寸法図

■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。

■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

著者と自転車のプロフィール

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メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。


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ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…