絶好調のトヨタ・ハリアー トップモデルのPHEVはHEVとどこが違う?

トヨタ・ハリアー Z PHEV 車両価格:620万円
トヨタ・ハリアーのセールスは依然として好調だ。プレミアムクラスSUVながら月間販売台数のTOP10の常連。そのハリアーは2022年10月に一部改良を受け、PHEVモデルが追加された。果たして、トップレンジを担うハリアーPHEVはどんなクルマか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

ハリアーPHEV どんなモデル?

全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm ホイールベース:2690mm 車両重量:1950kg 前軸軸重1100kg 後軸軸重 850kg

トヨタは2022年10月にハリアーを一部改良すると同時にプラグインハイブリッドシステム搭載車(PHEV)を追加した。ハリアーは2020年に4代目に移行しているので、発売後2年を経て一部改良を受けたことになる。一部改良版のガソリン車とハイブリッド車(HEV)は10月4日、PHEVは10月31日に発売された。

一部改良では、予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」のプリクラッシュセーフティに交差点右折時の対向直進車および右左折時の対向方向から横断してくる歩行者を検知する機能が追加された。この機能は全車に標準で装備される。

また、コネクテッドナビ対応のディスプレイオーディオを採用。12.3インチの大画面ディスプレイを設定したほか、車載ナビを搭載。クルマがWi-Fiスポットになる車内Wi-Fiを採用した。ステアリングホイールの奥に位置するメーターには、12.3インチTFTカラーメーター+マルチインフォメーションディスプレイを採用している(いずれも、Z系グレードに標準装備、またはオプション設定)。

エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:A25A-FXS 排気量:2487cc ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm 圧縮比:- 最高出力:1787ps(130kW)/6000rpm 最大トルク:219Nm/3600rpm 過給機:× 燃料供給:DI+PFI(D-4S) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:55L モーター: フロント 5NM型交流同期モーター  最高出力182ps(134kW)  最大トルク270Nm リヤ 4NM型交流同期モーター  最高出力54ps(40kW)  最大トルク121Nm バッテリー容量:355.1V/18.1kWh

追加されたPHEVは、HEVをベースにしながらフロントモーターを高出力化し、バッテリー総電力量を引き上げ、外部電源からの充電を可能にし、最大1500W(AC100)の外部給電も可能としている。エンジンはHEVと同じA25A-FXS型の2.5L直列4気筒自然吸気を搭載。フロントモーターはHEVの3NM型に対してPHEVは5NM型で、最高出力/最大トルクはHEVの88kW(120ps)/202Nmに対し、PHEVは134kW(182ps)/270Nmを発生する。

リヤにはHEVと同様、4NM型のモーターを搭載する。最高出力/最大トルクは40kW(54ps)/121Nmだ。トヨタお得意のリヤにモーターを搭載する全輪駆動(E-Four)である。システム最高出力はHEV E-Fourの163kW(222ps)に対し、PHEVは225kW(306ps)。床下に搭載するリチウムイオンバッテリーの総電力量は18.1kWhで、国土交通省審査値のEV走行換算距離は93kmだ。

バッテリー搭載位置はここ。
リヤサスペンションはダブルウィッシュボーン式。

HEVモデルと外観の違いは?

PHEVには専用の見た目が与えられている。間違い探しと似たようなもので、「ここが違う」と教えてもらって初めて気づくような細かな違いの集積だが、一度気づいてしまうとそこばかり気になってしまう部位ばかりだ。

例えばフロントグリル。トリム的にはPHEVと同一仕様のHEV Z Leather Packageがグレーメタリック塗装+メッキモールなのに対し、PHEVはブラックメタリック塗装+スモークメッキモールとなる。また、PHEVの前後バンパーロワは艶ありブラック塗装となる。これらはなかなか難易度の高い識別点だと思うが、ドアハンドルは一目瞭然で、HEVがメッキなのに対し、PHEVはボディ同色となる。もっとも、フロントフェンダーとバックドアに「PLUG-IN HYBRID」のバッジが装着されるので、識別は容易だ。

PHEVと同一仕様のHEV Z Leather Packageがグレーメタリック塗装+メッキモールなのに対し、PHEVはブラックメタリック塗装+スモークメッキモール
PHEVの前後バンパーロワは艶ありブラック塗装
タイヤは前後とも225/55R19サイズ ブリヂストンECOPIA H/L422 Plus ブレーキは前後ベンチレーテッドディスク(HEVはリヤはソリッドディスク)

ホイールはHEVが切削光輝とダークグレーメタリック塗装の組み合わせなのに対し、PHEVは切削光輝とブラック塗装の組み合わせ。写真のグレーメタリックはPHEV専用色である。

インテリアはHEV Z Leather Packageのシートステッチがダークグレーまたはブラウンなのに対し、PHEVはダークレッド。ダッシュボードやドアトリムに入る金属メッシュ質感のパイピングオーナメントは、HEV Z Leather Packageがサテンブラックまたはサテンブラウンなのに対し、PHEVはこれまたダークレッドとなる。華やかさと落ち着きが同居したようなムードだ。

室内長×幅×高:1880mm×1520mm×1215mm

静かでパワフル

ハリアー乗り味はガソリン車も、HEVも、クラウンのお株を奪うくらい上質だ。ステアリングを切り込んだときの感触と、それにともなうクルマの素直な動きが気持ち良さにつながる。日常域でその良さが味わえるのがハリアーのいいところで(ハリアーに限らず、最近のトヨタ車に共通する美点である)、ショッピングモールの駐車場を移動するような微低速域でも、「いいクルマ感」が充分に味わえる。

ザラザラ感やゴツゴツ感とは無縁の、フラットな乗り味もハリアーの美点。ソフトかハードかで分類すればソフト寄りの乗り心地だが、無駄な動きはうまく抑えられているので、急に大きく揺れたり、小刻みな揺れが続いたりして不愉快に感じたり、不安にも感じたりするシーンはなく、快適に過ごすことができる。

静かで応答性の高いモーターが主役のHEVは、ガソリン車に輪を掛けて上質で、いいクルマ感のレベルが高い。そのHEVに対してさらに輪を掛けて上質なのがPHEVだ。HEVの場合、発進時はEV走行となるが、バッテリーに蓄えられる電力量とバッテリー出力の関係で、エンジンの出番はそこそこある。

大きな電力量を持つPHEVの場合はバッテリー残量が充分にある状態で走り始めた場合、(アクセルペダルを床まで踏み込むような加速は求めない)ごく日常的な走りに終始する限り、EV走行でカバーすることができる。PHEVは静粛性の高さに大きな価値を感じる向きにおすすめの選択肢だ。

ハリアーPHEVの場合は静粛性の高さに加え、応答性が高く、パワフルで、ラインアップ中もっともスポーティな走りを可能にする。ハリアーのトップグレードにふさわしい実力の持ち主だ。

トヨタ・ハリアー Z PHEV
全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm
ホイールベース:2690mm
車重:1950kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:A25A-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm
圧縮比:-
最高出力:1787ps(130kW)/6000rpm
最大トルク:219Nm/3600rpm
過給機:×
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:55ℓ
モーター:
フロント 5NM型交流同期モーター
 最高出力182ps(134kW)
 最大トルク270Nm
リヤ 4NM型交流同期モーター
 最高出力54ps(40kW)
 最大トルク121Nm
バッテリー容量:355.1V/18.1kWh

駆動方式:電気式4WD
EV走行換算距離:93km
WLTCモード燃費:20.5km/ℓ
 市街地モード18.4km/ℓ
 郊外モード21.8km/ℓ
 高速道路モード20.7km/ℓ
車両価格:620万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…