新型ジムニーに加えてジムニーシエラも注文! 自己所有の二台のジムニーで高速道路と箱根の乗り比べをレポートする!【ジムニーオーナーレポート Vol.20】

新型ジムニー「XC」5MTが発売直後に納車され、十分に楽しんだ筆者だが、「これは歴史に残るヒットモデルになる」と直感し、新型ジムニーシエラ5MTも所有してじっくりと乗ってみたくなった。そこで、ジムニーシエラも発売直後に注文。新型ジムニーから遅れること約7ヶ月後に新型ジムニーシエラ「JC」5MT も納車され、両方の5MTモデルを同時所有して乗り比べが出来ることになったのだ。
REPORT:出来利弘(TOSHIHIRO Deki)
新型ジムニー(右)は軽とは思えない存在感のあるデザインと質感。ジャングルグリーンは大人な雰囲気。新型ジムニーシエラ(左)はオーバーフェンダーによる迫力あるフォルムが印象的だ。キネティックイエローのボディカラーが鮮やかで映える。

ジムニーとジムニーシエラ、同時に乗り比べると相違点が良くわかる

新型ジムニーの魅力は各部の「オーバークオリティ感」ではないだろうか。ボディ各部の遮音が上手く、エンジンやサスペンションの突き上げが少ない。NVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)の質感向上と「プロの道具として」という言葉通り、ドライバーを信用した仕上げられたエンジン特性やギヤ比の見直しなどによって、ジムニー&ジムニーシエラが持つ走りの魅力、個性が際立っている。

新型ジムニーのタイヤは175/80R16と細め。新型ジムニーシエラ のタイヤは195/80R15と15インチではあるものの太めでワイドなオーバーフェンダーと共にトレッドも拡大されている。

オフロードのみならず、一般道でも「最近の新車は楽しくない」と思っていた筆者のようなドライバーの心に刺さったというのが、ヒットの要因ではないか。自分でも呆れるが、自動車研究家として興味の尽きない魅力を新型ジムニー&ジムニーシエラは持っていたのである。

この日は筆者が「Toshiミーティング」と題して、車種不問のオフ会を箱根ターンパイクで企画していたので、その道中で2台を乗り比べてみた。

「Toshiミーティング in ターンパイク箱根」Fエリアは続々と集まってくる様々な車種の参加車両。オフ会を開催したい一般ユーザーに2ヶ月ほど前の1日に予約受付し、Fエリアのみ貸切が可能だ。

ジムニーは100km/h巡行で4000rpm回ってしまう

新型ジムニーは、当初は街中の移動メインの軽自動車で格好いいクルマが欲しくて購入したが、本格オフローダーとしての性能を試したくて何度か林道やキャンプに出かけるうちに、高速移動の疲労度が気になるようになってきていた。

アルトワークスと同じR06A型の直列3気筒、660ccターボ(64PS、9.8kgm)エンジンをジムニー専用に低速よりの特性にチューニングされ、軽としては十分に快適で静粛性にも優れているが、やはりは100km/hで約4000rpmで、音が大きく、また四角いボディでサスペンションが柔らかいため、トンネル出口など強い風が吹いていると直進安定性が乱れて、ドキッとすることが時々ある。

新型ジムニーのジャングルグリーンは目立たないがクロカン4WDらしい雰囲気がよく出ている。

一方、新型ジムニーシエラは街中の狭い道ではワイドトレッドのため、ジムニーより僅かに大きくは感じられるが、ミラーtoミラーは同じで、それほどサイズ感に違いはない。高速ではK15B型の直列4気筒、自然吸気1500cc(102PS、13.3kgm)のトルクを活かして、ファイナルギアがハイギヤードに設定されている。

新型ジムニーシエラのキネティックイエローはとにかく目立つ。ミーティング会場では入口に停めて目印になってもらった。

100km/h巡行で約3000rpm前後と最近の1500ccクラスとしてはローギヤードで回転数が高めなものの、ジムニーよりははるかにエンジン回転、振動共に少なく、静かで快適だ。強風、横風などに対しても気になるほど大きく姿勢を乱したりはしないので嫌な緊張感を持つことなく、安心してドライブできる。オートクルーズを併用すればさらに快適だ。

新型ジムニーと2代目ジムニーベースでMINIのボディをドッキングした改造車「ジミニー」もミーティングに参加。

軽自動車の場合、高い回転数をキープするのにアクセルを深く踏み続けていることが意外に疲れるのだが、ジムニーはクルーズコントロールがあるため、その疲労が軽減されるのは素晴らしい。軽なら高速料金がかなり割引となる路線も多いのでそれもありがたい。そんなメリットは十分に理解した上でも「高速に乗って郊外のオフロードを走りに行く」という場合、ジムニーシエラの高速巡航での快適性はかなり高い。

ジミニー、アルト、フェスティバと並ぶ。新型ジムニーの存在感の大きさがわかる。

トルクの余裕の差は歴然としている。欲を言えば将来、「ACC(アダプティブクルーズコントロール)が欲しい!」と考えた際に軽のジムニーでは追従するために減速、加速を繰り返すのがかなり大変になりそうだが、ジムニーシエラなら難なくこなすだろう。

新型ジムニーオーナーが「ジムニーシエラ」に試乗してみると? 【ジムニーオーナーレポート Vol.19】

キャビンは同一。エンジンが660ccから1500ccに代わり、ワイドトレッド&オーバーフェンダー付きとなるのが、ジムニーとジムニーシエラの大きな違いだ。軽ジムニーオーナーの著者にとって、小型車のジムニーシエラはどのように感じられたのだろうか! REPORT:出来利弘(TOSHIHIRO Deki)

ターンパイクの登りではシエラのトルクが頼もしい

軽自動車の新型ジムニー「XC」5MTでオフ会の会場となるターンパイク箱根のワインディングロードに入っていく。急な上り坂がずっと続く箱根で軽のジムニーはやはりかなり苦しそうだ。車両重量1030kg は軽としてはやや重めのフレーム構造、4WD車だ。4速、5速は回転が落ちてきて、エンジンに負担になりそうなので、3速で基本のぼり、かなり急坂では時々2速を使ったりしながら登っていく。

NSXの低いボンネットと新型ジムニーの大きなアプローチアングルがよくわかる。

ダイレクト感のあるエンジン、クラッチ、シフトフィールはとても気持ちよく、ブレーキのコントロール性も素晴らしいため、スポーツカー気分を味わえる。ねじり剛性が約1.5倍となったフレームと3リンク固定車軸サスペンションはコイルスプリングを採用しているが、ブッシュ類の絶妙なチューニングが上手く、一体感のある走りを実現している。しなやかな乗り心地とオンロードでのコーナリング性能は想像以上だ。ある一定のロールは許すものの狙ったラインにピタリと乗って、綺麗にコーナリングしていくので実に気持ちが良い。

新型ジムニーシエラと比較すると2代目ジムニー小さく可愛い。

転倒しそうな雰囲気などはない。ただし、リサーキュレーティングボール&ナットのステアリングのダルさ、タイムラグは慣れが必要だし、175/80R16タイヤは80偏平かつ175と細めで、過信して限界を攻めすぎるとグニャッとタイヤが倒れ込んで、最後は強めのアンダーステアを出して大きく外に膨らむので特に下り勾配は注意が必要だ。5速マニュアルで運転を練習するのに最適な1台だ。「大人の男が、こんなに格好良く乗れる軽自動車は他にない!」と今でも思っている。

新型ジムニーシエラ「JC」5MTに途中で乗り換え、さらに箱根ターンパイクを登っていく。エンジンは余裕があり、5速のままでは厳しいが4速で登っていける。急坂では3速にシフトダウンすればかなり元気な走りでワインディングを楽しめた。普通に流して走る分には2速まで落とさなくても走れる。

新型ジムニーシエラのK15B型エンジンは直列4気筒、自然吸気1500cc(102PS、13.3kgm)。低中速トルクを重視した設定で決してパワフルではないが、DOHCエンジンらしく、レスポンスに優れ、音、フィーリング共にとても気持ちが良い。直噴に近いがポート噴射なのも長く乗るには嬉しい。

コーナリングはジムニーと同様の印象で大きなオーバーフェンダーとワイドトレッド化の恩恵で更に安定していて、グリップ感もあり、とてもバランスが良い。2Hで走行する際はエンジン縦置きのFR車だが、1500ccのエンジン、4WDシステムを持つ割に車両重量1070kgと軽量な車体で前後重量配分は前:590kg(55%)、後:480kg(45%)と50:50に近い理想的な数値を実現している。

ややウエットな路面においてはスポーツカー顔負けではないかと思えるほどの安心感と手応えがあった。195/80R15タイヤは80偏平タイヤでも195と幅があり、ジムニーと比較すれば頼り甲斐があってしっかりグリップする。グニャグニャした感触ではなかった。

筆者が撮った45年以上前のスナップ写真。

それにしてもこのエンジンの音、レスポンス、なかなかのものである。スペック的には大したことはないが五感を刺激する良いサウンドと中回転域のトルクの盛り上がり方は実に気持ちいい。ついつい夢中になって走ってしまうので、スポーツカーと勘違いしてしまいそうだ。吹け上がりもそうだが、回転落ちも良いので面白い様にヒール&トゥが決まる。アップテンポなリズムは実に気持ちよく、最後に新車で購入できる純粋なガソリンエンジン車として、運転が好きな方に是非、お勧めしたい。

しばらくの間、2台を乗り比べて研究して結局、新型ジムニーシエラを残し、1年1万km乗った新型ジムニーを手放した。なんと信じらえないことに新車時の購入価格とほぼ同じ金額で購入を熱望していた友人に譲ることとなった。1年経過しても納期1年待ち以上という異常な状況のため、買取店で査定しても200万円以上の金額がつくプレミア状況だったため、200万円で売るのは恐縮であったが、それでも喜ばれた。そして、この後も1年待ち近い状況が4年も続き、リセールバリューはずっと高いままというのは本当に驚きだ。こんな状況、過去にもほとんどないのではないか。

「いつかはグリーンのジムニーに乗りたい!」と思って街で見かけては写真を撮っていた。まさかそっくりの新型ジムニーが発売されるとは思ってもみなかった。

新型ジムニーはアルトワークス譲りのDOHCターボらしく、元気一杯の若い走り、新型ジムニーシエラは4気筒らしい余裕のある大らかな走りとNAならではのレスポンス 、どちらもとても魅力的で今でもどちらを所有しようか、迷う。一長一短でそれぞれ良いところがあるが、ここから先、新型ジムニーシエラに乗ってみたいと思ったのは、サイズ感にそれほど違いを感じなかったことと、「もっと遠くへ出かけて、いろんなオフロードを走ってみたい」と考えた時にそこまでの移動が楽にできるからというのがその理由だ。

もちろん、まだ十分に乗っていないから、という理由もある。決して新型ジムニーに飽きてしまったわけではない。もっと若くて体力もあれば軽の新型ジムニーで休み休み、車中泊で何年も所有して遊びに出かけていたのではないだろうか。ということで長く続いた新型ジムニー連載レポートはひとまず今回で終了。新型ジムニーシエラはまた機会があればレポートしていきたい。

新型ジムニーは買って本当に良かった。5速マニュアルでの運転が本当に楽しい。このクルマで「ジムニーの魅力」を知り、高速に乗って、もっと遠くのオフロードへ出かけたくなった。そうなると新型ジムニーシエラが欲しくなる・・・とても悩ましい。
「新型ジムニー今までありがとう!」と言いたい。

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著者プロフィール

出来利弘 近影

出来利弘

1969年千葉県出身だが、5歳から19歳まで大阪府で育つ。現在は神奈川県横浜市在住。自動車雑誌出版社でアル…