【カローラクロス vs ヴェゼル】サイズは? 価格は? コンパクトSUVの覇権を争う2台を比較

9月14日から発売が始まったトヨタ カローラクロスだが、コンパクトSUVのカテゴリーには一足早く市場に投入されて好調なセールスを続けているホンダ ヴェゼルがいる。果たして、カローラクロスはヴェゼルの快進撃にストップをかけられるのだろうか。カローラクロスの魅力を、ヴェゼルと比較しながら紹介しよう。

ホンダ ヴェゼルの快進撃にトヨタ カローラクロスは待ったをかけられるのか!?

トヨタ カローラクロス Zの外観
2021年9月に発売が始まったばかりのトヨタ カローラクロス。カローラシリーズとしては初めてのSUVとなる。
ホンダ ヴェゼル Zの外観
2021年4月に発売が始まり、好調なセールスが続く2代目ヴェゼル。

エクステリア:カローラクロスの方がヴェゼルより全長は160mm長い

まず、ボディサイズから比較してみよう。カローラクロスは全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mm。一方のヴェゼルは全長4330mm×全幅1790mm×全高1580〜1590mm。カローラクロスの方がヴェゼルよりもやや大きく、具体的には全長が160mm長く、全幅は35mm広く、全高も30〜40mm高い。

トヨタ カローラクロスの真横
カローラクロスのスリーサイズは全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mm、ホイールベースは2640mm。
ホンダ ヴェゼルの真横
ヴェゼルのスリーサイズは全長4330mm×全幅1790mm×全高1580〜1590mm、ホイールベースは2610mm。

ちなみにヤリスクロスは全長4180mm×全幅1765mm×全高1590mmなので、ボディサイズはヤリスクロス→ヴェゼル→カローラクロスの順に大きいことになる。

カローラクロスのエクステリアのコンセプトは「アーバン・アクティブ」。RAV4の弟分といった趣で、いかにもSUVらしい力強さを感じさせるものとなっている。

一方、ヴェゼルはリヤウインドウの傾斜が強いクーペライクなプロポーションと、サイドのラインを前後に貫いた水平基調のデザインを採用する。

フロントマスクも好対照で、カローラクロスが大型の台形アンダーグリルと独立したアッパーグリルの組み合わせで存在感を演出しているのに対して、ヴェゼルはグリルレス(ホンダ曰くインテグレーテッドグリル)で新鮮な表情を作り出している。

ちなみに、悪路走破性能を左右する要素の一つとなる最低地上高はというと、カローラクロスは全車160mm。それに対してヴェゼルは16インチタイヤ装着の4WDモデルは170mmにとどまるが、18インチタイヤ装着のFFモデルは195mmとなる。

いかにもSUVっぽい見た目のカローラクロスよりも、都会派っぽい雰囲気のヴェゼルの方が最低地上高に余裕があるのは意外だ。

インテリア:王道のカローラクロス、新しさを感じさせるヴェゼル

続いて、インテリアをチェック。ヴェゼルのインパネはエクステリアと同様の水平基調を取り入れたデザインだ。Aピラーを後ろに引くとともに、ドアからダッシュへのつながりをなめらかにすることで開けた視界を確保しているのも特徴。カローラクロスのようなAサブピラーもないので、斜め前方の視界はいかにもすっきりとしている。

また、両端のエアコン吹き出し口には、サイドウインドウに沿って風が流れるモードが設けられた「そよ風アウトレット」を採用。乗員の快適性をとことん追求したインテリアと言えそうだ。

ホンダ ヴェゼルのインパネ
ヴェゼルのインパネ。センターディスプレイ(9インチ)はe:HEV PLaYグレードのみ標準。その他のグレードはスマホの非接触充電とのセットオプションで用意される。

カローラクロスのインパネは、ヴェゼルと比べるとオーソドックス。センターディスプレイをダッシュ中央にレイアウトするあたりはヴェゼルと同様、最近のニューモデルの王道で、そのほかにも奇をてらったデザインは見当たらない。内装色も、ヴェゼルがブラックのほかに明るいグレージュ系のカラーを用意しているのに対して、カローラクロスはブラックのみとなっている。

トヨタ カローラクロスのインパネ
カローラクロスのインパネ。センターディスプレイは7インチが標準で、上級グレードには9インチ(写真)がオプション(2万8600円)で用意される。

ラゲッジルームは、どちらもかなりの容量を誇る。カローラクロスは487L、ヴェゼルは未公表だが404Lだった先代よりも荷室はやや狭くなっているという。あくまで容量のカタログ値は目安でしかないとはいえ、ボディサイズが大きくリヤウインドウも立ち気味のカローラクロスの方が、荷室の広さは上回っている。

とはいえ、ヴェゼルも実際の使い勝手は悪くない。後席背もたれを前倒しすると床面とほぼフラットに荷室を拡大することが可能。また、後席座面を跳ね上げて、前席の後ろに背の高い荷物を積むこともできる。それもこれも、ヴェゼルが燃料を前席下に配置するセンタータンクレイアウトを採用しているおかげである。

ホンダ ヴェゼルの荷室
ヴェゼルの荷室。後席の背もたれを倒すと、ほぼフラットに荷室を拡大できる。

一方、カローラクロスは、後席背もたれを前倒しすると荷室の床面と大きな段差ができてしまう。それが気になるならば、ディーラーオプションのラゲージアクティブボックスを装着すればOKだ。

トヨタ カローラクロスの荷室
カローラクロスの荷室。容量はヴェゼルを上回る。後席背もたれを倒したときの段差は大きい。
トヨタ カローラクロスのラゲージボード
ディーラーオプションで用意されるラゲージアクティブボックス(2万8050円)を用いると、段差を解消できる。

パワートレーン:低燃費性能でヴェゼルを上回るカローラクロス

続いて、パワートレーンを比べてみよう。カローラクロスは、1.8L直4ガソリンエンジン(2ZR-FAE)と1.8L直4ハイブリッド(2ZR-FXE+モーター)を搭載。ハイブリッドはWLTCモード26.2km/Lとさすがの低燃費性能を誇る。

【カローラクロスの1.8L直4ガソリン】
エンジン最高出力 103kW(140ps)/6200rpm
エンジン最大トルク 170Nm/3900rpm
WLTCモード燃費 14.4km/L(FF)

【カローラクロスの1.8L直4ガソリン+ハイブリッド】
エンジン最高出力 72kW(98ps)/5200rpm
エンジン最大トルク 142Nm/3600rpm
モーター最高出力 53kW(72ps)
モーター最大トルク 163Nm
WLTCモード燃費 26.2km/L(FF)

【ヴェゼルの1.5L直4ガソリン】
エンジン最高出力 87kW(118ps)/6600rpm
エンジン最大トルク 142Nm/4300rpm
WLTCモード燃費 17.0km/L(FFモデル)

【ヴェゼルの1.5L直4ガソリン+ハイブリッド】
エンジン最高出力 78kW(106ps)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク 127Nm/4500-5000rpm
モーター最高出力 96kW(131ps)/4000-8000rpm
モーター最大トルク 253Nm/0-3500rpm
WLTCモード燃費 24.8-25.0km/L(FFモデル)

トヨタのほかのSUVはどんなパワートレーンを積んでいるかというと、ヤリスクロスは1.5L直3ガソリン(M15A-FKS)と1.5L直3ハイブリッド(M15A-FXE)、C-HRは1.2L直4ガソリンターボ(8NR-FTS)と1.8L直4ハイブリッド(これはカローラクロスと一緒の2ZR-FXE+モーター)と、絶妙に差別化されている。さすがトヨタ、水も漏らさぬSUVラインナップである。

トヨタ カローラクロスのエンジン
カローラクロスのハイブリッドモデルは1.8L直4エンジン(2ZR-FXE)とモーターの組み合わせ。

ヴェゼルは1.5L直4ガソリンエンジン(L15Z)と1.5L直4ハイブリッド(LEC-H5+モーター)をラインナップする。

ハイブリッドは先代の1モーター式から2モーター式に刷新。96kW&253Nmとパワフルなモーター(カローラクロスは53kW&163Nm)を採用し、EV走行領域が大幅に増加した。それに伴い燃費性能も大きく改善され、WLTCモード燃費は24.8〜25.0km/Lに達する。しかし、それでもカローラクロスの26.2km/Lには及んでいないのだから、いかにトヨタのハイブリッドが低燃費性能に秀でているかがわかるというものだ。

ホンダ ヴェゼルのエンジン
ヴェゼルのハイブリッドモデルはホンダが「e:HEV」と呼ぶ2モーター式を採用する。

4WD:後輪をより大トルクで駆動できるヴェゼル

さて、両車の違いは4WDの機構にも存在する。

カローラクロスは、後輪駆動用のモーターを搭載したE-Fourを採用する。前後輪をつなぐプロペラシャフトが不要で、燃費への影響が少ないのがメリットだ。WLTCモード燃費を比較すると、26.2km/LのFFに対して、4WD(E-Four)は24.2km/Lとわずか2km/Lの低下にとどまっている。

ただ、後輪駆動用のモーター出力は5.3kW&55Nmと小さい。発進時や雪道などの低ミュー路などで効果を発揮するが、舗装路でも積極的に後輪を駆動してコーナリング時の安定性を向上させる…というような制御は行われない。また、その機構ゆえにガソリン車には4WDのラインナップがないのがやや残念なところだ。

トヨタ カローラクロスの4WD
カローラクロスの4WDは発進時や低ミュー路での走行時に効果を発揮する。

一方、ヴェゼルの4WDは後輪をプロペラシャフトでつなぐ構造。ハイブリッドだけでなくガソリン車でも4WDを選択可能だ。

E-Fourに比べると高速域でも大トルクを後輪に伝えられる特徴がある。また、カップリングには電子制御多板クラッチを用いており、前後のトルク配分の自由度が大きいというメリットを生かし、発進・加速時のみならず旋回時の安定性向上にも寄与する。

WLTCモード燃費は、4WDになるとガソリン車の場合は1.4km/L、ハイブリッドの場合は2.8〜3km/Lほどダウンする。が、この程度の差ならば、いざというときのために4WDを選んでおこうという気にもなる。

ホンダ ヴェゼルの4WD
ヴェゼルの「リアルタイムAWD」。プロペラシャフトが前後輪をつないでいるのが見える。特にハイブリッドとの組み合わせでは素早く大トルクが立ち上がるモーターの特性に合わせたチューニングが行われており、素早く最適な駆動力配分が行われる。

価格:絶妙な値付けのカローラクロス。

最後に、気になる価格はどうだろうか。

【カローラクロス(1.8L直4ガソリン)】
G”X” 199万9000円(FF)
G 224万円(FF)
S 240万円(FF)
Z 264万円(FF)

【カローラクロス(1.8L直4ガソリン+ハイブリッド)】
HYBRID G 259万円(FF)/279万9000円(4WD)
HYBRID S 275万円(FF)/295万9000円(4WD)
HYBRID Z 299万円(FF)/319万9000円(4WD)

【ヴェゼル(1.5L直4ガソリン)】
G 227万9200円(FF)/249万9200円(4WD)

【ヴェゼル(1.8L直4ガソリン+ハイブリッド)】
e:HEV X 265万8700円(FF)/287万8700円(4WD)
e:HEV Z 289万8500円(FF)/311万8500円(4WD)
e:HEV PLaY 329万8900円(FF)

こうしてカローラクロスとヴェゼルの価格を見比べると、トヨタのしたたかな戦略が浮き彫りになってくる。

カローラクロスはガソリン車で199万9000円のベーシックグレード(G”X”)が用意されているが、パーキングサポートブレーキ(前後方静止物)やバックガイドモニターが未装備だったり、キーがスマートキーではなくワイヤレスキーだったり、オーディオが4スピーカーでなく2スピーカーだったりと、装備がだいぶ簡略化されているのが気になる。

しかし、200万円を切る価格はインパクトが強い。一方のヴェゼルには、こうした思い切った低価格を設定した客寄せ的グレードは存在しない。

そして、ハイブリッド同士を見比べてみると、ベーシックグレードも中級グレードも、ヴェゼルよりもカローラクロスの方が少し低価格に設定されているのに気がつく。例えばヴェゼル(ハイブリッド)のベーシックグレードであるe:HEV Xが265万8700円(FF)/287万8700円(4WD)なのに対して、カローラクロス(ハイブリッド)のHYBRID Gは259万円(FF)/279万9000円(4WD)という具合だ。

もちろん、ヴェゼルとカローラクロスでは似たような位置づけのグレード同士でも装備は異なるので、価格だけで単純に優劣をつけられるものではない。しかし購入を検討しているユーザー予備軍に「ヴェゼルよりもカローラクロスの方がサイズは大きくて室内も荷室も広いし、その上で価格もリーズナブル」という印象を与えるには効果的な値付け。後出しジャンケンというと聞こえが悪いが、ヴェゼルを十二分に意識した価格設定がカローラクロスでは行われているのだ。

さて、もし自分がカローラクロスを購入すると想定すると、ガソリン車もハイブリッド車もSグレードが第一候補になる。その理由は、価格と装備のバランスがいいように思うから。最上級のGグレードはシートが本革とファブリックのコンビになったり(Sはファブリック)、アルミホイールが18インチサイズ(Sは17インチ)だったりするので、それらの装備が魅力的に思えるならば、24万円差のZを選ぶといいのではないだろうか。

また、Gではハンズフリーの電動テールゲートが標準だが、これはSでも7万7000円で追加することができる。ハンズフリーはともかくとして、テールゲートをスイッチ一つで開閉できるのは一度使うとやめられなくなる。

トヨタ カローラクロス Sの外観
カローラクロス HYBRID S
トヨタ カローラクロス Sの内装
カローラクロス HYBRID S

ヴェゼルにはないカローラクロスならではの装備が、ハイブリッド車にオプションで用意される非常時給電システム付きのアクセサリーコンセント(4万4000円)だ。

災害などで長時間の停電が発生した際、車両の走行機能を停止した状態で1500Wの給電を行うことができるというもの。カローラクロスが発電機になるイメージだ。消費電力が400Wだとすると、ガソリンが満タンならばFFで約4日、E-Fourで約4.5日の供給が可能となる。

自然災害の脅威にいつさらされるかわからない不安がある昨今、ぜひ選んでおきたい装備ではある。

トヨタ カローラクロスのAC100V
アクセサリーコンセント(AC100V・1500W/非常給電システム付き)

ヴェゼルの場合は、最上級のe:HEV PLaYが個人的には魅力的に映る。ツートーンカラーやパノラマルーフ、明るい色調のグレージュ内装が唯一標準となり、ヴェゼルの遊び心が一番表現されているような気がするからだ。そして、これらの装備は他グレードではオプションでも用意されない。

ホンダ ヴェゼル PLaYの外観
ヴェゼル e:HEV PLaY
ホンダ ヴェゼル PLaYの内装
ヴェゼル e:HEV PLaY

注意したいのは、e:HEV PLaYは価格は一番高いものの、最上級グレードと一概には位置づけられないこと。e:HEV Zでは標準のLEDアクティブコーナリングライトやエアコンの左右独立温度コントロールがe:HEV PLaYでは省かれているのだ。

というわけで、e:HEV PLaYの専用装備に魅力を感じないならば、e:HEV Zを選んでおくのが無難といえるだろう。また、e:HEV PLaYはFFのみというのも気をつけたいポイントだ。

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著者プロフィール

長野 達郎 近影

長野 達郎

1975年生まれ。小学生の頃、兄が購入していた『カーグラフィック』誌の影響により、クルマへの興味が芽生…