ユーノスロードスター(NA6CE)は「バイク」に最も近いクルマ。中古車選びのポイントとメンテナンス事情とは? 【NAロードスター オーナーレポート Vol.3】

世界に誇る日本のネオクラシックカーとして世界中を熱狂の渦に巻き込んだ「ユーノスロードスター」 オーナーレポート3回目は、中古車選びのポイントとメンテナンス事情をレポートする。
REPORT:出来利弘(DEKI Toshihiro)

NAは基本的に丈夫でカスタマイズを楽しめるクルマ

内外装の美しさが保たれている車両はオーナーが大切にしていた証拠だ。エンジン、シャシーなど機関部の調子も良いことが多い。

ユーノスロードスター(NA)が再び人気で、私のように昔乗っていた個体に近いものを買い直す人を含め、新しい若い人にも人気で程度の良い車両は価格が高騰する一方だ。名車がたくさん発売されたビンテージイヤーと言われる1989年前後に発売されたスポーツカーは程度が良ければ5万km以上走行していても当時の新車価格以上で取引される例も多数あり、NAロードスターも例外ではない。程度の良い個体は200万円以上のものもあるようだが、それでもメンテナンスが必要だ。

マツダが近年行なっているレストアプロジェクトやショップの行うレストア、リフレッシュ作業を見ても部品、工賃ともの着実に上がっており、かなり良い状態に仕上げるにはエンジン、シャシー、外装、内装とそれぞれに100万円ずつ掛かると思っておいた方が良い。そう言うと「新車のような状態のユーノスロードスターに乗るには400万も500万円もかかるのか!?」と思うだろう。それは確かにそうなのだが、「新車のような状態」にいきなりする必要などなく、手頃な中古車を購入し、気に入ったら少しずつ手を加えていく方がお勧めだ。

エンジンはカムカバーパッキンのオイル漏れは安価で交換できるので問題ない。シリンダーヘッド、その他からのオイル漏れは高価な修理が必要な場合がある。ラッシュアジャスターからの異音を確認する。

中古車は全域に渡ってお金をかけて完璧にしすぎるとやることがなくなり、「もういいかな」と満足して手放したくなってしまう人が多いように感じている。「いつかはエンジンをオーバーホールしたい」「今度は足回りをリフレッシュしよう」「そろそろオールペイントしようか」など目標があり、妄想するのも楽しいのだ。「手のかかる子供ほど可愛い」といった感じだろうか。

ロードスターは税金、ガソリン代などの維持費は大排気量スポーツカーに比べればあまり掛からない。そして基本的な骨格が丈夫で、あまり壊れないクルマだ。その分、たくさんドライブしたり、チューニングしてサーキットを楽しんだり、リフレッシュする方に費用を回せるため、「自分だけの理想のスポーツカー」に仕上げるには最適なクルマの一台だ。

NA中古車選びで気をつけるポイント

ユーノスロードスター(NA)の初期型はすでに30年以上経過している。いくら丈夫なクルマであっても色々と故障や傷んだ箇所も増えてきている。筆者も初期型NAノーマルをずっと探していたのだが、なかなか「これだ!」という個体には巡り会えなかった。やっと見つけて購入したNAだが、それでもエアコンやパワーウインドウなど壊れて修理している。ある程度、購入後にお金がかかることは覚悟してくべきだ。

中古車選びで気をつけているのは「大事にされていることが伝わってくるクルマ」であるかどうかだ。やはり外装、内装が汚くて放置されているようなクルマはオイル交換を怠り、エンジンオイル漏れや足回りやブレーキも錆びて固着していたり、幌のメンテナンスが悪く、雨漏りしたりと全域に渡って調子が悪い。燃料ポンプが壊れたり、バッテリー、オルタネータが壊れたり、エアコンが効かないなどなど、たとえ安くても買ってからお金が掛かる。

今、このような車両でも50万円以上で売買されているから注意が必要だ。洗車はメンテナンスの基本中の基本」である。基本を怠るクルマは敬遠したい。

リヤブレーキキャリパーが錆びて固着しているとキャリパーオーバーホール、またはキャリパー交換となり、部品価格も高騰しているため高額の費用がかかるので要注意。サスペンション周りの錆びもチェックしておきたい。

「大事にされていることが伝わってくるクルマ」に巡り会うと最初から綺麗で機関部も良好な場合がほとんどだ。ロードスターを買うときに筆者がチェックするのはボンネットやトランク、ドアなどを開けて事故の経歴を見る。事故歴があってもよほど大事故車でない限り、きちんと修理されていればNAの場合、あまり気にしない。

NAはアライメントの調整自由度が高く、多少のズレはそこで修正が効く。それでも歪みが大きい場合はサブフレームを交換すれば、直進性に問題ないし、大きな事故の場合はここが交換されているだろうから心配いらない場合がほとんどだ。下回りを見てサスペンション、サスアームやフロアが錆びていないかみる。冬場に融雪剤(凍結防止剤)が撒かれている道路を走行した後、しっかり下回り洗浄をしておらず、錆びが酷い場合はサス交換も困難な車両がたまにある。

ボディ、サブフレーム、サスアーム、フロア下に醜い錆がないかどうかはチェックしておきたい。凍結防止剤などであまりに錆びているとサスペンションの脱着などネジが回らず、メンテナンスが困難な場合もある。

そうなるとサスアーム一式とボルト類含めて交換することになるのだが、そういった場合はボディにも錆びが進行しており、高額なレストアを施す価値があるボディかどうか、見極めが難しい。ユーノスロードスター(NA)の大きな魅力は錆びにくいボディ、頑丈で安全なサブフレーム、4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションだ。ここがしっかりとしている個体を選びたい。

NA中古車選びはボディの程度次第

NAはボディさえしっかりしていれば例えばエンジン、サスペンション、幌、内装カーペットなど、手を加えて後から楽しめる。塗装が紫外線で焼けていてもいずれオールペイントする楽しみがあると言うものだ。

そうは言っても手が掛からない方が良い。エンジンをかけてチェックする際、カラカラとヘッド周りから音がしないか確認したい。しばらくエンジンをかけていないとラッシュアジャスターにエアが噛んでカチカチ、カラカラといった音が出るのだが、しばらくすると消える。それがいつまで経っても消えない場合はオイル交換を怠っていたり、激しく乗られてラッシュアジャスターとして機能せず、固着している可能性がある。エンジンの異音、マフラーからの白煙など状況からオイル消費していないかチェックしたい。ダメージが深刻だと引き取ってからすぐにエンジンオーバーホールが必要となることも考えられる。

次にクラッチの山を見極めたい。5速マニュアルの場合、NAはクラッチがストロークする真ん中あたりで繋がるが、クラッチディスクの山なくなってくるとミートポイントが上がってくる。クラッチペダルを僅かしか踏んでいない場所でクラッチが切れる状態だとそろそろ交換時期だ。試乗が可能であればお願いして駆動系からの異音を確認したい。ゴーと言う走行音がタイヤ以外でもするようならホイールハブベアリング、デフ、LSD、ドライブシャフト、プロペラシャフトなどに痛みやガタが出ているかもしれない。

デフやドライブシャフト周りも同様、フロア下に醜い錆がないかどうかはチェックしておきたい。オーバーホールする際に錆びていて、脱着できずに追加工賃が必要となる場合も多々ある。

前のオーナーが中古車で売却するには理由があり、これらの異音や消耗でこれから修理費用がかかるため、手放している可能性もある。それでも綺麗で大事にされていた形跡のある個体であれば安価に購入して手をかけていくのも良いだろう。専門ショップと共に気長に手直しして異音解決していく旧車ライフも楽しいものだ。しかし、原因究明にはかなりの根気が必要でセカンドカーとして工場に入庫している時間が長くなる。

それが苦になる人ならこれらをチェックし、問題のない、手をかけ続けてきた車両比較的車両価格が高い車両の購入をお勧めしたい。「大切にされてきたNA」は、これらの問題は解決しながら維持されてきたはずだから、異音問題は抱えていない場合が多い。それなりの価値があるのだ。

幌(ソフトトップ)の状態も確認しておきたい。NA純正のビニール幌はレストアプロジェクトで復刻されたものも完売し、すでに絶版。現在はNB用クロス幌のみ、メーカーから供給されているが、20年前は6万円だった幌クロス生地の価格は現在約19万円だ。工賃も高騰しており、同様に雨漏りに直結するウェザーストリップ類も高い。一緒に交換すればかなりの高額出費となるので、幌の状態チェックも重要だ。

ソフトトップ(幌)は純正品だけでなく、アフターパーツも価格高騰中。なるべく傷んでいない車両を購入したい。交換の際はレインレール、ウェザーストリップも同時交換したい。

エアコンチェックも忘れてはならない。NA6CEはR12、NA8CはR134ガスを使用しているが、この時代は高回転まで回しても自動で切れてくれないためエアコンコンプレッサーの故障やガス漏れが多い。エアコンの効きが悪いのもNAを手放す原因だったりするので、しっかりと冷気が出るかどうか、異音がないかどうか、チェックしておきたい。

ウインドウレギュレータのチェックも必要だ。パワーウインドウがスムーズに上下するかどうか、マニュアルウインドウのモデルであっても手回しで重くないかどうか、チェックしておきたい。渋い場合はグリスアップかレギュレータ交換が必要だ。そのまま使用しているとワイヤーが切れて、いきなり窓が落ちることがある。

基本的なボディ、下回りの錆びなどが気になるレベルでなければ、これらをチェックして異常があっても購入しても構わないと思う。しかし、購入後の予算を残しておかなければならないし、これらの不具合箇所にお金がかかるのだから、店頭価格がそれに相応しいものより高いようなら、これらをメンテナンスしてから納車してもらうか、値引き交渉しても良いだろう。逆にこれらのチェックポイントを全て問題なくクリアしていれば、完全屋内保管か、かなり手をかけ続けられていた個体である可能性が高い。そういった車両であれば、高額であっても買う価値があるだろう。

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著者プロフィール

出来利弘 近影

出来利弘

1969年千葉県出身だが、5歳から19歳まで大阪府で育つ。現在は神奈川県横浜市在住。自動車雑誌出版社でアル…