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ミシュランがGKNドライブジャパンで開催した「サステナブル試乗会」。
今回用意された試乗メニューは以下の通り。
・コースの両側にあるバンクを使った高速周回路での「快適性およびハンドリング性能」
・ウェット路面での「ハンドリング比較」
・ウェット路面を使った「ブレーキング比較」
このセッションでは、散水したワインディング路を使って『e・PRIMACY(イー・プライマシー)』のウェットハンドリング性能を確かめた。
テストカーは軽EVの日産サクラに15インチのeプライマシーを装着
試乗車は、日産の一番小さなEV「サクラ」だ。これに6月に追加されたばかりの165/55R15(サクラのオプションサイズ)のeプライマシーを履かせてコースを走らせたわけだが、その比較対象としては同サイズの『ENERGY SAVER4(エナジーセイバー フォー)』が用意された。
その差は扁平率以上……スタビリティの高さがもたらす抜群の安心感
15インチ仕様のeプライマシーで感心したのは、その安心感の高さだ。ご存じサクラはハイトワゴンのボディ形状であり、床下にバッテリーを敷いた低重心さが他の軽ハイトワゴンとは一線を画す。とはいえルーフが高いことは変わらぬ事実であり、なおかつ1070~1080kgという車重が、ウェット路面では走りに影響する。
しかし15インチのe・プライマシーだと、こうした路面でもいたって普通に走れるのだ。ブレーキを踏めばきちんとフロントに荷重が掛かり、切り込めばハンドルごしに手応えがちゃんと伝わる。サイド剛性が高いからタイヤのグリップが読みやすく、結果クルマがコントロールしやすい。
対するエナジーセイバー4も、かなり安心感があるタイヤだ。
いやむしろ、今回はウェットグリップ性能「c」を達成するタイヤとして比較対象となったのだから、それは当然だとは言えるのだが。
両者ともにウェット路面では頼もしくサクラのロールを支えるのだが、個人的な印象としてはエナジーセイバー4の方が、eプライマシーより少しだけ剛性が弱いと感じた。ただその分タイヤに荷重が掛かりきるまでの過渡特性が穏やかであり、ステア操作に対するヨーモーメントの出方や、収まり方がとても素直だ。
大きく違うのは路面に対するコンタクトフィールとロードノイズで、エナジーセイバー4の方がゴロゴロ感が高い。というよりもここは、ベーシックなエナジーセイバー4に対してeプライマシーの方が、よりプレミアムな乗り味を得ていると言った方が適切だろう。
ちなみにエナジーセイバーはミシュランのなかで最もベーシックタイヤだが、筆者はこれを「単なる一番安いタイヤ」とは考えていない。そしてこのタイヤが全てのミシュランタイヤの、基本になっているという印象を持っている。だからお互いの根っこにある操作感は同じである。
まとめるとeプライマシーは、ウェット路面でも低燃費タイヤのイメージを覆すほど高いスタビリティを発揮した。転がり抵抗性能で「AA」を取得しながらも、同時にウェット性能「c」を両立したそのラベリングは、伊達じゃなかったということになる。
また今回は、155/65R14サイズの他社製品にも試乗することができた。
その印象は65扁平ということもあるが腰砕け感がかなり強く、また操舵後にねじれが揺り戻しとして、挙動に現れる傾向が強かった。ターンインでは応答が遅れ、無理にこじれば反発するからちょっと怖いし、自ずとスピードを落としたコーナーアプローチとなってしまう。
ウェット路面では幅の広さが即グリップに効くとは言いがたい面もあるのだが、今回は15インチの165幅に軍配があがった。
ちなみに比較した他社タイヤはウェット路面で定評のある銘柄だったから、純粋にeプライマシーとエナジーセイバー4のコンパウンド性能と、排水性能が高いレベルで両立されていたと言えるだろう。
外周路とバンクで高速走行もテスト
さらにエクスペリエンスとして、この15インチと14インチを外周路で乗り比べることもできた。
ドライ路面では14インチの他社タイヤもその操縦性は極めてナチュラルであり、レーンチェンジやスラロームにおいても、良好な操舵追従性を見せた。
しかし高速バンクのアプローチに関しては、ウェットセクション同様15インチのe・プライマシーが一枚上手だった。
乗り心地と静粛性は、正直テストコースの良好なサーフェースだと厳しく精査できない。どちらも高周波はきちんとカットされており、突き上げに関しては14インチの方が若干ソフトにも思えたが、15インチでも特別悪いとは感じなかった。
走りの良さはもちろん安全性を考えて選びたいタイヤ
ただ興味深いのは、ミシュランがこのe・プライマシーをリプレイス販売はしていても、サクラはもちろん国産軽自動車には一台も、純正供給していないことだ。
その理由はずばり、メーカーとのコストが折り合わないからだろう。つまりそれだけミシュランは小径タイヤにもタイヤの安全性を確保するためのコストを標準車同様に掛けていて、そこは頑固に譲らないというわけだ。
そして筆者も、このウェット路面や高速コーナーでの安心感は、容易に見過ごせないと感じた。「自分は走りを求めないから」とか、「自分は飛ばさないので」という意見もあるとは思うが、事故というのは予期せぬときに起こるものだ。かつ日本は、沢山雨が降る。新車時の装着タイヤを即履き替えるのは非現実的だが事実として15インチは有効であり、インチアップを図る際にeプライマシー、もしくはエナジーセイバー4を検討するのは大いにありだと思えた。