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アルフィスタ以外にも響くトナーレ
アルファロメオの現行ラインアップは、セダンのジュリアとSUVのステルヴィオ、そしてコンパクトSUVのトナーレで構成されている。3モデルしかないのだ。CセグHBのジュリエッタはすでにカタログから落ちている。今回の主役、トナーレのコンセプトモデルのワールドプレミアは2019年のジュネーブモーターショーだった。その美しさで話題になった。知り合いのデザイナーが絶賛していたのを記憶している。
プロダクション仕様のトナーレが欧州でデビューしたのは2022年。国内導入が2023年1月。1.5L直4ターボ+7速DCT+48Vマイルドハイブリッドのモデルが先行し、今回のPHEVが追加されたというわけだ。
電動化を進めるという意味ではアルファロメオも例外ではなく、2024年にピュアEVモデルを投入し、最終的にはBEV100%になる計画だ。
さて、トナーレPHEVである。じつは、筆者が実物のトナーレに対面したのは今回が初めて。アルファらしい美しいエクステリアとちょうどいいサイズ(全長×全幅×全高:4530mm×1835mm×1615mm)に好感を持った。昨今のSUVは、おしなべて大きすぎる。ましてPHEVなどの電動パワートレーンを持つSUVはその傾向が顕著だ。その点、トナーレはいい。
これまでのトナーレの購入者の38%がアルファからの乗り換えだという。多くはジュリエッタから、だそうだ。ちなみに、他銘柄の輸入車からが44%、国産車からが18%だというから、アルフィスタではない層にもトナーレは響いているのだろう。その理由はやはりデザインとサイズだろう。
トナーレのプラットフォームは、FCA(ステランティスになる前の)のSmall Wideプラットフォームで、その4×4 LWB版を使う。ジープ・コマンダー、コンパスと同じ。Small Wideということであれば、フィアット500L、500X、ジープ・レネゲードと共通だ。つまり、エンジン横置き、FWDのプラットフォームだ。
トナーレPHEVは、1.3L直4SOHC直噴ターボ+6速ATをベースにフロントモーター(45ps/53Nm)とリヤモーター(128ps/250Nm)、15.5kWhのバッテリーを搭載する。
EV走行できるのは、カタログ値で72km。おそらく、普通に乗っても50km程度はEV走行できるから日常の通勤や買い物はEV走行で賄えるはず。システム最高出力は280psとなかなかパワフルである。
ステリングフィールが軽いのが気になる
ほぼフル充電の状態で乗り込んだ。インテリア、シートは、「あぁ、アルファだな」と思える設え。すべてがデザインされていてややメカメカしい。隠れアルフィスタ(かつてアルファ156をV6、ツインスパークと2台乗り継いだ経験がある)としては、座っただけでちょっとうれしくなる。
ドライブモードはアルファ得意のDNAドライブモードだ。
A:ADVANCED EFFICIENCY 電気のみで走行。最高速度は135km/h。バッテリーの充電でベルが低下した場合や、フル加速した場合は、自動でNATURALモードに切り替わる
N:NACHURAL システムをもっとも効率的な利用できるようにパワーや燃料消費を最適化したモード。これもバッテリーが残っていればEV走行する。
D:DYNAMIC エンジンとモーターを組み合わせたスポーティなドライブモード。スロットルの応答をシャープにすることでフルパワー時にギヤシフトを早めにし減速時にはトルク配分を最適化し回生量が増加する。
Nモードでスタートする。リヤモーターで走行しているEV走行時はスムーズで静か。アクセルを踏み込むとエンジンがかかるが、加速時にエンジンがかかるのは、自然でまったく不快ではない。エンジンが駆動するのは前輪で、後輪は常にモーター駆動だ。バッテリーの充電レベルが下がってエンジンがかかった場合でも、リヤモーターの駆動がゼロになることはない。逆に言えば、EV走行時もリヤモーターだけでなく、フロントモーターも駆動しているから、前後駆動力配分は変わっても、常にAWDで完全なFWDやRWDになることはないようだ。
トナーレPHEVで気になったのは、ステアリングフィールだ。驚くほど軽く手応えが希薄だ。正直に言って、街中を走っているときに、前輪がどの方向にどれほど向いているかわかりにくい。ステアリングが軽いことが扱いやすくていい、ということにはならないと思う。このステアリングフィールの希薄さが電動パワーステアリングのセッティングに由来するのか、サスペンションジオメトリーに起因するのかはわからないが、ここは要改善だと思う。
また、ステアリングホイールについたシフト操作のパドルが大きすぎて、ウィンカーの操作がしにくいのもちょっと困った。
デザインの美しさとコンパクトさ(ステルヴィオの走りは素晴らしいが、サイズが大きい。全長×全幅×全高:4690mm×1905mm×1680mm)が気に入ってトナーレを選ぶのはありだ。が、ステアリングフィールについては試乗して確かめてからオーダーすることをお勧めする。
トナーレPHEV VELOCE:740万円
トナーレ VELOCE:593万円
で、PHEV代がざっくり150万円になる。さらにいうと
ステルヴィオTI:736万円
だ。デザインとサイズが気に入って、自宅ガレージに200V普通充電を付けられる人はトナーレPHEV、200V普通充電が付けられない人はMHEVのトナーレ。サイズが気にならない人はステルヴィオも試してみるといいと思う。
筆者だったら……というと、200V充電器があるけれど、ステアリングフィールでステルヴィオを選ぶ……ところだが、サイズ的に入らないので(セダン好きでもあるので)ジュリア……という結論になる。トナーレのデザインにはとても惹かれるのですが……。
アルファロメオ・トナーレPHEV VELOCE 全長×全幅×全高:4530mm×1835mm×1615mm ホイールベース:2635mm 車重:1880kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R マクファーソンストラット式 駆動方式:AWD エンジン 形式:直列4気筒SOHC 型式:46337540 排気量:1331cc ボア×ストローク:70.0mm×86.5mm 圧縮比:10.5 最高出力:180ps(132kW)/5750rpm 最大トルク:270Nm/1850rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:42.5ℓ モーター 前:T型交流同期モーター 最高出力:45ps(33kW)/8000rpm 最大トルク:53Nm/8000rpm 後:46347218型交流同期モーター 最高出力:128ps(94kW)/5000rpm 最大トルク:250Nm/2000rpm バッテリー:リチウムイオン電池 電圧:304V バッテリー容量:15.5kWh トランスミッション:6AT 充電電力使用時走行距離プラグインレンジ:72km WLTCモード燃費:14.1km/ℓ 市街地モード 11.5km/ℓ 郊外モード 14.8km/ℓ 高速道路モード 15.0km/ℓ 車両価格:740万円