アバルト500e 電気のサソリの毒の効果は「こんなBEVだったら乗ってみたくなる」

アバルト500e Turismo Cabriolet
ひたすら効率を重視する電気自動車(BEV)に面白みはない……と思う人にぜひ乗ってみてほしいのが、イタリアのサソリ、アバルトの500eだ。伝統のサソリの毒がどんな効果をもたらすか、モータージャーナリストの瀨在仁志がテストした。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:Motor-Fan.jp

小さなボディとは思えぬ安定感と操縦性

アバルト500e。左がカブリオレで右がハッチバック(クローズドボディ)

FIAT500にサソリのエキスを注入したアバルトにも電動化の波が押し寄せた。これまでの腹に響く排気音は消え、ハードなサスと操作系はカドが丸くなり、ちょい乗りだけなら毒牙はすっかり陰を潜めた。

何よりも乗り心地が実にスッキリとしている。アバルトならではの路面をしっかりと蹴り出す接地感は、コンパクトなボディとは思えぬ力強いものにもかかわらず、即座に動きを収めてフラット感をキープ。路面の動きをシームレスに捉えることでザラつき感を解消。細かな振動を発生させないことから、屋根開きボディ仕様でも乗り心地面で不満が出ない。

もちろん本質はそこではない。

交流電力量消費率WLTCモード:158Wh/km 一充電走行距離(WLTCモード):294km

この路面を舐めるような走りから生まれるのは、安定感の高さと正確なハンドリングだ。ペースを上げていくと、時折大きな入力に対して下からズシリとくる。今までのアバルトなら、締め上げられたサスがドンと受け止め、即座に押さえ込む。これが良い意味での固さと動きのわかりやすさだが、アバルト500eでは限られたストロークの中でじっくり包み込んで、穏やかにタイヤを路面に返していく。

結果、大きな入力にもかかわらず、時間軸を持って力を分散させることで、粗さを削りとりマイルドさを生み出した。唐突な入力が抑えられていることから、ボディはシェイクしないし、路面から受ける力は均一化されて、走りに乱れが生じない。

全長×全幅×全高:3675mm×1685mm×1520mm ホイールベース:2320mm
トレッド:F1470mm/R1460mm 最小回転半径:5.1m
車両重量:1380kg 前軸軸重790kg 後軸軸重590kg

パワーをかけていっても同様で、フロントが蹴り出すときの暴れ感がないから、ステアリングフイールはしっとりと落ち着いているし、重さがあっても力で押さえ込むような苦労がない。BEV化によってパワーが穏やかに出てくるし、足元はモーターの出力特性同様にきめの細かな路面追従性を生み出したことで、小さなボディとは思えぬ安定感と操縦性を両立させている。

重量はアバルト695の1160kgに対して220kg増の1380kgとはいえ、このほとんどはバッテリー重量に違いない。小さな床面のどこにそんなスペースがあるのかわからないが、重くなってもサスの機能をさらに進化させることで、重量増は気にならない。むしろ、ロールを抑えて、上下方向の動きが小さく、しっかりと管理されたことで、無駄な動きがなく、行きたい方向に遠慮なく操作が行なえる。軽快さはそのままに高速レンジまで同様のハンドリング性能を味わえる。重量増の副産物だ。

乗車定員4名 10.25インチタッチパネルモニター(Apple CarPlay/AndroidAutoに対応)
後席も広いとはいえない。
トランクスペースはミニマムだが、使い勝手はよさそうだ。

もっともBEVモデルとしてこの重量は極めて軽量級だ。2トンを超す電動車が当たり前のようになっているなかで、ガソリン車と同等レベルに抑え込んでいるのは特筆もの。パワーフィールももっとも走りにこだわったスコーピオントラックでは中速域でジワッと盛り上がるような変化もあるし、街乗りモードのツーリスモでも回生が強く設定され、ワンペダル走行ができる。モード違いでここまで大きな差を作りこんだのもアバルトならではこだわりに違いない。

タイヤ:205/40R18
ブリヂストン・ポテンザを履く
Rトーションビーム式
Fマクファーソンストラット式

BEVワクチンによってすっかりカドが丸くなったと思われたものの、走り込むほどにその乗り味は奥深いし、楽しい。しかも、サウンドジェネレーターをオンにすれば、以前のアバルト以上のサウンドを聞くことができる。はっきり言って無音からの、人工的なサウンドはとてもうるさい。

アバルトならでは遊び心、外部音を選ぶと、かなり勇ましいエンジンがする。「エンジニアたちが約6,000時間をかけて専用開発したサウンドジェネレーターによって、ブランドの象徴である“レコードモンツァ”のエキゾーストノートを忠実に再現」したのだという。
ドライブモードは3種類。スコーピオントラック(もっともエキサイティングなパフォーマンスを発揮)/スコーピオンストリート(スポーティながら、回生ブレーキを活用したワンペダル走行が可能)/ツーリズモ(モーターの最大出力と最大トルクを抑えた効率的なワンペダル走行が可能)

こんな演出もアバルトだからできること。

BEV時代を迎えて、モーターならではスムースさや立ち上がりの良さに食傷気味だった今、しっかりと乗り味に魅力ある個性を見せてくれたことはアバルトが初めて。こんなBEVだったら乗ってみたくなる。毒牙は思わぬ所に隠されていた。

アバルト500e Turismo Cabriolet 車両本体価格:645万円
アバルト500e Turismo Cabriolet
全長×全幅×全高:3675mm×1685mm×1520mm
ホイールベース:2320mm
車重:1380kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FWD
駆動モーター
形式:46354481型交流同期モーター
定格出力:47kW
最高出力:155ps(114kW)/4000pm
最大トルク:235Nm/2000rpm
バッテリー容量:42kWh
総電圧:352V
交流電力量消費率WLTCモード:158Wh/km
一充電走行距離(WLTCモード):294km
車両本体価格:645万円

キーワードで検索する

著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…