サーキットで能力を体感したい!「ホンダ・シビック タイプR」【最新スポーツカー 車種別解説 HONDA CIVIC TYPE R 】

ことスポーツ走行におけるハイパフォーマンスを第一に構築されると日常領域の快適性は二の次になるクルマとなるのはままあること。「ホンダ・シビック タイプR」はその両立を目指し、追求を重ね、満を辞して登場した。エンジンこそ先代を踏襲したが、タービンの構造から見直しをするなど、 あらゆる角度からパワーの持続力を高めた。そしてそのどっしりとした安定感とバランスは日常領域の快適性に繋がっている。熟成の極みといえるK20型VTECターボの伸びやかさと専用に開発された多くの点を含め「タイプR」という名にふさわしいと納得できる。
REPORT:山田弘樹(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:神村 聖 

“速さ”のみを目的とせず日常領域での快適性も追求

昨年の9月に発売し、瞬く間に大ヒットモデルとなった6代目シビックタイプR。その開発テーマは先代の「Ultimate SPORT」からさらに「Ultimate SPORT2.0」へと進化し、開発陣は速さのみならず、日常領域における快適性の実現と、運転する悦び、すなわち〝ドライビングプレジャー〞をも追求した。

エクステリア

先代よりホイールベースを35㎜、トレッドを前25㎜、後20㎜拡大しながら、全高は30㎜低下。低重心なワイド&ローのスタンスを実現し、専用空力パーツも装備。リヤスポイラーのステーをアルミダイキャスト製として空気抵抗を低減させた。
K20C型2.0ℓ直列4気筒ターボエンジンは、タービンスクロールの小径化やベアリングのフリクション低減など、ターボチャージャーを刷新。吸排気系とECU制御も進化させ、出力とレスポンスをともに向上。先代と比べて最高出力は10㎰アップの330㎰、最大トルクは20Nmアップの420Nmを実現した。
イン側の歪みを抑える目的でリバースリム構造を採用した、19インチワンピースホイールを装備。タイヤもミシュランと共同開発した専用設計のパイロットスポーツ4Sを組み合わせ、グリップ性能を向上。
ハッチバックタイプのラゲッジルーム。ホイールハウス間の最小幅が約860㎜、手前側の最大幅が約1300㎜、奥行きは約900㎜に達する。6対4分割可倒式の後席を格納すると奥行きは約1810㎜まで拡大。

エンジンは、先代のK20C型直列4気筒ターボを踏襲。出力値こそ330㎰/420Nmと10㎰/20Nmの向上に過ぎないがタービンはその構造から見直し、過給レスポンスを向上。なおかつバンパーからボンネットへ抜けるエアフロー性能を向上させることで冷却性能を高め、パワーの持続力を高めた。なお、トランスミッションは6速MTのみだ。シャシーも先代シビックからのキャリーオーバーだが、サブフレームを刷新。かつフロントサスのナックル/ダンパーフォーク/ロワアームをタイプR専用として、デュアルアクシスストラットサスに磨きを掛けた。

インテリア

グローブ装着時でも滑りにくいアルカンターラ巻きとなったタイプR専用ステアリングを装備。偏光ガンメタリック塗装のインパネ加飾やアルミ製センターコンソールパネルを備えるなど、随所にスポーティな演出が施されている。
専用の10.2インチデジタルグラフィックメーターを搭載し、速度計は320㎞/hまで表示。
アルミ製のシフトノブが備わる6速MTはシフトフィールも徹底的に追求。レブマッチシステムは全段に適用される。
ペダルはステンレス製。

またZFザックス製となる可変ダンパーも踏襲し、モードに応じてその減衰力を調整することで、ハンドリング性能の向上と日常域における快適な乗り心地の両立を図っている。265/30ZR19インチへとサイズアップしたタイヤは、ミシュランPILOT SPORT 4Sが標準。よりグリップ性能を求めるユーザーにはPILOT SPORT CUP2 CONNECT が用意される。

安定感のあるボディバランス 高い追従性と俊敏性も魅力

シビックタイプRをサーキットで走らせて驚かされたのは、そのどっしりとした安定感だ。ボディ剛性が、鬼のように高いというわけではない。しかしそのステアリングを切ると、路面を捉えるタイヤのグリップ感が、ずっしりと手の平に伝わってくる。シャシーの剛性バランスが、すこぶるいいのだ。だからドライバーは安心して、アクセルを踏み込むことができる。そしてコーナーの直前で、ABSを効かせながら思い切りブレーキングする気持ちになれる。長らく現役のK20C型VTECターボは、正に熟成の極み。330㎰のエンジンパワーは強烈というより切れ味が良い感じで、バランススロットル時の追従性も上々。またコーナー立ち上がりからアクセルを踏み込んでいけば、ターボラグをほとんど感じさせることなく、伸びやかにトルクを盛り上げていく。

うれしい装備

ドライブモードは+R、INDIVIDUAL、SPORT、COMFORTから選択可能。INDIVIDUALでは各モードを個別に設定できる。
車載アプリのHonda LogRは、データログ機能や運転操作に連動した3Dモーション表示など多彩な機能を備える。
+Rモード選択時はメーターも専用表示に切り替わる。
ドライブモードの選択スイッチはシフトノブの右横に装備。

タイヤが冷えている状況ではオーバーステアな一面もあるが、基本的には安定志向のハンドリング。「+R」モードの機敏さも魅力だが、むしろスポーツモードやコンフォートモードの方が足つきが良く、クルマの動きを感じながら走りを愉しむことができると筆者は感じた。その分一般道での乗り心地は、ハッキリと固め。コンフォートモードを選べば確かにダンパーはソフトになるが、基本的にタイヤとスプリングの剛性が高いため、ふんわりとした快適性は期待できない。だがタイプRは、それでよいと筆者は思う。

Country       Japan 
Debut        2022年9月
車両本体価格      499万7300円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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