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タウンエースより短くて幅が広いボディサイズ
グローバル版キャリイの第一印象は、日本の軽トラキャリイよりも質実剛健だということ。まずスタイリングは、オーソドックスなフルキャブデザインで、角目ライトとブラックグリルによるシンプルな顔立ちだ。洒落っ気などは皆無だが、にこやかなフェイスをしている。
よりプレーンなリヤスタイルには、長方形デザインのリヤテールランプを装備。軽トラ版と似た形状だが、歴代軽トラキャリイは、バックランプは独立したシングルタイプとなるため、厳密にいえばそこも異なる。
ボディサイズは、全長4195mm×1765mm×1910mmと大きく、最大積載量も945㎏まで対応する。いわゆる小型トラックなのだが、同クラスの海外製小型トラックである「トヨタ・タウンエース」のように日本で販売することはできない。その理由は、日本の小型トラック規格の全幅1700mmを超えてしまうため。だから、4ナンバー登録もできないのだ。
メーカー | スズキ | トヨタ |
車名 | キャリイ | タウンエース |
全長 | 4195mm | 4295mm |
全幅 | 1765mm | 1675mm |
全高 | 1910mm | 1920mm |
メカニズムもインテリアもとにかくシンプル
メカニズムを見ていくと、サスペンションは、フロントがコイルスプリング&ストラット式、リヤがリーフスプリング&リジッド式のオーソドックスなもの。駆動方式はFRのみ。
エンジンは、ジムニーシエラと同じK15B型を搭載。チューニングが少し異なるようで、最高出力71kW(96.5ps)/5600rpm、最大トルク135Nm(13.76kgm)/4400rpmと馬力が少し落ちるが、その分、わずかにトルクが増している。トランスミッションは、漢の5速MTのみである。
( )内は編集部換算値
メーカー | スズキ | スズキ | トヨタ |
車名 | ジムニーシエラ | キャリイ | タウンエーストラック |
エンジン | K15B型 直列4気筒DOHC16バルブ | K15B型 直列4気筒DOHC16バルブ | 2NR-VE型 直列4気筒DOHC16バルブ |
排気量 | 1460cc | 1460cc | 1496cc |
最高出力 | 102PS/6000rpm | 96.5ps/5600rpm | 97ps/6000rpm |
最大トルク | 13.3kgm/4000rpm | 13.76kgm/4400rpm | 13.7kgm/4400rpm |
インテリアも超シンプル。左右対称に近いダッシュボードデザインを採用。小物入れは多く設けられているが、全てカバーレス。メーターパネルは、スピードメーターだけ。快適装備としては、エアコンとMP3プレーヤー付きラジオが備わる。
ドアウィドウの開閉は、懐かしの手巻き式。シートも運転席のみスライド機構が備わる。2名乗車仕様だが、インパネシフトとワイドタイプの助手席におかげで、足元も広く、快適なスペースが確保されている。
そのほかには、電動パワーステアリング、ABS、イモビライザーなどが備わっているが、裏を返せば、それくらいの装備しかないのだ。今や日本では不可欠な先進安全機能やエアバックなども非装着という徹底したシンプル化で手ごろな価格を実現しているのだ。
生産は、インドネシアの「PTスズキ インド モービル モーター」で行われ、100近い国と地域に輸出されているという。タイも、その国のひとつで、現地価格は、3万9500バーツ。日本円だと164万円くらい。ちなみに、スイフトの現地で一番安い仕様「GL」が56万7000バーツ(日本円換算で約266万円)なので、シンプルな分、価格も抑えられているようだ。
メーカー | スズキ | トヨタ |
車名 | キャリイ | タウンエーストラック |
価格 | 約164万円 (日本円換算) | 167万7000円 (「DX」2WD/5速MT) |
これぞ究極のトレイカー!
今回のモーターエキスポには、キャリイをベースとしたカスタムカーも用意された。それが「ポータブルレストルーム」だ。直訳すれば「移動式トイレ」なのだが、工事現場などで見られるトイレカーとは次元が異なる豪華な仕様なのだ。
というのも、同車はVIPやアーティスト、セレブなどの移動先でのプライベートスペースとして最適化されたもので、プライバシーと快適性を重視して作られている。
内部はゆとりある化粧台付きの部屋となっており、その奥にシャワールームとトイレを備えている。ルームエアコンで快適な環境を整えつつ、空気の入れ替えや開放感が得られるように大型窓もある。まさに移動するVIP休憩室なのだ。
キャリイの荷台ってこんなに広いと思わせる秘密は、奥側の壁が鏡張りであるため。実は、パウダーエリア/化粧台は1席のみなのだ。しかし、シャワールームとトイレルーム付きであることを考えると、バランスの良い作りだと思う。
その製作には、住宅建材を取り扱う専門会社が携わっていると知り、納得。ただ外装に、レストルームの表記とトイレを彷彿させる男女のデザインを施すのは、ちょっとストレートな表現すぎる気がするが……。これはショー向けの分かりやすいデザインということだろう。
このようなユニークな提案が行われたのは、「Carry Your Dream」というコンセプトをもとに、スズキのピックアップトラックがユーザーの夢を実現させる究極の存在でありたいという思いから。これまでにもキャリイは、運搬用とだけでなく、キャンピングカーや移動販売車のベースとしても活用されている。
キャリイはタイのスズキ車では3番目に売れている
タイの2023年1月~10月までのスズキ4輪車販売の総数は1万480台となっており、2125台を販売したキャリイは「スイフト」、乗用車エントリーとなる小型車「セレリオ」に続く第3位にランクイン。まさにタイでの販売の柱のひとつなのだ。
ぜひタイを訪れた際は、街角で頑張るビッグなキャリイを探してみてほしい。日本と形は異なるが、身近なトラックとして頑張る姿を見ることができるはずだ。