新型スイフトは先代よりもすべてが「ひとクラス上」スズキの良心が凝縮されたようなコンパクトカーだ

スズキ・スイフトHYBRID MZ
燃費は良くしたいが、スイフトの持ち味である走りは犠牲にしたくない。そのうえで、乗り心地を良くし、静粛性は高くしたい。なんとも贅沢な要求だが、背反しがちなこれらの要求を高いレベルでバランスさせたのが、新型スズキ・スイフトだ。ひと言で表現すれば、全方位でレベルアップしている。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)
全長×全幅×全高:3860mm×1695mm×1500mm ホイールベース:2450mm 車重:950kg

新型の開発にあたっては、サイズは変えず、新しい世代が関心を持つような商品にしたいと考えた。全長×全幅×全高は3860×1695×1500mm(4WDは1525mm)である。先代に対して全長は15mm長くなっているが、相変わらず4m以下だし、5ナンバー枠の全幅に収まっている。2450mmのホイールベースに変更はない。

車重は1t以下をキープしている。試乗した最上級グレードのHYBRID MZ(2WD)の車両重量は950kgだ。大きすぎず、小さすぎず、取り回しが良さそうに見える(実際に取り回しやすい)絶妙なサイズは、スイフトの美点である。

未来的なイメージのエクステリアと同様、インテリアも未来的で上質になった。質感が上がっているだけでなく、機能面でも進歩している。センターディスプレイの位置が高くなって見やすくなったし、3度傾斜していたセンタークラスターの傾きは8度になってより操作しやすくなり、ステアリング右側のスイッチ類も3度傾けて操作性を向上させている。

インテリアの質感も先代から1クラスUPしている。センターディスプレイの位置が高くなって見やすくなった

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室内長×幅×高:1905mm×1425mm×1225mm

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前席はシートヒーターを装備

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ステアリング右側のスイッチ類も3度傾けて操作性が上がった

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センタークラスターの傾きは8度になってより操作しやすくなった。

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ワイヤレス充電器

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ワイヤレス充電器は49830円のオプション

シフトレバーの前方にドリンクホルダーがふたつ並列で配置されている。並列配置は先代と同様だが、決定的に異なるのは、Lサイズのカップを並べて置けるようになったことだ(先代は干渉した)。サービスエリアやロードサイドのスターバックスで買ったグランデサイズを並べて置いても、カップ同士がぶつからない。「デジタルネイティブな方たちが友だち同士で出かけたときに置き場所に困らないように」との配慮だそう。

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フロントシート

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リヤシート

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身長183cmのドライバーが前後に座った際の後席の膝周り

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新開発3気筒エンジン+副変速機なしのCVT

エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:Z12E型 排気量:1197cc ボア×ストローク:74.0mm×92.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:82ps(60kW)/5700rpm 最大トルク:108Nm/4500rpm モーター:WA06D型直流同期モーター  最高出力2.3kW(3.1ps)/1100rpm  最大トルク60Nm/100rpm

エンジンは新開発である。リッターで表記すると1.2Lで先代と変わりはないが、4気筒が3気筒になった。正確には1242ccだった排気量が1197ccになり、45cc小さくなっている。最高出力は67kW(91ps)から60kW(82ps)、最大トルクは118Nmから108Nmとなり、どちらも落ちている。

カタログに載っているこの数値だけで判断すれば「性能は落ちた」ことになるが、あくまで全開全負荷で性能を計測した場合の話だ。低速域のトルクはむしろ「先代よりアップさせている」という。試乗した実感でも不足はない。というより、頼もしいエンジンだ。

新設計したエンジンを適用したのは、燃費のためである。4気筒から3気筒に変えたのは、効率のためだ。ボア×ストロークは74.0×92.8mmで、ストローク/ボア比は1.25である。乱暴にいえば、4気筒→3気筒化で機械損失の低減を、ストローク/ボア比を大きくしたことで冷却損失の低減を図る狙い。吸気ポートはストレート化しつつ寝かせてタンブル(縦渦)を強くし、混合気を良く混ぜて燃焼改善を図る。

EGR(排ガス再還流)は率を高めて部分負荷でのポンピングロスを低減。気筒間でばらつかないよう、トーナメント方式の分配通路を設けた。「孔径を広げたり、狭くしたり、実機をベンチで回して細かなチューニングを繰り返しました」と開発担当者は話す。言ってみれば地道な技術とチューニングの組み合わせだが、コストのかかる飛び道具に手を出さず(リーズナブルな価格で提供したいので)、ドライバビリティを損なわないよう注意しながら、徹底的に効率を追求したエンジンだ。

先代スイフトのCVTは副変速機付きだったが(ジヤトコ製)、新型は副変速機を持たないコンベンショナルなCVT(アイシン製)に置き換えた。1.9kg軽くなったのは、変速機構がなくなった分が大きい。副変速機を持たないことでレシオカバレッジ(変速比幅)の点で不利になるが、そこはエンジンとCVTの効率アップでカバーしたという。

変速時のクラッチ切り替えにともなうトルク変化やレスポンス遅れがなくなるのは制御面のメリットだ。エンジンとの適合は上手にできており、気になる点は一切なかった。低車速時に高回転まで回したときのノイズも気になるほどではない。

ほぼエンジンだけの実力で軽々と20km/L超

ボディカラーはクールイエローメタリック×ガンメタリック2トーン(5万5000円)

撮影を兼ねた試乗時間では、郊外路を燃費を意識せずに20km超走り、平均燃費は22.2km/Lだった。WLTCモード燃費は24.5km/Lである。発電兼用のオルタネーター(ISG)で減速時に回生を行なう、いわゆるマイルドハイブリッドシステムは搭載しているが、ほぼエンジンだけの実力で軽々と20km/L超の燃費を出してくれるのはありがたい。

前述したように頼もしいエンジンで、信号待ちからの発進から巡航スピードに達するのに、ストレスを感じることはなかった。それどころか、アクセルペダルをちょっと踏み増したときに反応良く力を出してグッと背中を押すように加速してくれる、その反応の良さと力強さがいい。

車内が静かなのは、徹底した遮音対策の効果だろう。ダッシュパネルの板厚を上げたり、フロアカーペットの目付を上げたり、減衰接着材を使ったり、Aピラー内にバッフル(発泡充填剤)を追加したりした効果は着実にあり、先代よりもひとクラス上の静粛性を手に入れている。

走りもひとクラス上に進化した印象。それも、持ち味である軽快さを失わずに。プラットフォームはキャリーオーバーだが、ドア開口部などに構造用接着材を採用して剛性を向上。フロントはストラット式、リヤはトーションビーム式のサスペンション形式に変わりはないが、どちらも手を入れている。

フロントサスペンションはストラット式

フロントはスタビライザー(アンチロールバー)径を拡大してロール剛性を高めた。ロールは抑える方向、かつ旋回時は外輪への荷重移動が早くなり、応答が高まる。硬くは感じなかったし、スイフト持ち前のしなやかさは失っていない。キビキビした動きに感じられるが、過敏ではない。あくまで、軽いクルマの動きにマッチした、軽やかな動きだ。

リヤサスペンションはトーションビーム式

リヤサスペンションは一新している。トーションビームの形式は変えていないが、板金部品を減らして軽量化を図るとともに、ねじりも変えている(サプライヤーを変えた)。

ダンパーの取り付け点を下げてストロークを伸ばすと同時に、バンプストッパーを新設計した。フロントも同様(2WDのみ)で、ゴム製だったものを発泡ウレタン製に変更しつつ長くした。リヤはもともとウレタン製だったが、これも長くした。フロント、リヤともに(ゴムに比べて)柔らかいウレタンを早めに当てて、突起乗り上げのような大きな入力があったときの当たりを柔らかくする狙い。

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「当たりが強い」という市場からの声に対応したもので、その声に対処したのだから当然、突き上げに対する減衰は良くなっている。上質感が増した理由のひとつだ。新型スイフトは走りの良さに磨きがかかっただけでなく、乗り心地や静粛性など、快適性の面でも磨きがかかっており、魅力が大きく増している。スズキの良心が凝縮されたようなコンパクトカーだ。

トレッド:F1480mm/R1485mm 最低地上高:120mm 最小回転半径:4.8m
スズキ・スイフトHYBRID MZ
全長×全幅×全高:3860mm×1695mm×1500mm
ホイールベース:2450mm
車重:950kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FWD
エンジン形式:直列3気筒DOHC
エンジン型式:Z12E型
排気量:1197cc
ボア×ストローク:74.0mm×92.8mm
圧縮比:13.0
最高出力:82ps(60kW)/5700rpm
最大トルク:108Nm/4500rpm
過給機:×
燃料供給:PFI(ポート噴射)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:37L
モーター:WA06D型直流同期モーター
 最高出力2.3kW(3.1ps)/1100rpm
 最大トルク60Nm/100rpm

トランスミッション:CVT

WLTCモード燃費:24.5km/L
 市街地モード20.8km/L
 郊外モード24.8km/L
 高速道路モード26.3km/L
車両価格:216万7000円(試乗車はオプション込み251万7130円 全方位モニター付きメモリーナビゲーション13万3100円など)

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…