悪路もガンガン走れるオールラウンドミニバン「三菱デリカD:5 」【最新ミニバン 車種別解説 MITSUBISHI DELICA D:5】

唯一無二の存在と誰もが認めるミニバン「三菱デリカD:5」。2.2ℓのディーゼルターボエンジンはアグレッシブなスタイリングに沿った力強さで、頼もしいキャラクターは魅力だ。LLサイズとMサイズの中間のボディサイズながら最小回転半径はMサイズミニバンとほぼ変わらない取り回しの良さもポイント。
REPORT:安藤 眞(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:大須賀あみ

希少なディーゼルターボ採用 スムーズで力強い走りも魅力

独自路線を貫き続けた結果、誰も追いつけないどころか、追いかけることさえできなくなったクルマがいくつかある。ミニバンでいえば、デリカD:5がそれだ。

エクステリア

典型的な箱型スタイルで、取り回しと空間効率の高さに寄与している。185㎜という高めの最低地上高や前後のスキッドプレートが、悪路走破性の高さを予感させる。
全幅は1.8mに迫るが、最小回転半径は5.6mに収まっていて、高めのアイポイントをはじめ、直立気味のボディやウインドウもあって取り回しもしやすい。電動スライド機構は、「M」は助手席側のみで、それ以外は両側に標準装備。最新型にスイッチしたライバルと比べると、床面やシート高が高めである一方、見晴らしの良さを享受できるメリットもある。

もとは商用1BOXとして生まれたデリカ(デリバリーカーに由来)のボディを、4WDピックアップトラック〝フォルテ〞のシャシーに架装した〝デリカスターワゴン〞が出発点(1982年)。以来、本格的な悪路も走れる唯一のミニバンとして進化を重ね、2007年にモノコックボディを採用して現代的に生まれ変わったのがデリカD:5だ。現行モデルはデビューから16年が経過しているが、19年にはフルモデルチェンジ級のビッグマイナーチェンジが行なわれており、現在でも高い競争力を維持している。

乗降性

「モノコックボディになって、悪路走破性は低下していないの?」と不安になる向きもあるかもしれないが、ダカールラリーやアジアクロスカントリーラリーのサポートカーを務めた実績があるので心配無用だ。そもそもモノコックボディといっても、デリカは各ピラー部に環状の閉断面を回した〝リブボーンフレーム〞という構造を採用している。今でこそ常識となった環状骨格構造だが、それを07年には早くも採用。19年のビッグマイナーチェンジでは、骨格結合部の形状を最適化したり、スポット溶接の打点数を増やしたり、構造用接着剤を導入したりなどの改良を実施。旧型オーナーが羨むレベルのしっかり感を獲得している。

インストルメントパネル

古さは否めないが、機能的なつくりでシフトレバーやエアコンなどの操作性は良好。オーソドックスな2眼式メーターも視認性に優れる。写真の10.1型ナビは、全車にオプション。

ボディサイズも、唯我独尊。全長と全幅はMクラスとLLクラスの中間だから、「LLクラスは取り回す自信がないけれど、Mクラスでは室内に余裕がない」というユーザーにはうってつけだ。エンジンも国産ミニバンでは希少なディーゼルターボ。コモンレール式高圧噴射システムに加え、尿素SCRとDPFを装備して、最新の排ガス規制もパスしている。最大トルクは国産ミニバン最強クラスの380Nmあり、これを8速ATでタイヤに伝達。低速トルクを活かしたスムーズな加速感と、有段ATならではの歯切れ良い変速感が味わえる。

居住性

しかもガソリン高騰時代に軽油で乗れるのは大きなメリット。音質はディーゼルらしいカラカラ音を伴うし、車内に伝わる振動騒音はガソリンエンジンより大きめとはいえ、「うるさい」というレベルではないし、キャラクターを考えると、むしろ「頼もしい」とさえ感じられる。操縦性能も玄人好み。ミニバンでもいっとき、スポーティ感を主張するモデルが見られたが、デリカD:5は一貫して自然な操縦性能を重視。操舵応答性はマイルドながら、長いサスペンションストロークを生かした粘り強いグリップ感があり、峠道でも安心して走れる。乗り心地もフラットダートの高速走行まで視野に入れているだけあって、荒れた路面でも頭がブレない。近年のミニバンは「酔いにくい乗り心地」が流行りだが、デリカD:5はそれさえ先取りしていた感がある。

うれしい装備

ベンチ、キャプテンシートともにチップアップ機構を備えている。荷室奥行きを稼げるだけでなく、1列目の後方にベビーカーなどの大きな荷物を積む際にも便利だ。
月間販売台数    1369台(23年5月~10月平均値)
現行型発表      07年01月(一部改良 20年12月)
WLTCモード燃費   12.6 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム

全グレードがトルクスプリット式4WDなので、雪道や未舗装路を走らない人の興味は引かないかもしれないが、逆にそうしたユーザーならこれ一択と言って良いクルマだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.155「2024 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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