カングーらしさを色濃く踏襲した3代目「ルノー・カングー」【最新ミニバン 車種別解説 RENAULT KANGOO】

ヨーロッパの商用ベース車で日本のミニバン市場でも高い人気が続く「ルノー・カングー」が23年に待望のフルモデルチェンジを果たした。フロントフェイスは先代よりややシャープになったが、全体的に丸みを帯びたキュートなシルエットと観音開きのリヤゲートは健在。インテリアは直線がベースとなり質感ともクラスアップ。積載性もボディ拡大によりさらに高まった。
REPORT:岡島裕二(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:平岡明純

商用車風味の日本専用仕様 視認性や積載性向上も魅力

カングーは海外では商用車の販売比率が高いが、日本市場には乗用バージョンだけが輸入されている。2002年に日本導入された初代モデルは愛嬌のあるスタイリングや商用ベースならではの積載性の良さにより人気を集め、導入以降はルノー・ジャポンの年間最多量販車種になることが多かった。09年に発売された2代目はボディサイズが拡大されたが、カングーらしいスタイリングと使い勝手の良さが踏襲されていたため、長い販売期間を通してコンスタントなセールスを記録した。そして今春、ついに約14年ぶりに3代目となる新型カングーが発売された。

エクステリア

新型となったカングーは内装だけでなくエクステリアも高級感が大幅アップ。しかし、「質素な方がいい」というユーザー向けに黒バンパー仕様も選択可能だ。
全長はコンパクトと言える範疇だが、全幅は1860㎜と「ややボリューミー」だ。特徴的なのはリヤゲートで、多くが跳ね上げ式としているのに対して観音開きを採用。実はこれも日本のカングーオーナーの好みを反映したもので、本国の乗用タイプは跳ね上げ(商用仕様のみ観音開き)だが、日本仕様は特別に乗用タイプに観音開きを組み合わせた。

新型カングーはボディサイズが先代よりも全長210㎜、全幅が30㎜拡大されたが、4490㎜の全長は日本でも扱いやすい大きさだ。フロントマスクはヘッドライトがシャープな造形になったためカングー独特の、ほのぼのとした雰囲気は少し薄れたが、丸みを帯びたボディ全体のシルエットや観音開き式のダブルバックドアを採用したフォルムにはカングーらしさが残っている。さらに日本仕様には無塗装のブラックバンパーなどを装備して、商用イメージを強く醸し出した、「クレアティフ」という専用グレードも設定された。

乗降性

インテリアは基本デザインが直線基調となり、素材の質感も大幅にアップした。歩行者対応の衝突被害減ブレーキはもちろん、車線維持機能付きのACCや電動パーキングブレーキなどが新採用され、先進安全装備も一気に現在の水準に進化した。ボディは大きくなったが、Aピラーの死角が少なくなり前方の視認性が向上したので運転はしやすくなっている。3分割式の後席はホールド性が改善され、座り心地が良くなった。荷室もボディ拡大の恩恵により、奥行きが約10㎝拡大され、自慢の積載性の良さが、さらに高められた。

インストルメントパネル

ずいぶんと立派になったなあ……というのが素直な印象。新型はクロームメッキ処理された飾りをつけるなど質感が大きくアップし、8インチのディスプレイオーディオも標準装備される。

エンジンはメルセデス・ベンツと共同開発の1.3ℓ直4ターボと先代後期にも設定されていた1.5ℓディーゼルで、ともに7速DCTを組み合わせている。この2タイプのエンジンを乗り比べると実に甲乙つけがたい。経済性を考えるとディーゼルが有利だし、音や振動も上手く抑えられているから、ディーゼルの方が売れるだろう。だが、ガソリンも低速域からトルクがあり、ディーゼルに負けない柔軟性がある。なによりパワートレインが軽いぶん、ハンドリングの追従性が良く、ディーゼルよりもキビキビと曲がってくれる。

居住性

プラットフォームは日産のエクストレイルや三菱アウトランダーにも使われている新タイプに刷新された。ステアリングギヤ比がクイックになり、併せてボディ剛性が強化されたことで、操舵に対する車体のブレや応答遅れがなくなり、ハンドリングも随分とシャープになった。乗り心地は少し引き締まり、コーナーでは車体のロールが抑えられ、旋回時の安定性が大幅に向上した。

うれしい装備

ラゲッジルームにはトノボードを標準装備。低い位置に取り付けて荷室を上下に分割する機能はなくなったが、荷物を出し入れする際は後方を跳ね上げられる小技が光る。
月間販売台数    NO DATA
現行型発表     23年2月
WLTCモード燃費   17.3 ㎞/ℓ ※ディーゼル車

ラゲッジルーム

相変わらずスライドドアに電動開閉機能が付かなかったり、ライバルに設定された3列シート仕様がないといった弱点もあるが、前席に座って運転している限りは商用車ベースを感じさせない、上質な走りと質感を手に入れている。価格もだいぶ上昇してしまったが、カングーが好きなら一度乗る価値のあるモデルだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.155「2024 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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