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ポルシェのお膝元・シュトゥットガルト
世界中のクルマ好きがもっとも憧れるドイツ車といっても過言ではないポルシェ。その本拠地は、ドイツ南西部に位置するバーデンヴュルテンベルク州の州都であるシュトゥットガルト。本社や工場などのポルシェ関連施設が立ち並ぶエリアにあるファンの聖地となっているのが、公式博物館「ポルシェミュージアム」だ。
ミュージアムを尋ねて度肝を抜かれるのが、目前にあるロータリーに設置されたモニュメントだ。「インスピレーション911」と名付けられた作品は、巨大な三つの柱で構成されているが、なんと先端には、本物のポルシェが飾られている。その名が示すように、全て911であり、1970年のFシリーズ、1981年のGシリーズ、そして、設置時の最新型となる2015年の991の3台が出迎えてくれるという演出なのだ。
ポルシェミュージアムの広大なエントランスには、ずらりと最新ポルシェが並ぶ。こちらは展示車ではなく、なんとレンタカー。ドイツを尋ねた記念にポルシェをドライブなんて、夢も叶えてくれる。価格こそ安くはないが、最高の旅の記念になるだろう。因みに、日本でも公式レンタカーサービスである「ポルシェドライブレンタル」が展開中だ。
入館料は大人12ユーロなので、日本円で2000円ほど。展示内容を鑑みればお得だと思う。建物には地下駐車場が完備されており、クルマでの来場も可能。駐車代もミュージアム利用者には、最大6時間までは4ユーロ(約660円)という割引料金が設定されている。
充実した施設と展示が魅力のミュージアム館内
館内は上層階が高めのユニークな3階建て構造となっており、その2階と3階のフロアが展示スペースとなっている。施設内にはミュージアムショップやカフェエリア、レストラン、ワークショップなども併設。展示エリア内にも休憩スペースがあるので、1日ゆっくりと観覧するのも有りだ。
ポルシェミュージアムの特徴は、車両中心の展示であること。市販車だけでなく、試作車やレーシングカーなども多く並ぶ。まさに何処を見ても、「ポルシェ、ポルシェ、ポルシェ」なのだ。
その展示をより楽しむためのお助けアイテムが、携帯型の「音声ガイド」。展示プレートは、英語とドイツ語の二カ国語なのだが、そのプレートにある三桁の数字を音声ガイドに入力すると、八カ国語での音声や文字、動画による解説や資料を提供。もちろん、日本語にも対応している。嬉しいことに無料で貸し出しをしてくれる。
展示エリアで、見学者を最初に出迎えてくれる展示車は、なんと電気自動車。もちろん、最新型EVの「タイカン」ではなく、今から126年も前の1896年に誕生したEVである「エッガー・ローナーC2フェートン」だ。同車は、創業者であるフェルディナンド・ポルシェ(F・ポルシェ)が最初に携わったEVといわれる。さらに1900年のパリ万博博覧会には、ポルシェが設計した「ローナー・ポルシェ」が出展され、高い評価を受けた。
ポルシェのクルマ作りの原点が、EVというのは意外。しかし、その背景には、F・ポルシェが幼い頃から電気に興味を持ち、学んでいたことがあるのだ。当時は、静かで乗り心地の優れることで注目された電気自動車だったが、充電時間や航続距離などの課題により、劇的な進化を遂げるエンジン車に主力の座を奪われる結果となった。今の電動化シフトを進めるポルシェを見て、F・ポルシェは何を思うのだろうか。そんな空想も掻き立てられる瞬間だった。
気になる展示車両をチェック!
スポーツカーブランド「ポルシェ」誕生前夜から始まる展示だが、メインは誰もが知るポルシェのスタイルを構築した「356」から「911」への系譜を知る実車展示が中心。流麗なポルシェたちに彩られた空間となっているので、誰でも楽しめる。
もちろん、マニア心を揺さぶる展示も充実しており、プロトタイプやパトカーまで含まれる。さらに公式博物館ならではといえるのが、ポルシェ一族が愛用した特別仕様車も飾られていること。まさにここでしか会えないクルマたちに溢れているのだ。そんなクルマたちを少し紹介しよう。
■1969年 ポルシェ914S
手頃なミッドシップスポーツとして開発された914に、レーシングエンジンのV型8気筒エンジンを搭載した特別仕様車。開発責任者のフェルディナント・ピエヒの為に作られた1台。300psの高出力エンジンを活かすべく、サスペンションを始め、各部にチューニングが施されていた。
■1974年 ポルシェ911ターボ(生産第一号車)
高性能化を比較的に高めるきっかけとなったターボエンジンを搭載した初のポルシェ市販車の生産第1号車は、F・ポルシェの長女、ルイーゼ・ピエヒの70歳の誕生日に送られたもの。ボディは、なんとナローボディで、内装がタータンチェック柄となるのも特別仕様だった。
■1966年 ポルシェ356C カブリオレ ポリツァイ
高速取り締まりに使われていたパトカー。運転する警察官は、ポルシェにてドライビングトレーニングを受講する必要があったそう。
■1993年 ポルシェ・ボクスター ストゥディエ
新たなエントリーポルシェとしてデトロイトショーで提案されたコンセプトモデル。そのデザインには、356ナンバー1ロードスターと550スパイダーの要素が取り入れていた。そして、1996年にボクスターとして正式デビューを果たす。
■1960年 ポルシェディーゼルスーパーL 318
これぞ、本場の”農道のポルシェ”。ポルシェディーゼルエンジン製造会社が手掛けたトラクター。同社は、1965年に創業されたが、わずか8年で廃業に。それでも12万台以上を製造販売したといわれる。その流麗なスタイルは、農機具の芸術品といっても過言ではない。
これらは、珍しい展示車のほんの一部に過ぎない。私も気が付けば、4時間以上も休みなくクルマを見続けていたことに気が付いたほど。それだけの展示車が揃っているのだ。また体験型の展示は少なめだが、新旧のポルシェ社のエンジンサウンドが楽しめるブースも有り、メーターとキー、アクセルは、実車のものが使われているので、疑似ポルシェドライブを味わえる。また来館時は、FRポルシェに関する企画展も行われており、近年、その価値が評価されだしている924や928、968といったモデルたちに出会うことも出来た。
駅近でアクセスも良好!クルマ好きならぜひ訪れたい
ミュージアムショップも充実しており、ウィンドショッピングだけでも楽しめるが、ミニカーには手頃な価格帯のものもあるので、小さな自分だけのポルシェを手に入れるのもあり。私は、ポルシェユーザーにはお馴染みのポルシェエンブレム付きのキーホルダーを購入。いつか、使う日が来ればよいのだが……。
駅が近くにあり、アクセスも良好だけに、シュツットガルト近郊に訪れた際は、ぜひ足を運んでみて欲しい。きっと良い思い出になるはずだ。