ドアミラー電動開閉不良修理日記 4/4最終回・車体組付&メーカーへの要望編【いまさら!スズキ・ジムニーシエラ JB43W・第18回】

ドアミラー修理記事の第4回にして最終回。
部屋でギヤ交換し、ミラー本体を元の形に戻したらあとはクルマに組み付けるだけだ。

TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)

その前に・・・

ようやく完成の至り。

1.車体からのミラー本体外し
2.分解してギヤ交換
3.組み立てて車体取り付け

ドアミラー開閉不良の修理作業、上記の3つに作業を分け、前回は「2.分解して・・・」を行なってきたが、今回はいよいよ最後の仕上げ「3.組み立てて車体取り付け」に入る。

といっておきながら、「組み立て」まで前回「2.」でやってしまったことにいま気づいたが・・・

3.車体取り付け

まず内部でギヤがきちんとかみ合っているかどうか、この段階で試す。

作業完了が完了したといってもミラー内部のギヤ部品を交換しただけのことであって、きちんと動くかどうかは未知数だ。
ドアに組み付ける前に、きちんと開閉するかどうか確認しておこう。
コネクターだけ接続し、キーをACC(アクセサリー)にして計器盤上のシーソースイッチの格納側をONにすると・・・

コネクターを接続し・・・
キースイッチをACCにする。
格納スイッチを押して・・・

おー。きちんと動いた!

先回、ギヤ一式を筐体所定部にセットしたとき、「・・・差し込んだ後もギヤ同士ががっちり組み合されるわけではなく、少々ガタがあり、きちんと作動するかどうか不安・・・」と書いたが、正常に動いたということは内部ではきちんとかみ合っているようだ。

このガタのせいできちんと動かず、お試し作動の段階でやりなおしになるかと思っていたのだが、その心配は杞憂に終わったというか、拍子抜けしたというか・・・

とにかくうまくいったようなのでOKと判断し、ドアへの組付作業に移行した。

昨夜ふさいでおいたドア側取り付け穴のテープをはがす。穴のまわりがまあ汚れていたこと。

養生テープをはがす。
こんなに汚れていたとは・・・

先回、ミラー本体のほこりをそのままにして取り付けるのはかわいそうだと書いたが、それはこの部分も同じだ。

パーツクリーナーできっちり拭き取ってきれいにしておこう。

パーツクリーナーを吹き付けたウエスでふきふき・・・
ふきふき・・・
多少跡が残っているが、まあこの辺でいいだろう。

それにしても、部品を外せばその裏には汚れがたまっているもので、日ごろいくらていねいに洗車をしてもそれは「つもり」に過ぎないことがわかる。外せるものは片っぱしからものは外し、接触面まで清掃するのが本当なのかも知れない。日常的にそこまで行う必要はないと思うが、数年に1度の頻度でやってもいいだろう。

窓枠下のカバー付近は汚れている。ふだんの洗車ではやはり落としきれないのだ。
そうそう、本体側の三角ベース部もきちんときれいにしておこう。考えてみたらこれはドアとの接触部だけにパッキンでなければならず、この部品はゴム製だった。この段階で気づいたのはうかつだった。

余談ともかく、外すときと同様、ドアガラスは下げ、自分はドア外側に立ち、本体を三角ベース部にあてがって内側からボルト締め。

本体のドア取り付けに入る。試すために接続したコネクターを外し、ドア外にまわる。
コネクターを通し、3本ボルトも通す。
3本のナットを締め・・・
コネクタを
接続!
このようになった。
完成は近い。

次に運転席に座ってコネクターを接続したらここでまた作動確認しておく。

慎重に行ないたいミラーのはめ込み

きちんと動くことが確認出来たらカバーとミラーの取り付けだ。

こちらも外すときと同じように、本体が車体に固定された状態で行うべし。取り付け順序は外すときの逆になる。すなわち車体色カバーを先に取り付け、しかる後にミラーはめ込みだ。外すときにちょっと苦労したカバーの取り付けは、車両前側からはめ込むだけなのでものの数秒で終わる。

先にカバーを取り付ける。きれいにしたので限りなく新車時に近くなった。

ちょっと苦労したのはミラーのはめ込みだ。前に載せた写真をもういちどお見せしよう。

もういちど前々回の絵でおさらい。

それぞれ正立位置にした3つのオスに対し、ミラー側のメスを正面からはめ込むわけだが、よほどていねいにあてがわないとピボットがすぐに動いてしまう。「パコッ」というはまり音がしてもどれかがはまっていないことがあり、そのときはまた外してやりなおさなければならない。はめるとき、ミラー裏は当然見えないだけに、ここは手探りと勘に頼るしかない。

狙いを定めて・・・
はまった! といっても、うまくはまるまで、実は2~3回繰り返している。

はめた後にミラーを手で上下左右に動かし、ガリガリ音がすれば3つのピボットにきちんと差し込まれた証拠だ。このガリガリ音は上下左右調整モーターからの音だ。

そうそう、ミラーをはめる前に、くもり取り熱線の配線接続をお忘れなく。

先にくもり取り熱線用の配線接続を忘れずに。

ドア内側に再度まわり、コネクターを四角穴に押し込み、三角トリムをはめたらドアミラー開閉不良修理プロジェクトは完全に終了。

この時点で遊んでいるコネクターを・・・
四角穴に入れ込む。完全に入り込んでいないこの状態が正しい。
最後の動作確認をしたら三角ベースをはめ、完全終了!

というわけで、完全に修理が終わった後の動画がこちらだ。

動画に入れなかったが、電動開閉のほか、スイッチ操作できちんと鏡面が上下左右に動くか、ミラーヒーター付車なら、スイッチ押しでシートが暖まるかどうかも確認しておこう。
今回の作業ではこれらもきちんと作動することが確認でき、何とかホッとしたものである。

ところで、左ミラーの予防整備を考え、樹脂ギヤは2個セットのものを購入したが、結局左ミラーのギヤ交換は見合わせた。
考えてみたら、左ミラーは異音を発しているわけでもなければ動きにおかしな点があるわけでもない。正常に動いているものをわざわざ分解して部品交換することもなかろうと気変わりした。
いざ開閉不良になったときに直せばいいだけのことだ。

なお、これは最初に掲げるべきだったが、今回の修理作業に使った工具をご紹介しておく。
必要なもの、あれば便利なものとを色分けしておいたので参考にしてください。

今回の作業に使ったツールを示しておく。ピンセットがない方は、おじいちゃんの鼻毛抜きで代用しても別にかまわない。

スズキへの要望

ここからは、スズキ車のひとりのユーザーとしての要望、いや、苦言となる。
長い文章になるが、「読んでいられない」という方は、どうぞ本「モーターファン jp」の他記事を見るなり、「レスポンス」なり「Web CG」に飛ぶなりしてください。

今回のドアミラー修理記事の第1回(第15回)を公開したとき、Yahooニュースにも掲載されたが、

「スズキ車のドアミラーについて新車登録から10年間の保証期間延長が車種指定でメーカー公式HPにて発表されています。JB43Wは含まれていませんがエブリイDA64VとソリオMA15Sがともに8年目くらいで症状が出て無償修理になりました。スズキによると樹脂ギヤの破損とのことですが対象外車種でもディーラーに相談したら良いかもしれません。」

とコメント欄に書いてくださった読者の方がいた。

この方はスズキサイトにあるリコール情報の中の「保証期間延長」ページ、2016年9月8日付「ワゴンR、エブリイ、ジムニー、パレット、スペーシア、MRワゴン、 アルト、アルト ラパン、ソリオ、スイフト、SX4 アウトリヤビューミラーの保証期間延長について」のことをいったのだと思う。

こんなことを書いてくる人が出てくるとは思わなかったが、わざわざご親切にありがとう。

実はこのことは知っており、というよりもクルマを買う前からわかっていたことなのでありました。

内容は、
「電動格納機能付きアウトリヤビューミラーにおいて、電動格納機能によるカバー部の開閉作動を繰り返すと、内部の樹脂ギヤが破損してモーター動力が伝達できなくなり、カバー部の開閉操作を電動で行えなくなる場合があります。なお、カバー部が閉じた状態で上記不具合になった場合、保証修理されるまではカバー部を手動で開いてご使用願います。 つきましては、アウトリヤビューミラーの保証期間を延長させていただきます。」

というものだ。

保証期間延長は次のとおり。

【従来の保証期間】 新車を登録した日から 3年間ただし走行距離6万kmまで
                        
【変更後の保証期間】 新車を登録した日から 10年間ただし走行距離10万kmまで

表題には対象車種ががゾロッと並んでいるが、ジムニー関連だけ抜粋すると、

★軽ジムニー(JB23W)
対象型式と車台番号 : JB23W-652973~JB23W-713388
生産期間 : 2010(平成22)年11月9日~2014(平成26)年7月4日

★ジムニーシエラ(JB43W)
対象型式と車台番号 : JB43W-450212~JB43W-562353
生産期間 : 2010(平成22)年10月15日~2014(平成26)年7月3日

となっている。

私の車両は2018(平成30)年2月登録の旧ジムニーシエラJB43Wで、車台番号は58000番台なので該当しない。

ミラー故障編の第1回で「すぐさま販社に連絡した」と書いたが、このときとぼけて保証されるかどうか問い合わせている。想像どおり「保証対象外」とのことだっだ。「その後のクルマが不具合を起こしているのに、スズキにかけあってもだめなのか」とたずねたが、他のユーザー事例からして対応してくれないらしい。

不満な点が3つ。

ひとつめ。
2016年9月に該当車種の保証延長を決めたなら、同時にスズキはその後の生産車両に対しても樹脂ギヤの強度を上げるなど、何らかの対策をしているはずである。だから自分のクルマも対策品が織り込まれ、どこかで覚悟はしながらも、開閉不良にはなるまいと思っていた。もし対策していなかったのならそれはそれで問題だ。

ふたつめは、その対策車でも同じ症状が全国のスズキ車で起きているのに、これらに対して当のメーカーが保証延長もせず、販社がメーカーにかけあっても対応しようとしないこと。

3つめ。
破損した小さな構成部品が単体で販社に注文できず、ミラー本体ごと交換になって総費用が高くつくこと。

ネット時代で有用な情報があふれ、通信販売が豊富なこともあり(信頼性の有無はともかく)、今回は不器用な私でも何とか自前で修理を完遂することができた。
しかし自動車ユーザーのみんながみんな、私の様なわけにはいかないだろう。今回は片側修理なので部品代は1740円だけで済んだが、もしあきらめてディーラー修理を依頼したら、部品代&工賃込みで危うく1万4425円もの出費になるところだった。

さきの保証延長のページを見るがいい。不具合個所が図示されている。たったこれっぽっちの部品ひとつ割れただけで、まだ使えるモーターや配線、基板を含めて本体まるごと総取っ替えしなければならないままにしているのはあまりに不誠実だと思う。ついでにいうと材料だって無駄になる。

メーカーだって人間の集まりだからその人間が造った製品が完璧だとは思わないし、ときに自然発生的故障や不具合を起こすのは仕方ないと思う。ただ、これだけ頻発しているのに保証延長もディーラーからの要請対応もせず、ユーザーやディーラーに実費で作業させるなら、総費用を安くするためにも、この件に限っては、せめて樹脂ギヤだけ単体で入手できるようにする、例えば樹脂ギヤメーカーから販社なり自宅なりに直送するルートを作るぐらいの配慮をしてもいいのではないだろうか。ディーラー修理なら整備士作業が複雑になるので工賃は上がるだろうが総費用は下がるだろう。少なくともDIY派には工賃がタダになる。

保安基準でいうところの「後写鏡」は重要保安部品であっても「電動開閉機能」は重要保安項目ではなく、そもそも昔はなかったし(余談だが、ドアミラーの電動開閉機能を市販化したのは1984年の日産ローレル(5代めC32型)で、世界初だった)、なければないでこんなもん手で開閉すればいいだけの話だが、壊れても重要なとこじゃなければ後は知らないョとい(っているようにしか見えない)うのはよくない。

C32型5代めローレルに世界初で搭載された、カタログ名「電動格納式カラードドアミラー」(1984年)。
上級機種に標準または工場オプションで載せられた。
ついでにいうと、自動で反射率を変えるルームミラーもC32ローレルが果たした世界初だった(オート・リフレックス・ルームミラー)。
C32ローレル(1984年)。

このようなとき、短気なユーザーならクルマを買ったディーラーを責め立てる。客にしてみればクルマを買うときの窓口は販社だから苦情をいいたくなるのは心理だし、逆に販社にとっては客からの苦情を受けるのも業務のうちなのだが(クレームとハラスメントは別ものなので、そのへん、顧客は分別つけるように)、自分たちが造った製品でもないからお店は根本的な対応はできない。かといってメーカーに対応を要請しても知らぬ存ぜぬじゃあユーザーも困るが、販社だって板挟みの目に遭ってかわいそうだ。
おそらく全国のスズキ販社にも他のメーカー系列の販社にも同じような事例で苦しい思いをしているひとがたくさんいるのではないかと思う。
今回の故障発覚から修理完了まで、こんな不満ばかりが頭をよぎって仕方なかった。

この件とは別に心配事、というよりももう困っているひとがでているのではないかと思うのだが・・・

このたびのドアミラーを見てもわかるように、いまのクルマはどこかが不具合を起こしたら、その部分を交換するのではなく、ユニットごと交換という例が増えている。いわゆる「アッセンブリー交換」というやつだ。

昨今、安全デバイスを中心に、2010年あたりまでとは比べものにならないほどクルマが複雑化している。

私がここ何年も疑問視して何度となく書いてきたのが自動車のヘッドライトについてだ。
いまはLED化され、先行車&対向車に幻惑を与えないようにしながらハイビーム配光ができるようになっている。複数のLEDの点消灯で不要な部分は光量を落とすいっぽうで、必要なエリアには存分に光を放つ・・・従来のハロゲン球ではとうていできない、LEDならではの技を駆使している。

ところがLED素子どれかひとつ不具合を起こそうものならユニットまるごと交換を強いられ、その費用たるや、ハロゲン電球の比ではない。「ハロゲンより明るくて省電力」「寿命は半永久的」といってながら、チラついたり消えっぱなしのクルマをよく見かけるのはどういうことか?
他の素子が生きていようといっしょくたに交換だし、複雑な制御をするECUが一体になっているものもあるからなお高い。

ハロゲン球の場合はバルブ交換だけですむ上、口金だって複数あってもメーカーを超えても使えるよう共通化されているから安く済むが、先進ライトならランプの外形デザインに合わせて内部基板も設計されている・・・クルマごとの専用設計に近いからどう考えてもバルブの場合ほどに安くなりようがない。これはリヤランプについても同様だ。
ある人気ミニバンなんて、ヘッドライト片側ユニットで27万円だというし、どこかの伝統的プレミアムセダンのライトも「ウン十万」とランプメーカーのひとから直に聞いたことがある。

そうでなくても、表面コーティングが劣化したアクリルレンズは単体で交換できず、この場合はライトそのものが正常であってもこれまた総取っ替えを強いられる。
いまはコーティングが進歩しているというが、素子切れを起こしたり、レンズの白濁・黄ばみで光量が落ちようものなら車検をパスできず、公道を走れなくなるから否応なしにまるごと交換&出費を強要される・・・バンパーの表面傷をがまんするのとはわけが違うのである。

ライトに関してはここにも書いたが、外装品に限らない。中に目を向ければ何かのスイッチに何かのコントロールパネル・・・自動車が便利で使いやすくなるのはおおいに結構。だが、それとて壊れたときの補修性と部品補給のあり方をクリアしていることが前提だ。
すなわち、あるユニットのどこかが壊れたら、そのユニット全体をまるまる交換するのではなく、設計段階から補修性に重点を置いて、交換は最低限の部位にとどまるような構造にしてほしいということだ。補修部品管理や作業性の都合からか、アッセンブル(集約)の範囲が広くなりすぎているように見えるし、非分解も多い気がする。

いま私のクルマは4WDスイッチの照明がひとつ切れているが、切れた電球交換の数百円で済むかと思ったら、電球は単体で出ないからスイッチごと交換で8000円ほどなんてあんまりなんじゃない?
照明の電球ぐらい単体で供給するようにしてくださいな。ちゃんとお金は払うから。

JB43の4WDスイッチ。いちばん右の「4WD-L」の照明が切れている。これだけでスイッチごと交換だってさ。ボタンはどれも機能するのに。

いつ出ていくかわからない部品が多くなって管理を個別にするのはコスト高になり、メーカーの担当部署も大変になると思うが、だからといってそのしわ寄せをいつまでもユーザーが受けっぱなしでいる義理合いはないのである。

「すごい機能」を持つばかりに故障時に高額な出費を強いられるのなら「すごい機能」なんて要らないし、強要されているようで迷惑。最低限の補修(故障部位だけ交換)という構造ができないうちは、せめてオプションにしてほしいのである。
うまい手が見つかるといいと思う。
現状のままだとそのうち度が過ぎてきて、「いまのクルマはシートがボディと一体のアッセンブリーになもので」なんていって、シート表皮が破けただけでクルマ1台交換なんていう時代が来るんじゃないかと心配しているところだ。

重要保安部品でもないドアミラー開閉機能の修理の話なのに最後はライト方面に飛躍してしまったが、今回でミラーの電動開閉機能修理のお話はおしまい。

さーてお次は・・・何をテーマにしましょうか。

キーワードで検索する

著者プロフィール

山口 尚志 近影

山口 尚志