SUVでもやっぱりコイツはフェラーリ! プロサングエの725馬力/V12をストリートで初乗りチェック。「見るべき技術がてんこ盛り!」 【清水和夫SYE試乗】

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
ウワサのフェラーリSUV、プロサングエに清水和夫が乗った! テストステージは高速道路とワインディング。さて、フェラーリ初でSUVの4ドア、そのサラブレッドはどんな走りを魅せたのか?
IMPRESSION:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)/MOVIE:StartYourEnginesX/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU)

SUVにもフェラーリ魂は引き継がれているのか? 清水和夫がテストする

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
フェラーリ・プロサングエを清水和夫が公道チェック

“よんせんななひゃくろくじゅうまんえん”…なんだかんだで5,000万円かぁ。国産車の価格ならビックリだが、フェラーリと聞けば納得のお値段。いや、安くも感じてしまうから不思議。
イタリア語で「サラブレッド(純血)」を意味する「Purosangue(プロサングエ)」。約2年前の2022年9月13日に世界初公開され、日本では同年11月に世界遺産、京都・仁和寺でお披露目された。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
フェラーリ・プロサングエのリヤビュー

『独自の道を行く』と豪語するプロサングエは、ドル箱SUVではなく「4ドアスポーツカー」だと主張している。どう見てもSUVであることには間違いない(と思う)けど、フェラーリが言うのだからそうなのだろう。
そういえば、どう見てもSUVだけど「SUVじゃなく新型です!!」と言い切ったトヨタ・センチュリーの例もあるので、言ったモン勝ちか。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
SUV(っぽく)でもフェラーリ魂はしっかりと受け継いでいる

【フェラーリ・プロサングエの主な見どころ】

フロントミッドに搭載されるプロサングエのF140IAエンジンは、バンク角65度、6500cc、ドライサンプ、高圧直噴式のV12自然吸気で、最大パワー725ps、2100rpmという低回転時で80%、6250rpmで最大716Nmのトルクを得られる。その制御はF1ストラテジー(戦略)による特許取得の新機能を採用しているという。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
フェラーリ・プロサングエのV12エンジン

フェラーリ・アクティブ・サスペンションは、48V×4コのアクチュエータースピードを特徴とし、油圧式ショックアブソーバーと電気モーターを組み合わせ、高い周波数でボディとタイヤを制御。

296GTBで採用されたABS‘EVO’がさらに進化し2.0へ。ESC(電子制御スタビリティコントロール)からの情報を活用、正確に車速を推定し4輪のばらつきをなくす、としている。

また、プロサングエの4WDシステム「4RM-S」は、SF90ストラダーレの4WDシステムと812コンペティツィオーネの4WS技術を受け継いだもの。フロントアクスルのトルクベクタリングとE-Diffによるリヤタイヤへのトルク配分、4WSの横力を組み合わせ、最適なヨーマネージメントを行なうとのこと。

そんな、フェラーリ初のSUV(っぽい)スペシャルなV12スポーツカーを国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが公道試乗。エンジンには電気の助け無し、自然吸気V12を搭載するフェラーリの4WD・SUVをどう評価したのか?

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
プロサングエのドアはこう開く
フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
リヤハッチはこう開く

■いいねV12♪ このレスポンスなに!? 神がかってるな

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
念願のフェラーリ・プロサングエ試乗だ!

この日を待っていた。ついにフェラーリ・プロサングエに乗った。
最近のフェラーリはF1も頑張っているが、圧倒的にホンダやマクラーレンが強くて、もうちょっと前に行けるのかな?と思っていた矢先、このプロサングエ試乗。フェラーリ初の5ドアハッチで4駆でSUV。まぁSUVって言っていいかどうかわからないが。確かにちょっと車高は高い。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫

フェラーリには元々、12気筒の4駆はGTC4ルッソ(GTC4Lusso/※清水和夫 試乗動画はコチラ!)があったから、そのボディパッケージを変え、車高を上げた。
プロサングエは“SUVブームの最後の大物”って感じだ。SUVはアストンマーチンも出てきて、ロータスも作ったし、ランボルギーニにもある。今、SUVを作っていないのはマクラーレンくらいか。ま、お金儲けのためには今後、やるかもだが。

■SUVブーム、最後の大物「プロサングエ」

このフェラーリ・プロサングエ、どうなんだろう?と思って乗ってみたが、日本の高速道路をゆっくり走っている分には、凄いということは分かるが、何が凄いのか?というのは正直、分からない。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
プロサングエのコクピット

が、メカニカルにはアクティブサスがモーターで制御される。コーナリングで内輪がジャッキアップするのだが、ロールは競艇のモーターボートと違って外側が沈み込むロール。アクティブサスはそれをフラットにしたりする。
一時アウディやメルセデスはインロールとかをやっていた。従来は油圧とかエアサスを使っていたが、これはモーターによってサスペンションのストロークを制御するという、ある意味画期的な技術。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
良い眺め!

これから電動化になると電気エネルギーをいっぱい持っているから、油圧で制御するよりもモーターで制御した方が、より緻密に制御できる。モーターだったらソフトウェアでいろんなことができる。そういうことを考えると、このサスペンションはこれからのハイエンドな高級車に使われていく技術なのかな。

去年の今頃ブレンボに呼ばれ、油圧でキャリパーのパッドを押すのではなく、電気の力でパッドを押し付けるようなドライブレーキ、モーターキャリパーに乗った。それも2025年ぐらいに出てくるそうだ。
今、パワーステアリングは油圧じゃなくて全部モーターになっているので、サスペンションもブレーキもダンパーも、全部油圧からモーター制御に切り替わる時代。そういう意味で、プラグインハイブリッドとか電気自動車みたいに電気エネルギーをいっぱい持っているといろんなことができるんだなと思う。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
プロサングエのフロントシート
フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
プロサングエのリヤシート。完全独立式だ

■なぜ人は「V12」にいくのか? そしてBEVのフェラーリはどうなる?

なんで人々はみんなV12にいくのか…?
それは、内燃エンジンとして完全バランスだからということが言える。クランクシャフトに発生する1次~6次振動ぐらいまでが限りなく0になるというような、究極の完全バランス。完全バランスはV12だけじゃなく、直6と水平対向6気筒も完全バランスと言われている。だから、ポルシェの6発、フェラーリのV12、日本ではマツダが頑張って作っているストレート6。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
ダンピングがもの凄くイイ!

高速を走ると本当にフラットだ。多少路面のデコボコが来てももの凄くダンピングがいいし、ロールピッチがほとんどない。完璧なフラットライド。サスペンションが生き物みたいだ。動物のアンヨみたいな感じ。

でも、今フェラーリ買うんだったら何がいいかな? この前1030psの凄いストラダーレSF90 XXに乗ってきた。が…ウーン、アレもいいけど、プロサングエもいいんだけど…。普通のGTC4ルッソでもいいかなって思う。昔の612スカリエッティ(Scaglietti)とか。V8ターボもいいが、オレはやっぱり『いつかはフェラーリのV12』は持ってみたいなと思っている。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
日本のワインディングでは物足りない?

この辺のコツコツとした時のサスの初期のあたりのちょっとしたマイルドなところと、その先はビシッとこうダンピングさせるところ、そのバランスがいいね。

フェラーリはバッテリーEVを作ろうと思ったら、どこかからかバッテリーを調達してきてモーターで走らせればいい。それをどういうDNAで走らせるか、どこに魂を入れるか?というのが大事。電気自動車になってもフェラーリの魂というのはずっと続けられると思う。

このフェラーリのSUVに乗っていると、SUVという軸で見た時には、マツダのラージ軍、FRベースのCX-60、70、80、90、こういったシリーズもあるし、クラウンはFR系をやめてセダンではあるが全部エンジン横置きにして。その辺りからセンチュリーとか2000万円のミニバン、レクサスLMも出てきている。エンジンを縦に置くとフロントのデフの配置が困る。エンジン横に置いちゃった方がパッケージ的には楽なのかもしれない。

■プロサングエをベースに「フェラーリのパナメーラ」が出る!?

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
コレをベースに車高の低い「フェラーリ版パナメーラ」が出る??

2011年のジュネーブショーでフェラーリが初めて四駆を出した(Ferrari Four=FF)。それはもうしげしげとショー会場で見た。
フェラーリの場合、12気筒エンジンでもフロントミッドシップでだいぶ後方にエンジンがある。で、どうやって四駆を作ったかと言うと、フロントの縦置き12気筒エンジンの前側にフロントのデフを作って、トランスアクスルでリアにデフがあるっていうこと。エンジンとミッションの両サイドをデフで挟むような四駆。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
エンジンの前側にデフを置く。そんな技術が見逃せないポイント

縦置きのFR系っていうと、トランスミッションから前側に出してエンジンの下にデフを入れるみたいな、メルセデスとかBMW、GT-Rはそう。が、フェラーリの場合、エンジンが後方に位置しているから、エンジンの前側にデフ置いたというところが凄いなと思う。こういうレイアウトは前後長が短いエンジンだとできるから、スバルもそうすればいいのに!なんてその時思ったけど。

フェラーリの四駆というのはそこから始まり、その後GTC4ルッソの四駆が出てきてこれはオレも国際試乗会に行った。せっかく四駆があるということで、車高を上げてSUVを作った。と同時に2ドアのクーペではなく、5ドアハッチ(4ドア)ということ。フェラーリにしてみれば車高の高い初めてのクルマということで、非常にチャレンジングなのだ。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
フェラーリ・プロサングエ×清水和夫

実際乗ってみて、日本だと50km/h、60km/h、高速道路はカーブがないからよく分からないが、はっきり言って日本では…よく分からない。これはやっぱりドイツのアウトバーンに行かなくても、ニュルブルクリンク辺りを走れば本領発揮! それか、スペインのワインディングに行って走らせたいなと思う。

ということで、フェラーリ・プロサングエには技術的に見るべきところがもの凄くある。

フェラーリ・プロサングエ×清水和夫
カーボン製のオーバーフェンダーで中身を隠す

車高上げて中が見えるので、フェンダーの隙間をカーボンで隠しているが、私、将来この車高の低いヤツが出てくるのかな?と。そうすると、5ドアで四駆でって言うと…あ、パナメーラなのね!と。フェラーリのパナメーラ・バージョンが出てくんじゃないかなと思うんだけど。

いずれにしてもプロサングエは超魅力的なクルマ。でも、日本ではこのクルマの本領発揮できるコースはない。コーンズの専用サーキットに行かないとダメだね。

【SPECIFICATIONS】
■フェラーリ プロサングエ Ferrari Purosangue
全長×全幅×全高:4973×2028×1589mm
ホイールベース:3018mm
車両重量:2033kg
乗車定員:4名
エンジン:V型12気筒DOHC
ボア×ストローク:94.0×78.0mm
総排気量:6496cc
エンジン最高出力:533kW(725ps)/7750rpm
エンジン最大トルク:716Nm(73.0kgm)/6250rpm
ミッション:8速DCT
サスペンション(前/後):ダブルウイッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前/後):255/35ZR22/315/30ZR23
車両本体価格(税込):47,600,000円

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著者プロフィール

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツ…