MAZDA3 レトロスポーツエディション e-SKYACTIV G2.0搭載モデルは大変魅力的な特別仕様車

MAZDA3 FASTBACK 20S Retro Sport Edition(6AT)
マツダはCX-5とCX-30、MAZDA3にRetro Sport Editionを設定している。「レトロモダンの世界観をテーマにスポーティさを融合」した特別仕様車で、ボディカラーはジルコンサンドメタリックをイメージカラーとして設定(それ以外のカラーも選択可能)。シリンダーヘッドなどエンジン部品の鋳造に使う砂型の砂をイメージしたカラーだ。どんなクルマなのか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

商品改良+RSEで質感UP

インテリアはレトロな雰囲気を醸し出すテラコッタカラーと、スポーティさを際立たせるブラックを組み合わせ

Retro Sport Edition(レトロスポーツエディション、以下RSE)はドアミラーやホイール、シグネチャーウイングをブラックで統一。インテリアはレトロな雰囲気を醸し出すテラコッタカラーと、スポーティさを際立たせるブラックを組み合わせたコーディネーションとし、シートはスウェード調生地のレガーヌを中心部に使用し、サイド部はテラコッタカラーの合成皮革を組み合わせている。CX-30とMAZDA3は、インパネやドアトリムにもレガーヌを採用することで、さらに質感を高めている。

全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm 車重:1380kg
WLTCモード燃費:16.4km/ℓ  市街地モード 12.6km/ℓ  郊外モード 16.9km/ℓ  高速道路モード 18.4km/ℓ

RSEの設定がある3モデルのなかで今回選んだのは、MAZDA3のファストバックだ。RSEはBlack Tone Edition(ブラックトーンエディション)がベースで、前述したアイテムに加え、運転席10Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能を含むドライビング・ポジション・サポートパッケージ、リヤのLEDマップランプやBOSEサウンドシステム+12スピーカーなどが装備される。

シートは合成皮革/レガーヌ(テラコッタ/ブラック)
運転席は10wayパワーシート(ドライビングポジション機能付き)

2021年型のMAZDA3 e-SKYACTIV X搭載車(ファブリック内装)のオーナーとしては、2023年4月23日に行なわれた商品改良の内容も気になるところだ。同年9月4日に発売されたRSEには当然、商品改良の内容が反映されており、安全装備ではAT誤発進抑制制御(前進時/後退時)が進化。従来の「車・壁などの障害物」に加えて、「歩行者(前方)」も検知対象となった。

また、ドライバー・モニタリングに「わき見警報機能」が追加され、ドライバーのわき見を検知すると、画面表示と警報音を用いて注意を促すようになった。

8.8インチだったセンターディスプレイが10.25インチへと大型化。これはうれしい。

装備面では、8.8インチだったセンターディスプレイが10.25インチへと大型化した。さらに、センターコンソールの奥にスマートフォンのワイヤレス充電機能を追加。この変更に合わせ、フタ付きだったカップホルダーがフタなしになった。フタと閉じた状態だとすっきりしていてスマートだが、フタを開けた状態だと奥のスマホ置き場と干渉する。そのため、フタの廃止に至ったのだろう。

モバイル機器関連では、Apple CarPlay/Android Autoの接続機能(有線)に加え、ワイヤレス接続機能(Apple CarPlayのみ対応)が追加された。

センターコンソールの奥にスマートフォンのワイヤレス充電機能を追加
USB-CからUSB-A端子に変更された。

また、改良前はセンターのコンソールボックス内にUSB-Aの端子が2つ設けられていたが、商品改良版は照明付きのUSB-C端子2口になった。細かなところでは、エアコン操作パネルの内気循環と外気導入を切り換えるスイッチに絵文字が追加された。商品改良前は黒無地で、オーナーになって慣れてしまえば問題ないが、無印でいかにも不親切だった。

ジルコンサンドメタリックのボディカラーは、なかなか個性的である。ドアミラーやホイール、シグネチャーウイングのブラックとの組み合わせにより、渋味を醸し出しているよう。試乗車はe-SKYACTIV G 2.0の2.0L直4ガソリンエンジンを積む20Sだった。最高出力は115kW/6000rpm、最大トルクは199Nm/4000rpmを発生する。トランスミッションは6ATだ。

ドアを開けると、華やかさと落ち着きが同居した光景が目に飛び込んでくる。シートのサイド部にあしらわれたテラコッタカラーの合皮は上質な印象。起毛素材のスウェード調生地はスポーティさを演出する定番素材だが、定番だけあって効果は間違いなく、スポーティなムードを漂わせるのにひと役買っている印象。着座した際に目に入る位置にあるため効果は高く、テラコッタカラーのステッチが入ったインパネは、上質感とスポーティなムードを高めている。20S RSEの車両本体価格は298万4300円だが、インテリアの質感の高さからすると大バーゲンだ。

10.25インチのセンターディスプレイはRSEの専用装備ではなく商品改良後のモデルに共通する変更点だが、改良前の8.8インチと日常的につき合っている身としては、大きな画面が身に染みてありがたく感じる。視界の邪魔にはなっておらず、表示面積が大きく、字も大きく、単純にありがたい。

e-SKYACTIV G2.0

2.0Lの自然吸気エンジンは、車重1380kgのクルマを走らせるのに充分な力を発生する。ただし、巡航時に上り勾配に差し掛かったのでアクセルペダルの踏み込みをちょっと強くすると、こらえきれずにシフトダウンし、エンジン回転を高める。ややこらえ性に欠ける印象だ。20Sでもトランスミッションが6MTなら印象が異なるかもしれない。

e-SKYACTIV G 2.0の頭の「e」はマイルドハイブリッドシステムの組み合わせを意味しており、ISG(スターター兼用のオルタネーター)と小容量のリチウムイオンバッテリーを搭載する。効果を実感しやすいのは燃費よりも、アイドリングストップからの再始動だ。通常のスターターモーターではなくベルト駆動のISGで再始動を行なうので、作動音が静かなのが特徴。

それはいいのだが、発進時ではなく、停止後にエアコンなどの理由で再始動した際に駆動系で発生するショックが大きく、エクステリアやインテリアが醸し出す上質な雰囲気にそぐわない。また、発進時にブレーキのオートホールドに引っかかりが生じ、運転の邪魔をする傾向があった。この点、個体差の可能性もあるので、現行20SのAT全車がそうだと決めつけないでおく。

いずれにしてもRSE、写真から感じていただけるように、大変魅力的な特別仕様車だ。そして、MAZDA3のファストバック。デビューから5年を経てなお、いささかも新鮮味を失っていないことを改めて感じた。

タイヤは215/45R18のブリヂストンTURANZA T005を履く。
最低地上高:140mm 最小回転半径:5.3m
MAZDA3 FASTBACK 20S Retro Sport Edition(6AT)
全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm
ホイールベース:2725mm
車重:1380kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:PE-VPH型
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm
圧縮比:13.0
最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク:199Nm/4000rpm
過給機:なし
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:51L
モーター:MJ型交流同期モーター
最高出力:5.1kW(6.9ps)/1800rpm
最大トルク:49Nm/100rpm

WLTCモード燃費:16.4km/ℓ
 市街地モード 12.6km/ℓ
 郊外モード 16.9km/ℓ
 高速道路モード 18.4km/ℓ
車両価格:298万4300円

キーワードで検索する

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…