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新型フリードは「AIR」と「CROSSTAR」2つの顔で展開
3代目へとフルモデルチェンジした新型フリードのスタイリングは、上質や洗練そして信頼感を目指したものとなっている。その上でシンプルな「AIR」とアクティブな「CROSSTAR」という2つのラインを設定しているのが特徴。これは幅広いユーザーニーズを満たすことを狙った商品企画と理解することができる。
「CROSSTAR」というのは売れに売れまくった従来型フリードから踏襲したサブネームで、SUVブームとの相性を考えても新型フリードに設定することは自然に思えるが、プレーンな仕様に「AIR」とつけたのには疑問の声もある。なぜなら、「AIR」というサブネームはステップワゴンで先行して使っているが、そのステップワゴンは好調な売れ行きというイメージが強くないからだ。
しかし、そうした理解は間違いというべきかもしれない。
ステップワゴンは最下位脱出、プレーンな魅力が拡大中
前提としてステップワゴンの売れ行きについてのファクトを確認してみよう。
自販連(日本自動車販売協会連合会)が発表している2024年上半期(1月~6月)の登録車販売台数から、ミニバンモデルの販売台数と前年比の上位7モデルをピックアップすると以下のようになる。
トヨタ・シエンタ 5万5649台(82.6%) 日産セレナ 4万169台(116.6%) ホンダ・フリード 3万8429台(88.3%) トヨタ・アルファード 3万7385台(152.2%) トヨタ・ノア 3万5105台(69.5%) ●ホンダ・ステップワゴン 3万4932台(218.7%) トヨタ・ヴォクシー 3万4794台(71.5%)
ステップワゴンが属するMクラスミニバン・カテゴリーにおいて、同モデルは最下位が定位置という印象があるかもしれないが、僅差とはいえヴォクシーを上回っている。さらに注目したいのは前年比で、ミニバン全体の中でみても明らかに伸びているのがわかる。
現行ステップワゴンでは、AIRとSPADAという2つのラインを展開しているが、いずれもライバルに対して押し出しが弱いのがウィークポイントと指摘されてきた。しかし、ホンダ自身が押し出し感のあるスタイリングからの脱却を狙っている。シンプルライフを求めるミレニアル世代やZ世代に向けたスタイリングがステップワゴンに与えられたといっていい。新型フリードにAIRというサブネームが使われているのは、そうしたミレニアル世代やZ世代を意識したデザインとしていることを示している。
ステップワゴンが前年比で倍以上に売れているということは、まさにAIRの世界観がマーケットに受け入れられてきたことを意味しているのではないだろうか。新型フリードにAIRを設定したことの相乗効果により、シンプルライフにマッチするスタイリングという評価が高まるようになれば、ステップワゴンとフリードがカニバリすることなく同時に売れていく未来が見える。
実際、新型フリードの商談に訪れたユーザーがステップワゴンを検討するというケースも増えているという。
丁寧なシンプルライフを思わせるスタイルはN-BOXにも共通
押し出し感を控えめにして、上質でシンプルなイメージを強めるというデザインのアプローチは、新型フリードやステップワゴンだけに採用されているわけではない。ホンダの国内市場における大黒柱モデルであるN-BOXにおいても、同様のアプローチが取られている。
標準系&カスタム系ともに従来モデルやライバルモデルに比べると大人びたスタイリングとなった現行N-BOXについては賛否両論あるかもしれないが、2024年上半期の販売台数が10万680台となり、日本でもっとも売れたクルマになったのは間違いなく事実。丁寧な生活を想起させる内外装のイメージは日本市場で評価されているといっていいだろう。
ちなみに、新型フリードとステップワゴンのAIRについてはカタログやホームページでの訴求ボディカラーは「フィヨルドミスト・パール」となっている。同色は、N-BOXファッションスタイルの専用色としても設定されており、このあたりでも世界観の統一が図られているといえそうだ。
はたして、ホンダが注力するAIRファミリーがミレニアル世代やZ世代に受け入れられ、ミニバンのトレンドを変えることになるのだろうか…おおいに注目していきたい。