“アレ”は意外にも義務じゃない! クルマの安全装備、現状どれが義務化されている?

ニュースなどでは度々「自動車の装備を義務化した」と報じられる。直近では国土交通省が「踏み間違い防止装置」の義務化を発表したばかりだ。この「義務化」とはどういうことなのだろうか。現状義務となっている自動車の安全装備と併せて解説しよう。

「装備の義務化」ってどういうこと?

シートベシートベルトの装着義務化は1969年4月だ。つまり、それ以前に製造されたクルマは装着義務がなかったことになる。実際に旧車ではシートベルトが備わらないクルマも存在する。

法律で装着が義務づけられた装備は、装着していなければ新車販売できないことを意味する。

とくに安全に関わる装備は意義が大きく、新車に装着義務とすることでクルマ全体の安全性能水準を引き上げられる利点がある。

注意したいのは、義務化の対象となるのは制定された時期以降に販売される新車のみである点だ。そのため、現在乗っているクルマに義務化された装置を追加する必要はなく、クルマを買い換える必要もない。中古車も対象外だ。

つまり「装備の義務化」とアナウンスがあっても、ユーザーは別段気にする必要はないと言える。しかし、まったく無関係とも言えない。まずは現在どのような安全装備が義務化されているか知っておこう。

あの装備の義務はいつから?【義務化安全装備一覧】

装着義務化時期安全装備名
1969年4月シートベルト
2006年1月ハイマウントストップランプ
2012年10月スタビリティコントロール
2012年10月ブレーキアシスト
2020年4月オートヘッドライト
2021年11月衝突被害軽減ブレーキ
2022年5月バックカメラモニター
2022年7月イベントデータレコーダー
2022年9月シートベルトリマインダー
発表:2024年6月28日踏み間違い防止装置

以上の10品目が、乗用車への装着が義務、あるいは現時点で義務化が決定している安全装備だ。それぞれの装備について解説していこう。

シートベルト

シートベルトが装着義務となったのは1969年4月からだ。日本でクルマが普及しはじめたのは1960年代に入ってからのため、実に10年近くもシートベルトの装着義務がなかったことになる。現在のように未着用での運転に罰則が設けられたのは1992年からで、それ以前は驚くことにシートベルトの着用は努力義務だった。

ハイマウントストップランプ

ハイマウントストップランプの球切れで検挙された例は聞いたことがないが、後方からの被視認性を高めてくれる重要装備だけに球切れには注意したい。

リヤウィンドウ上部などに備わるブレーキ補助灯が「ハイマウントストップランプ」だ。義務化された2006年1月以降のクルマは、球切れを起こしていると保安基準違反となり車検に通らない。また、「整備不良(尾灯等違反)」の交通違反にも抵触する恐れがあるため注意が必要だ。

スタビリティコントロールシステム(横滑り防止装置)

トラクションコントロールとABSの機能を統合し、タイヤが滑り出した際に自動で安定性を取り戻すように制御する装置の総称を「ESC(エレクトリック・スタビリティコントロール)」という。メーカーによってはVSC/VDC/ESPなどと呼ばれることもある。

ブレーキアシスト

横滑り防止装置と同時に義務化された「ブレーキアシスト」は、強く踏み込んだときにペダル踏力をサポートする機能だ。事故回避に際してブレーキを強く踏めない人のための義務化された。

オートライト

周囲の明るさを検知して自動でヘッドライトを点灯/消灯してくれる機能が「オートライト」だ。ヘッドライトの点灯忘れによる夕暮れ時の事故抑制に効果を発揮する。車種によっては「オートハイビーム」も備わるが、こちらは装着義務ではない。

衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)

自動ブレーキの正式名称は「衝突被害軽減ブレーキ」という。新型車は2021年11月から装着義務となっており、継続生産車(現行車種の新車)も2025年以降は自動ブレーキを装備しなければ販売できないことになっている。もちろんMT車(マニュアルトランスミッション車)も義務対象だ。

バックカメラモニター

バックカメラは後方確認に有効だが、確認するためのモニターディスプレイが必須となるため、どうしても車両価格が引き上がる。

2022年5月以降に販売された新型車はバックカメラを備えるか、コーナーセンサーなどの検知システムもしくはミラーなどで、車の後方直近を確認できることが義務となっている。継続生産車の場合は2022年5月以降に販売されたクルマが義務対象となる。

EDR(イベントデータレコーダー)

2022年7月からは、車両の動作情報などを記録する「EDR(イベントデータレコーダー)」が装着義務となった。EDRは事故などで車体に衝撃が加わると、その数秒前にさかのぼって車速やハンドル・ペダルの操作量、シートベルト着用の有無や安全装備の稼働状況などを記録し、事故状況の解明などに役立つ装備だ。

全座席シートベルトリマインダー

シートベルトをしていない乗員座席を検知し警告する装備を「シートベルトリマインダー」という。後席のシートベルトが着用が義務となったことで、シートベルトリマインダーも2022年9月から全座席を対象とすることが義務となった。

踏み間違い防止装置

度々起こるアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違い事故。後付け用装置も販売されているため、装備していない既存のクルマへ取り付けることも可能だ。

国土交通省は2024年6月28日に「踏み間違い防止装置」の義務化を発表した。理由はもちろん操作ペダル踏み間違いによる暴走事故を抑止するためだ。適用される正確な時期は未定だが義務化は確実となる。ただし、踏み間違い事故が起こりにくいMT車は対象外となる。

ABSやエアバッグが装着義務じゃないのはなぜ?

衝突を検知して自動で膨らむエアバッグは最後の砦とも言える重要装備だが義務ではない。そのため、エアバッグが備わらない社外ステアリングに交換しても保安基準違反には問われない。

現在では当たり前のように備わっている安全装備でも、不思議と義務化されていないものがある。その代表がABSとエアバッグだ。

ブレーキロックを防止し、スリップによって制動距離が伸びるのを抑制してくれるABSは、大型車では義務化されているが、乗用車は対象外だ。とはいえ、横滑り防止装置が義務化されたことで、実質的にABSも義務化されたのと同義と言える。

海外ではエアバッグの搭載が義務となっている国も多いが、日本では現在も義務化されていない。

エアバッグは重篤な事故から乗員を保護してくれる一方で、火薬を用いて瞬時に展開する。小さな子どもや妊婦の胎内にいる赤ちゃんはエアバッグが作動する際の衝撃に耐えられない恐れがあることから、義務化は慎重にならざるを得ないのだろう。

安全装備の義務化の功罪 ドライブレコーダーの義務化はいつから?

車両データを記録するEDRと、周囲を映像として記録するドライブレコーダーの両方が装備されれば事故検証などに有用だが、現状ドライブレコーダーは義務装備ではない。ただし貸切バスには、車両年式等に関わらずドライブレコーダーの装着が義務となっている。

以上のほかにも、乗用車ではISOFIX取付装置(チャイルドシートの固定金具)が装着義務となっている。走行ノイズが小さなEV(電気自動車)やハイブリッドカーなどは、周囲に車両の存在を知らせるために「車両接近通報装置」の搭載が義務だ。

事故時の状況を映像で記録できるドライブレコーダー義務化の賛否も度々話題に挙がるが、EDRとは異なり肖像権やプライバシー権の問題が持ち上がるため、今後乗用車で義務化されるかどうかは現状不透明と言わざるを得ない。

こうした装備の義務化によってクルマの安全性が上がるのはユーザーにとって大きなメリットとなる。その反面、装備の義務化は新車価格の上昇につながるのがデメリットと言えるだろう。

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