新型マツダCX-80 全長ほぼ5mの3列シートSUV、CX-60、CX-8とどこが違う?

マツダのフラッグシップSUV、CX-80の日本仕様がついに公開された。全長4990mm、ホイールベース3120mmの伸びやかで美しいボディと3列シートを組み合わせた期待のニューカマーだ。パワートレーンは、2.5L直4+PHEVの「e-SKYACTIV PHEV」と3.3L直6ディーゼルターボの「SKYACTIV-D 3.3」そして、それに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた「e-SKYACTIV D3.3」の3種類を設定する。発売は今年秋の予定。どんなクルマなのか、CX-60、CX-8と比べながら見ていこう。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:長野達郎(NAGANO Tatsuo)

CX-80はどういう位置づけ?

CX-8/CX-60/CX-70/CX-80/CX-90サイズ比較

マツダCX-80 XD_HYBRID Premium Modern 4WD ボディカラーはアーティザンレッドプレミアムメタリック
全長×全幅×全高:4990mm×1890mm×1705mm/1710mmmm(ルーフレールあり) ホイールベース:3120mm
車両重量:2090kg
室内寸法は2650mm×1550mm×1233mm
デザインコンセプトは「Graceful Toughness」

マツダはCX-80の日本仕様を公開した。販売開始は2024年秋を予定している。3列シートSUVのCX-80は、縦置きパワートレーンを搭載するラージ商品群に属する。国内では2022年に2列シートSUVのCX-60がデビューしている。そのCX-60に対し、より上級志向で使い勝手の高いモデルの位置付けがCX-80だ。

CX-60とCX-80は日本と欧州が主なマーケット。プラットフォームを共有するワイドボディのCX-70とCX-90は主に北米向けだ。シートの数でいえば2列シートのCX-60とCX-70、3列シートのCX-80とCX-90が対になるが、ボディサイズで見るとCX-60はショート版(ホイールベース2870mm)で、CX-70とCX-80、CX-90はロング版(ホイールベース3120mm)に分類することができる。

CX-70 北米を中心にすでに販売されているマツダの2列シートSUV。ホイールベースはCX-80、CX-90と同じ3120mm
CX-90 北米を中心にすでに販売されているマツダの3列シートSUV。ホイールベースはCX-80、CX-70と同じ3120mm

つまり、CX-70はCX-90から3列目シートを取り除き、広大な荷室容量を備えた2列シートモデルと見ることができる。サイドのウインドウグラフィックを含め、CX-70とCX-90のプロポーションは共通だ。

一方、国内で販売するCX-60とCX-80はシートの数も、車両サイズも、プロポーションも、エクステリアが醸し出すムードも別モノで、CX-80はCX-60よりもより上質で、豊かで、落ち着きがあり、かつ強い存在感を放っている。

CX-80の全長×全幅×全高は4990×1890×1705〜1710mmで(全高の違いはルーフレームの有無)、CX-60より250mm長く、全幅は同じで、20〜25mm背が高い。ホイールベースは3120mmで、CX-60より250mm長い。寸法上はホイールベースの差が全長の差だ。最小回転半径はCX-60の5.4mに対し、CX-80は5.8mである(CX-8と同じ)。

CX-90CX-80CX-70CX-60CX-8
エンジンレイアウト縦置き縦置き縦置き縦置き横置き
シートレイアウト3列3列2列2列3列
全長5100mm4990mm5100mm4740mm4925mm
全幅1994mm1890mm1994mm1890mm1845mm
全高1745mm1685mm1745mm1685mm1730mm
ホイールベース3120mm3120mm3120mm2870mm2930mm
最小回転半径5.8m5.4m5.8m

CX-60はサイドウインドウの上側のラインを後ろに向けて下げ、ベルトラインはBピラーより後ろをわずかに持ち上げることで上下にタイトなキャビンとし、かつDピラーは太く、クオーターウインドウをキックアップさせることで、スポーティな骨格を表現している。

CX-80はウインドウグラフィック上端のラインはあまり下げずに後方まで引っ張り、ベルトラインも後方まで直線的に引っ張ることで、豊かさや優雅さを表現している。CX-60ではブライトとブラックのサイドウインドウモールディングを使い分けているが、CX-80は優雅さを表現するためブライトモールディングに統一した。

また、モダン系の切削ホイールは、CX-60ではブラックの塗装色としたがCX-80ではグレーメタリックとし、切削面とのコントラストを抑えて品格の高さを表現している。スポーティなCX-60に対し、品格のCX-80というキャラクター分けができるかもしれない。

左がCX-80、右がCX-8。プロポーションの違いは歴然としている。

3列シートのCX-80は同じく3列シートを備えるCX-8の後継としての役割を担うが、プロポーションの違いは歴然。前輪駆動ベースのCX-8と後輪駆動ベースのCX-80では骨格がまったく異なり、CX-80は後輪駆動ベース特有の、安定感のある堂々としたプロポーションを実現している。

CX-80 全長×全幅×全高:4990mm×1890mm×1705mm/1710mm(ルーフレールあり) ホイールベース:3120mm
CX-60 全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm ホイールベース:2870mm
CX-8 全長×全幅×全高:4925mm×1845mm×1730mm(ルーフレールあり) ホイールベース:2930mm
ちなみに、トヨタ・ランドクルーザー250は、全長×全幅×全高:4925mm×1980mm×1935mm ホイールベース:2850mm

国内仕様のCX-80は、フロントグリルのメッシュを縦フィンに統一している(CX-60は縦フィンと横フィンを設定)。真正面から見た際はCX-80とCX-60の区別がつきにくいため、さりげなくCX-80であることを示すアクセントが採用された。グリルインシグニアと呼んでおり、グリルの左上に配置される。ブローチやポケットチーフをイメージしてデザインしたという。3本で構成されるアクセントのカットされた上の部分は、シグネチャーウイングの横のラインの延長線上で太陽光が反射する仕掛け。デザイナーがこだわった部分である。

ボディカラーはアーティザンレッドプレミアムメタリックと、メルティングカッパーメタリックが新たに採用された。アーティザンレッドメタリックはMAZDA6の20周年記念特別仕様車(2022年)で採用済みだが、もともとはラージ商品群専用色として開発されたカラーだ。

メルティングカッパーメタリックはラージ商品群専用に開発されたカラー

メルティングカッパーメタリックもやはりラージ商品群専用に開発されたカラーで、国内初適用。銅を溶かした表面に少しサンドブラストを掛けたような、新しいニュアンスを表現している。特徴は3つあり、1つめはアルミフレークが非常に細かく、これにより非常に緻密な面質を表現していること。2つめは塗料の中に黒い顔料をわずかに混ぜ込むことにより、落ち着きのある深みを出していること。3つめは赤と黄色の顔料を絶妙にブレンドすることで、ほどよい彩度を保っていること。これら3つの特徴により、スポーティにも見えるし、優雅にも見える表現となっている。

フラッグシップに相応しいインテリア

CX-80 XD HYBRID Premium_Sportsのインテリア シートはタン(ナッパレザー)
CX-80 XD HYBRID Executive Sports 4WDのインテリア シートはピュアホワイト(ナッパレザー)
CX-80 XD SPackage4WDのインテリア シートはブラック(ファブリック)

インテリアは「乗員全員が快適に過ごすことができる使い勝手と居住性」をテーマに開発が行なわれた。前席の空間とトリムはCX-60と共通だ。エクステリアに新しいボディカラーを設定したように、インテリアにも初モノを適用したほうが新規性や新鮮味を表現できるが、「フラッグシップのCX-80に入れても恥ずかしくないものを最初から開発している。分けて開発していたらあれだけ上質なものは作れていなかった」と開発者。いいものを出し惜しみせず、CX-60から投入していたということだ。

CX-80CX-60CX-8
1列目ヘッドルーム1011mm1004mm1015mm
1列目ショルダールーム1504mm1504mm1451mm
2列目ヘッドルーム996mm984mm988mm
2列目ショルダールーム1476mm1441mm1373mm
3列目ヘッドルーム915mm886mm
3列目ショルダールーム1296mm1350mm

2列目以降はCX-60と大きく様子が異なる。2列目シートは座席間にコンソールがあるセパレートのキャプテンシート仕様、キャプテンシートでコンソールがなくウォークスルーができる仕様、そして3人がけベンチシートの3種類を設定。ショルダールームはCX-8比で+103mmと大きく拡大している。ヘッドルームはCX-8比で+8mmで、着座保証体格はCX-8比+2cmの188cmだ。一方、小柄な乗員へも配慮しており、シート直下のフロアを部分的にかさ上げすることで、身長150cm相当の乗員でも着座した際にフロアに足がつき、楽な姿勢で座ることができる設計となっている。

1列目シート
2列目シート キャプテンシート仕様
3列目シート

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「新型マツダCX-80 全長ほぼ5mの3列シートSUV、CX-60、CX-8とどこが違う?」の1枚めの画像
1列目シート

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「新型マツダCX-80 全長ほぼ5mの3列シートSUV、CX-60、CX-8とどこが違う?」の2枚めの画像
2列目シート

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「新型マツダCX-80 全長ほぼ5mの3列シートSUV、CX-60、CX-8とどこが違う?」の3枚めの画像
3列目シート

CX-80は日本の道路環境や駐車場事情を考慮して全幅を1890mmとし、1900mm以内に抑えている。CX-8比でいえば+45mmだ。北米で販売しているCX-90の全幅は1994mmで、CX-80より100mm程度ワイド。しかしガラス面で規定される室内の造形はCX-80とCX-90で共通しており、全幅の増加分はエクステリアの造形に生かされている。見方を変えれば、北米で必要とされる室内空間が国内で販売されるCX-80でも担保されているということだ。

3列目シートは「大人がしっかり座れる、閉塞感、孤立感の少ない空間」を目指して開発された。リヤドア開口部は平坦にし、3列目シートに向けてはステップを分かりやすく配置することで乗降性に配慮。CX-8同様に、身長170cm相当の乗員の着座を保証している。ただし、ヘッドルームはCX-8比で約30mm拡大し、クオーターウインドウの大型化と相まって広々感を向上させている。2列目の頭上まで広がるパノラマルーフのおかげで視界が開けているのも、広々感の向上につながっている。

また、3列目はシートに深く着座させる設計とし、着座姿勢の安定化を図った。ボトルホルダー兼小物入れ付き(スマホもここに置ける)のアームレスト周辺にはUSBタイプCのソケットや空調ベントが設置されており、快適に過ごせる環境がひととおりそろっている。

荷室は3列目シート使用時でもゴルフバッグやベビーカーが搭載できる空間を確保。床下には洗車アイテムなどの小物を収納しておけるスペースが確保されている。3列目シートは背面ストラップを引いて格納と復帰を行なう。試してみたが、倒すのも、復帰させるのも力要らずで簡単だ。3列目シートを倒すと広大な荷室空間が広がる。バンパー下部に設置したセンサーに足をかざすことでゲートの開閉ができるハンズフリーゲートはCX-60と同様に装備。リヤゲートの内側にあるスイッチ操作で自動的に閉まるパワーリヤゲートクローズ機能もCX-60と同様に備えている。

マツダが誇る3.3L直列6気筒DOHCディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッド トランスミッションは8AT

CX-80は次の3タイプのパワートレーンを設定する。3.3L直列6気筒ディーゼルエンジンと8速ATの組み合わせ。このディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた仕様。そして、2.5L直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンと高出力モーターを組み合わせたプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。CX-60に設定のある2.5L直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンと8速ATの組み合わせは設定されていない。

タイヤはXD S Package以外は20インチを履く(235/50R20)

豊かで優雅で品格のある3列シートSUVとして使うもよし、3列目を倒して荷室の広いSUVとして使い倒すもよし。余裕のある上質な室内空間をフレキシブルに使えるのがCX-80の魅力。それが、マツダの新しいフラッグシップである。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…