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戦闘機6機を中心とした大遠征部隊
2024年8月6日から8日にかけて、航空自衛隊とイタリア空軍による国際共同訓練「ライジング・サン24」が三沢基地(青森県)にて実施された。来日したのは、F-35A×4機、ユーロファイター(F-2000)×2機に、G550AEW早期警戒機、KC-767A空中給油輸送機、C-130J輸送機などを加えた大部隊だ。
空自とイタリア空軍の共同訓練は、2023年8月に続いて2回目となる。前回は小松基地(石川県)が舞台となり、同基地の第6航空団(F-15J/DJ部隊)と来日したF-35Aによる訓練となったが、今回は三沢基地所属でF-35A部隊である第3航空団が訓練を担当したことから、第5世代戦闘機(F-35A)同士での、より複雑で高度な訓練が行なわれたようだ。空自側は戦闘機に加えて、KC-767空中給油機が参加し、また一部の訓練には在日米空軍のF-16CMも参加している。
中国の海洋支配への警戒を強める欧州各国
イタリア空軍は、なぜ遠く日本まで来訪したのだろうか? 彼らは約2ヵ月におよぶ長距離展開訓練「インド-パシフィック・ジャンプ2024」を実施、中東からインド洋、前述したオーストラリアを経て、日本に到達した。同様の展開訓練はドイツ・フランス・スペインも実施しており、彼らは大西洋を渡り、北米を経由して西回りに日本を訪問している(7月下旬にドイツとスペイン両空軍機が千歳基地に、フランス空軍機が百里基地を訪問している)。
欧州各国の空軍が、次々とインド太平洋地域へ展開する背景には、彼ら自身の展開能力向上はもちろんだが、この地域における安全保障環境への懸念がある。中国の海洋進出や北朝鮮の核開発を、重大な脅威と認識している証左とも言える。空自側では今回の訓練の目的を「戦術技量の向上及び相互理解の促進を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現のための防衛協力の更なる深化を図る」と説明しており、各国が連携して安全保障環境の確立に協力していく姿勢を示している。
イタリア空軍機は8月5日夜9時すぎに三沢基地に到着した。オーストラリア(ダーウィン基地)からフィリピン(クラーク基地)を経由し、何度かの空中給油を経た長距離移動だ。訓練は、さっそく翌6日昼頃には開始されている。夕方までに4回(F-35Aとユーロファイターが2回ずつ)も行われ、長距離移動の疲れを感じさせなかった。空自側では、それぞれの訓練にF-35Aを4機程度参加させている。訓練の詳細は非公開だが、空中戦や要撃戦闘などの訓練が行われたようだ。また、G550AEWによる警戒管制や、KC-767Aでの空中給油訓練も行われている。両国は記者会見やフォトセッションを経て、9日までの訓練日程を終えている。
実は深い日本とイタリアの関係
日本とイタリアは、6月に二国間協力の指針となる「日伊アクションプラン」を発表し、外交や安全保障での協力を強めている。また、あまり知られていないが、数年前から日本はパイロットの操縦教育の一部をイタリアの空軍関連機関(IFTS:国際戦闘機訓練学校)に委託しており、密接な関係を築いている。何より、2030年代中盤の就役を見込んでいる航空自衛隊の次期戦闘機計画(GCAP:グローバル戦闘航空プログラム)では、イタリアはイギリスと並ぶ共同開発のパートナーだ。
また、22日にはイタリア海軍の空母「カブール」、フリゲート「アルピーノ」、練習帆船「アメリゴ・ベスプッチ」が日本に寄港し、こちらも大きな注目を集めている。まさに「イタリアづくし」とも言える8月だったと言えるだろう。