360万円~登場のマツダFD型「アンフィニRX-7」のシーケンシャルツインターボとは?【今日は何の日?10月16日】

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、マツダ(当時は東洋工業)のロータリーモデル第6弾「RX-7」の3代目「アンフィニRX-7」が誕生した日だ。3代目は、軽量ボディと高性能シーケンシャルツインターボエンジンによって、ロータリーの走りにさらに磨きをかけたピュアスポーツである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・新型RX-7のすべて、マツダロータリーのすべて

■ロータリーの走りを追求したインフィニRX-7

1991(平成3)年10月16日、マツダが「RX-7」の3代目となる「アンフィニRX-7」(FD型)を発表(発売は12月1日)。流麗なフォルムとパワフルな走りで人気を獲得した初代「RX-7」の3代目であり、シーケンシャルツインターボを搭載して最速のロータリースポーツをアピールした。

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7

ロータリーモデル第6弾として大ヒットした初代RX-7

コスモスポーツ
1967年に誕生した「コスモスポーツ」。世界初の量産ロータリー搭載車

1967年に登場した世界初の量産ロータリー車「コスモスポーツ」に始まったマツダのロータリー展開は、その後「ファミリアクーペ」、「ルーチェクーペ」、「サバンナ」、「コスモAP」と続き、第6弾として登場したのが「サバンナRX-7」(SA型)である。

RX-7でまず注目されたのは、その流麗なスタイリング。リトラクタブルヘッドライトを装備したラジエターグリルレスのスラントノーズ、リアは個性的なリフトバックウインドウとリアデッキと、斬新さが際立っていた。

「サバンナRX-7」(SA型)
1978年にデビューして多くの若者から愛された「サバンナRX-7」(SA型)

搭載された12A(573cc×2)型ロータリーエンジンは、最高出力130ps/最大トルク16.5kgmを発揮。1000kgを切る軽量ボディによって、最高速度は180km/h、0-400m加速15.8秒を記録した。
さらに、軽量コンパクトなロータリーの特徴を生かして、エンジンをフロントミッドシップしたFRで、前後重量配分を50.7:49.3と最適化することにより軽快なハンドリング性能も実現。170万円から入手できた安価なロータリースポーツは大ヒットした。

1978年にデビューして多くの若者から愛された「サバンナRX-7」(SA型)

パワーアップと高級化を目指した2代目

人気のサバンナRX-7は、1985年に初のモデルチェンジで2代目に移行。2代目RX-7(FC型)は、スポーティさに加えてラグジュアリー感も追求したのが特徴だった。

「サバンナRX-7」(FC型)
1985年にデビューした2代目「サバンナRX-7」(FC型)

シャープなスタイリングから、やや丸みを帯びたマッシブなスタイリングに変貌。パワートレインは、13B型(654cc×2)2ローターエンジン、これにインタークーラー付ツインスクロールターボを搭載し、最高出力185ps/最大トルク25kgmを発揮した。
2代目RX-7も、スポーツカー好きのファンから熱烈な支持を獲得し、初代の人気を引き継いだ。

「サバンナRX-7」(FC型)
1985年にデビューした2代目「サバンナRX-7」(FC型)

最速のロータリースポーツとして登場したアンフィニRX-7

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7

3代目サバンナRX-7は、マツダが当時展開していた販売ネットワークの5チャンネル体制のひとつであるアンフィニの冠が付けられ、アンフィニRX-7(FD型)として販売された。

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7の主要構成部品

先代よりも、さらにワイド&ローの流麗かつ躍動感あるスタイリングとなり、RX-7として初めて3ナンバーボディとなった。3ナンバーながら車両重量が1270kg~1280kgに抑えられのは、マツダ独自のスペースモノコック構造による軽量化ボディのおかげだった。

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7の13B-REW型シーケンシャルツインターボエンジン

ロータリーエンジンは、13B-REW(654cc×2)型でシーケンシャルツインターボの装着によって、先代を大きく上回る最高出力255ps/最大トルク30kgmを発揮。車両価格は360万~444万円とかなり高額だった。ちなみに、当時の大卒の初任給は17万円(現在は約23万円)程度なので、単純計算では現在の価値で約487万~601万円に相当する。

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7の13B-REW型シーケンシャルツインターボエンジン

最高速度180km/h、0-400m加速は13.8秒と国内トップの性能を誇ったが、バブル崩壊でスポーツカー市場が縮小し、また燃費の悪さも指摘されたことから2002年に生産を終えた。

アンフィニRX-7
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7のコクピット
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7のリヤシートはバケツ型とも呼ばれ激狭だった

ツインスクロールターボとシーケンシャルターボの違い

2代目RX-7に搭載されたツインスクロールターボと3代目RX-7のシーケンシャルツインターボは、いずれもターボラグを減らし、低回転域から高回転域まで高過給ができるようにするターボである。

ツインスクロールターボの構成図

・ツインスクロールターボ
排気ガスが流入するタービンハウジング内部を2つの通路に分割し、低回転時など排気量が少ない場合は、片方の通路に排気を集中させることでレスポンスよく過給圧を高め、高回転時など排気量が多い場合は、両方の通路に排気を流し過給圧を高める方式である(FC型RX-7では、制御弁で排気ガスの流れを制御)。

・シーケンシャルツインターボ
2つのターボを直列または並列に組み合わせる方式。直列タイプでは、低回転時では排気ガスを小型ターボに送り込むことでターボラグを少なくし、高回転時にはもう一つの大型ターボに切り替える。並列タイプは、低速では片方のターボのみ作動、中高速では2つのターボを作動させる方式である。

シーケンシャルツインターボの構成図(直列型)
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7の各仕様
アンフィニRX-7
アンフィニRX-7

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1970年代前半の排ガス規制やオイルショックで、ロータリーエンジン車は大きな打撃を受けたが、改良を進めることで「コスモAP(1975年~)」と「RX-7(1978年~)」で復権を果たした。しかし、3代目「アンフィニRX-7」が登場した1990年代には、排ガス規制強化やバブル崩壊などでロータリーモデルへの風当たりは再び強くなった。結局、「RX-8(2003年~2012年)」を最後にロータリーモデルはいったん市場から消えたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…