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■量産初の電気自動車i-MiEVに続いた軽商用ミニキャブMiEV
2011(平成23)年12月8日、三菱自動車は軽商用電気自動車「MINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ)の発売を始めた。「ミニキャブMiEV」は、「ミニキャブバン」をベースにして、前年に発売された「i-MiEV」で得られた技術をを生かして開発されたのだ。
軽自動車i(アイ)をベースにしたi-MiEV誕生
三菱は、世界に先駆け量産車初のEVとなるi-MiEVを2010年に発売した。ベースとなった2006年にデビューした軽自動車の「i(アイ)」は、近未来的なタマゴ型のフォルムとMRレイアウトが特徴の革新的な軽自動車だったが、軽自動車としては贅沢な仕様で価格も高かったことから、販売は期待したほど伸びなかった。
i-MiEVは、iのミッドシップされたエンジンの代わりに、最高出力47kW(64PS)/最大トルク180Nm(18.4kgm)を発生するモーターを搭載し、200kgを超える16kWhのリチウムイオン電池は床下に搭載された。
モーターのトルクバンドが広い特性を利用してトランスミッションを使わず、モーター回転を減速する減速ギアとディファレンシャルギアを一体化したギアボックスを介して、後輪駆動で走行。バッテリーの搭載によって車重が1100kgほどあったi-MiEVだが、EVらしい優れたレスポンスと力強い加速で、ガソリンターボ車を上回る動力性能を発揮した。
満充電時の航続距離は160km(10・15モード)で日常ユースには充分だったが、一方でエアコンを使用したり、高速走行を続けると100kmを切ることが多く、ユーザーの一部からは不満の声も聞かれた。
国内初となる軽商用EVのミニキャブMiEV誕生
ミニキャブは、まず1966年にトラックがデビューし、1968年にバンが誕生した。以降、農家や街中の小売業者の足として人気を獲得。2014年の7代目以降は自社開発を止め、スズキ「エブリイ」のOEM車となったが、2024年現在も販売は続けられている。
EV化されたのは、1999年に発売された6代目ミニキャブバンである。これをベースにして、i-MiEVで得られたEV技術やノウハウを生かしてミニキャブMiEVは開発された。
ラインナップは、リチウムイオン電池容量の異なる2種を用意。バッテリー容量10.5kWh(満充電航続距離100km:JC08モード)と、バッテリー容量16.0kWh(航続距離150km)である。モーターは30kW(41ps)/最大トルク196Nm(20kgm)だが、乗用車のi-MiEVより商用車としての使われ方を重視した低速出力を上げたセッティングになっている。
EVらしく力強い走りが実現され、使い勝手はベースのガソリン商用車と遜色なく、最大積載量も350kgと同等である。農家や小売業者の足として活躍する商用車は、概ね1日の走行距離が100kmに満たないことが多いことから、バッテリー容量の小さい10.5kWh使用でも問題なく使えるとされている。
2シーターの車両価格は、10.5kWh仕様が240万円(補助金交付後173万円)、16.0kWh仕様が295万円(補助金交付後202万円)である。
2014年には、「ミニキャブMiEVトラック」も発売されたが、最も販売台数が多かったのが2012年の約2500台、その後は数百台まで落ち込むこともあり、2021年3月にいったん生産を終えた。
ミニキャブMiEV復活、ホンダも参戦
ところが、およそ1年半後の2022年に三菱は「ミニキャブMiEV」の再販を発表した。
復活を遂げたミニキャブMiEVは、バッテリー容量を16kWh→20kWhに向上させて航続距離を150km→180km(WLTCモード)に改善。廉価仕様を廃止して、車両価格は243.1万円(2シーター)/248.6万円(4シーター)に設定された。
一方、ホンダは2024年10月に軽商用EV「N-NAN e:」の発売を始めた。バッテリー容量は、29.6kWh、満充電航続距離は245kmで、車両価格は269.9万円~291.9万円に設定。ミニキャブMiEVより大容量のリチウムイオン電池を搭載し、価格は25万円ほど高額となっている。
基本的には、航続距離はバッテリー容量の大きさで決まる。ざっくり言えば、EVの航続距離をどれくらいに設定するかで車両価格が決まってくるのだ。
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当初の計画よりも遅れているようだが、トヨタとスズキ、ダイハツ3社が計画している軽商用EVも発売されるようだ。安定した売れ筋の軽商用車、今後EV化による激戦が予想される。
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