目次
時代の名車探訪・初代ソアラ編の第3回は、同車の内装を見ていく。
いきなりヘンだが、スタートはドア内張りの、どでかいアップの写真から。
★マーク付きは、当時の資料などでの呼称です。
80年代の幕開けに現れたトヨタの走る技術のショールーム・初代ソアラを再検証【時代の名車探訪 No.1-1 トヨタソアラ・GZ10/MZ11型・1981年(昭和56)年・概要&外観編】1
【ドア内張り】
いまのクルマは内張り全体を樹脂成形し、部分部分にパッドなりスイッチなり据え付けている。この頃のクルマは全体がパッド仕立てにした上に必要なものを取り付けている。下3分の1なんてフロアと同じカーペット張り・・・率直に申し上げて、見た目の造りこみ感はこの時代のもののほうが上だ。
1.プルハンドル
この頃はトヨタ車も日産車も、なぜか高級車になると長距離バスの前席背面にあるグリップのような形のプルハンドルを別に用意していた。
2.★ドアアームレスト内蔵集中スイッチ
・・・と、カタログでは総称している。内訳は次のとおりだ。
①★タルボ型電動式リモコンフェンダーミラー
②★ワンタッチ式パワーウインドウ
正確にはそれらのスイッチだ。設置場所がひとくくりになっているので解説もここでまとめて。
くの字型アームレストの斜面いちばん上にフェンダーミラー調整用の電動リモコンスイッチがある。
ミラーのリモコン調整は、ドアミラーなんかより遠い位置にあるフェンダーミラーだからこそありがたみは大きい。
私もそうだが、幼少時に運転席の父ちゃんから「おい。あれ。」とだけいわれ、晴れの日も雨の日もフェンダーミラーの調整役を仰せつかった昭和時代の人、多いと思う。ミラーの電動化により、全国の子どもたちの負担が減ったのである。
このスイッチ、いま主流の、上下左右を押す平板状になっているが、この形状には意味があり、鏡面を指で押すイメージをそのままスイッチの形にしている・・・実はこの形状を最初に採り入れたのは初代ソアラなのだ。
その下にはパワーウインドウのスイッチがある。
2ドアだけにスイッチはふたつ。いまの押し引きではなく、シーソースイッチでガラスを昇降させる。運転席用はひと押しAUTOのワンタッチスイッチに、助手席と同じ形の手動スイッチを内包している。
③★電磁式ドアロックスイッチ
さらに下にはドアロックスイッチが。これは通常ならドア肩口かインナーハンドルに併設されるスイッチをここに置いたもの。このノブを操作すると助手席ドアもロックされる集中式だ。
3.ドアインナーハンドル
こいつを指先で引き上げてドアを開ける。変わった形をしているが、もともとは初代センチュリーで始め、いったんソアラ(この初代だけ)に横展開、その後2代目センチュリーをはさんでいまの3代目センチュリー(のセダン型のほう)までずっと続けている方式だ。確か最初のカリーナEDもこの形じゃなかったっけ?
助手席ドアも対称しているが、それでいて通常タイプのものもある。どこかというと、その助手席ドアの後端側。後席側からもドアが開けられるようにという親切心からだ。助手席乗員が不在で後席にひとがいるシチュエーションがどれほどあるかわからないが、私がいま使っている旧ジムニーシエラにも、後席でひとり何かの作業をするときなど、あればいいと思うことがある。
4.アームレスト
幅が細い気がするが、成形されたアームレストがある。前記プルハンドルがあるにもかかわらず、ここにも指を入れてドアを閉めるための穴がある。
5.★カーテシランプ
ドアを開けて点灯、閉めて消灯。高級車寄りのクルマにはたいていこのランプがついていた。夜間、後方の車両などにドア開を知らせると同時に、足元を照明する。
このランプの点消灯を司るカーテシスイッチは、イルミネーテッドエントリー作動のきっかけになってはいるが、カーテシランプそのものはイルミネーテッドエントリーの仲間に入っていない。
【シート】
・前席シート
表皮をボタンで留めたり飾ったりするソファ(「ボタンソファ」というらしい)のようなデザインをしている。かつてのクラウン、マークII、セドリック/グロリア、ローレルあたりのクルマでよく見かけたが、いまは流行らないのか、めっきり見なくなった。
運転席シートの調整機構は多彩で、前後スライド(15mm刻みで195mm)、上下アジャスト、リクライニング、ランバーサポート、ヘッドレスト前後の5つ。
★上下アジャスター
シートサイド前側にあるレバーを上げ、座面前部を3段階に高さ調整する。
★メモリー付リクライニング
リクライニングは、シートサイド後部のレバーで、2度刻みで27段階調整できる。
便利なのはメモリー機構付であることで(運転席のみ)、任意に決めた背もたれ角を記憶し、後席乗員の乗降などで前倒しした背もたれを再度起こすとき、自動的に元の角度で止まってくれる。写真にはないが、そのためのレバーは、背もたれ下のドア側にある。
★空気式ランバーサポート
撮影車・GT-EXTRAには、日本初のエア式ランバーサポートを備えている。背もたれ腰部に横向きのエアバッグを内蔵、座面左脇の手動ポンプで空気を充填する(撮影車にポンプの握りは欠品)。背もたれサイド3つの減圧ボタンで個々を好みの張り出し具合になるまで減圧して使用するというものだ。圧力ばかりか、押し出し位置の高さ調整までできるようになっている。
★前後調整付ヘッドレスト(フロント)
以前、私が使っていた日産ティーダの前席シートは不出来だった! 背もたれ上部が反り返ったところにヘッドレストが刺さっていたため、適正な運転姿勢をとっても後頭部とヘッドレストが接触しないのだ。背もたれを起こし気味にしてだましだまし座ってもだめ。結局カー用品店でほどよい柔らかさのクッションを取りつけたが、あのときヘッドレストが前後調整できたらとどれほど思ったことか。
というわけで、ソアラには運転席、助手席ともヘッドレストに前後調整機能がついている。調整幅は3段階で、前後にスライドしてくれる。かつてはカローラクラスにもついていた。体格のカバーは座面&背もたれ形状で何とかするとして、せめてヘッドレストの角度や前後位置の調整くらいはいまのどのクルマででもできるようにしてほしい。
・3点式ELRシートベルト
ELRとは「Emergency Locking Retractor:緊急時固定式巻取り」の略で、通常時は自在に伸縮して乗員の上半身をフリーにするが、万一のときの衝撃によるGを感知するとその位置で緊急ロックされ、乗員を拘束する。
上級機種の運転席は、平素は巻き取り方向に加わる力を軽減する電気式テンションリデューサー付きだ。
コスト削減徹底主義のいまならぜったい現れないだろうなと思うのがシートベルトのベルト(といういい方は変だが)。内装色に合わせてベルト色を変えることはあっても、車名を記すなんてことは誰もしないだろう。
このソアラは何と「SOARER」の文字が斜めに無数に刻まれている。しかも表裏両面に! 実際には車両ごとに長さなどを変えているだろうからもともと共通化はできないだろうが、例えば同じプラットホームを持つ2代目セリカXXと共通化させようなんてことは絶対できない相談だ。
・後席シート
ボタン留めはこちらも同じ。見た目にもフッカフカという感じのクッションが、リヤスペースにいっぱい、ギューッと押し込まれるように据え付けられている。むしろこちらのほうこそボタンソファと呼ぶにふさわしい。
私は、クルマの黒の内装色は火事の焼け跡みたいで嫌いなので、このソアラの内装カラーは実に好ましく思っている。見ようではホテルのラウンジみたいな雰囲気があるが、これまた見ようではじいさんの猿股に見えなくもない。
・センターアームレスト
大衆車ユーザー羨望の的、後席のアームレスト! 先端のタグで引っ張り出して使用し、肘を置けばこれまた高級ホテルのラウンジ感覚を味わうことができる・・・と、貧乏人感覚で記しておこう。
内装編ではあるが、今回はドア内張り、シートといった大もの部品の紹介に終始した。
次回も続けて内装編3とし、たぶんみなさんがいちばん楽しみにする初代ソアラの室内各所の先進装備をご紹介していく。
また次回、お逢いしましょう。
【撮影車スペック】
トヨタソアラ 2800 GT-EXTRA(MZ11型・1981(昭和56)年型・OD付4段フルオートマチック)
●全長×全幅×全高:4655×1695×1360mm ●ホイールベース:2660mm ●トレッド前/後:1440/1450mm ●最低地上高:165mm ●車両重量:1305kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.5m ●燃費:8.1km/L(10モード燃費)、15.5km/L(60km/h定地走行燃費) ●タイヤサイズ:195/70HR14ミシュラン ●エンジン:5M-GEU型・水冷直列6気筒DOHC ●総排気量:2759cc ●圧縮比:8.8 ●最高出力:170ps/5600rpm ●最大トルク:24.0kgm/4400rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:61L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:ストラット式コイルスプリング/セミトレーリングアーム式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:293万8000円(当時・東京価格)