待ってたぜ! 日産フェアレディZがオーダー受け付けを再開。手に入れるなら今だ!!【東京オートサロン2025】

日産は2024年11月8日、フェアレディZの2025年モデルを発表し、同月下旬には2年以上停止していた新規受注を再開。新年2025年1月10〜12日に幕張メッセで開催された「東京オートサロン2025」では、新設定色のワンガンブルーをまとった2025年モデルの北米仕様が公開され、2025年度生産分受注開始のニュースに花を添えた。そこで今回は、オートサロンの現場で様々な関係者から語られた、現行RZ34型フェアレディZの魅力を改めて振り返るとともに、気になる今後の販売動向についてもレポートしたい。

REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●井上 誠(INOUE Makoto)

フェアレディZの2025年モデルは「ワンガンブルー」など新色が多数登場

3年前の2022年1月に開催された東京オートサロンが、日本仕様デビューの晴れ舞台となった、現行RZ34型フェアレディZ(以下RZ34)。瞬く間にその人気は沸騰して販売店へのオーダーが殺到、その数が生産キャパシティを大きく上回ったため、2022年8月より2年以上の長きにわたり、やむをえず新規受注を停止していた。

しかし、日産は2024年11月8日に2025年モデルを発表すると、同月下旬には2024年度生産分の受注を再開。そして東京オートサロン2025の開幕前日、2025年1月9日より、2025年度生産分の新規受注を開始した。そう、ついにスポーツカーファンがRZ34を手に入れられる環境が整ったというわけだ。

「欲しいのに手に入らない…」という声が多く聞こえてきたRZ34。新規注文受付開始のニュースは、購入予備軍にとっては吉報だ。

その2025年モデルは「SOSコール」が全車標準装備されるとともに、ボディカラーが一部変更されたのが大きな目玉。現行R35型GT-Rの2020年モデルより設定されている「ワンガンブルー」がRZ34のラインナップにも加わり、東京オートサロン2025の日産ブースでは多くの来場者から熱い視線を浴びていた。

「ワンガンブルー」はR34型GT-Rに採用されていたベイサイドブルーへのオマージュとして誕生した色。青色の透明ベースに光干渉顔料(シリカフレーク)を追加することで、ベイエリアでの日没の余韻を感じさせるミステリアスな色の変化を愉しめる。

東京オートサロン2025に出展されたフェアレディZの2025年モデル(北米仕様)。新色のワンガンブルーは、既存色のセイランブルーよりも鮮やかな印象を受ける。
セイランブルーがブラックルーフの2トーンだったのに対して、ワンガンブルーはルーフもボディ同色になったのが特徴で、RZ34のスリークなエクステリアがより際立つようになった。
RZ34の心臓部、VR30DDTTエンジンは最高出力405PS/6400rpm、最大トルク475Nm/1600-5600rpmを発生。圧倒的なパワーはもちろんだが、ドライバーの意思を即座に反映するレスポンスの良さも持ち味だ。

そのほかにもRZ34ではR33型スカイラインGT-Rをルーツとする「ミッドナイトパープル」に加え、「バイブラントレッド/スーパーブラック 2トーン」、「ブリリアントホワイトパール/スーパーブラック 2トーン」を新たに設定。2024年モデルから追加された「432オレンジ」ともども、RZ34の流麗なフォルムを一層際立たせるボディカラーとして注目を集めそうだ。

ボディカラー:ミッドナイトパープル/R33型スカイラインGT-Rのイメージカラーとして登場。また、R34型スカイラインGT-Rでは見る角度によって色が変化する「ミッドナイトパープルII」が300台限定で設定された。R35型GT-Rにも「T-spec 専用色」として用意されるなど「GT-R」を象徴する色のひとつだが、ご覧のとおり、RZ34とのマッチングも上々だ。
ボディカラー:バイブラントレッド/スーパーブラック 2トーン
ボディカラー:ブリリアントホワイトパール/スーパーブラック 2トーン
ボディカラー:432オレンジ

RZ34の生みの親がトークショーで明かした開発秘話

今年の東京オートサロンでは、RZ34の開発を指揮した現日産自動車ブランドアンバサダーの田村宏志さんがトークショーに登壇。そこで改めて語られたRZ34の開発コンセプトとターゲットユーザーは、極めて明確だ。

「『カッコよくて! ハヤくて! イイおと!』というスポーツカーの基本をしっかり備えていること。そして、もっと大事なことは、歴代Zのお客様が『これがZだよね。こんなZが欲しかったんだよ』と思ってもらえるところを最も強く打ち出すこと」

東京オートサロン2025の日産ブースでは、「フェアレディZ開発秘話トークショー」が行なわれ、連日、多くのZファンが駆けつけた。
GT-R、RZ34の企画責任者を経て、現在はブランド・アンバサダーを務める田村宏志さん。日産のスポーツカーを知り尽くした男であり、もし田村さんがいなければ、フェアレディZの系譜は途絶えていたかもしれない。若かりし頃、初代フェアレディZ(240ZG)を所有していたこともある。

7代・56年もの歴史を持つフェアレディZは、世界累計販売台数が180万台を超えており、世界中に熱狂的なファンが数多く存在する。そして、歴代Zが培ってきたヘリテージが無数にあり、それらが揺るぎなき「Zらしさ」を形作っている。

大排気量FRスポーツカーの王道といえる、ロングノーズ・ショートデッキ・ファストバックのプロポーション。動物のクラウチングスタートを連想させる、力強くふくよかなリヤフェンダー。

RZ34では、今なおZオーナーの6割以上が一番好きという初代S30型から続いている、そうした歴代フェアレディZの流麗なシルエットを色濃く継承。さらに、ヘッドランプではS30型「240ZG」などに装着されていたレンズカバーへの光の映り込みをイメージしたデイライト、リヤコンビランプでは4代目Z32型のダブルリングを、「オマージュ感たっぷりに作り込んだ」(田村さん)。

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S30の象徴的なシルエット、ロングノーズ・ショートデッキをRZ34でも継承。

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野生動物の躍動感を再現したかのような隆起したリヤフェンダー。

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RZ34のデイライトのモチーフは、S30のレンズカバーに映り込む光のリフレクション。

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「待ってたぜ! 日産フェアレディZがオーダー受け付けを再開。手に入れるなら今だ!!【東京オートサロン2025】」の4枚めの画像
テールランプは、S30に次いで人気があるというZ32がモチーフ。LEDを用いた線発光とすることで先進的なイメージも付与。

松田次生選手はレースでもプライベートでもRZ34に惚れ込む

そんなRZ34の開発にも携わり、自身も歴代フェアレディZを乗り継いでいるNISMOドライバーの松田次生選手は、そのデザインを「今のクルマのデザインは凝りすぎているけど、RZ34はシンプル。しかもS30のシルエットに近いので、初めて見た時に惚れましたね」と絶賛している。

ちなみに松田選手は、スーパーGT GT500クラスのレーシングドライバーであると同時に、無類のクルマ好き。双方の感性を兼ね備えている存在として、RZ34のメーター開発にも参画した。

レーシングドライバーの顔だけでなく、大のクルマ好きとしても知られる松田次生選手。S30、Z33、Z34、RZ34を所有しており、RZ34は1年で2万km以上の距離を刻むという。

松田選手はアナログ式のタコメーターを中心に置き、かつレッドゾーンの起点を真上(12時)に配置。さらにその上にシフトアップインディケーターを配置することで、シフトアップのタイミングを取りやすくすることを提案。さらに、サーキット走行時に厳しくなる水温と油温を確認できるよう水温計と油温計、またVR30DDTT型3.0LV6ツインターボエンジンを新たに搭載したのに合わせてブースト計を追加したのも、松田選手のアイデアだ。

「コクピット」と呼びたくなる、スポーツカーらしく囲まれ感の強い運転席。座るたびに走る気持ちを掻き立ててくれる。なお、展示車は北米仕様のため、左ハンドルとなっている。
「スポーツカーはドライバー目線での開発が必要」という田村さんの考えに基づき、松田さんにメーターの開発協力を依頼。写真はその際に松田さんが描いたイラスト。松田さんにとっては、指針式タコメーターのレッドゾーンが真上にあること、そこに針が到達したと同時にシフトアップランプが光ること、水温計/油温計/ブースト計があることが必須条件だった。
…そんなプロセスを経てでき上がったRZ34のメーター(12.3インチ液晶カラーディスプレイ)。メーター上部にデジタルの速度表示とギヤインジケーターが配置され、必要な情報が集約されているのも松田選手のこだわりだ。(画像は北米仕様)

フェアレディZ NISMOは1000台の抽選申込を1月31日まで受付中

さて、2024年モデルより追加された高性能バージョン「NISMO」だが、こちらは2024年度生産分500台を対象としたメーカー抽選を2024年12月に実施済み。2025年度生産分1000台については、2025年1月31日まで抽選申込を受け付けている。購入を希望される方は、このチャンスをお見逃しなく。

田村さん曰く、フェアレディZ NISMOのコンセプトは「バディー・オン・トラック(Buddy on Track)」。サーキットやトラックでの相棒、という意味だが、決して優雅さは犠牲にしないのが「フェアレディ」らしさだ。

フェアレディZ NISMOは専用チューニングによって、エンジンの最高出力を基準車から+15PSの420PSに、最大トルクを+45Nmの520Nmまでスープアップ。さらに9速ATは変速レスポンスと耐久性の向上が図られたほか、ステアリングとボディのねじり剛性アップ、「トラクション」モードの新設定、専用ブレーキシステムの採用などにより、本格的なスポーツ走行に応えるポテンシャルが与えられている。

そして、数々の専用パーツで彩られたエクステリアもフェアレディZ NISMOの魅力だ。フェアレディZ以外のモデルも含むNISMO各車のデザインを統括する森田充儀さんは、「NISMOモデルには『情緒』ありきでなく、『性能の向上』を目的とした理論的裏付けのある機能を伴うデザインを与えています」と、明確にその違いを説明。空気抵抗を極力増やさずにダウンフォースを増大させる専用エクステリアを備えることで、スタビリティを向上させるのがNISMO流といえる。

NISMOのロードカーのデザインを統括する森田充儀さん(グローバルデザイン本部 アドバンスドデザイン部 主管)。

その中でRZ34型のフェアレディZ NISMOは、初代S30の中でも「Gノーズ」と前後オーバーフェンダーがレーシーな装いで人気が高い240ZGをモチーフに、前後オーバーハングとトレッドを拡大。ダックテール型のリヤスポイラーも基準車より大型かつリヤフェンダーにまでまたがった三分割構造として、空力性能を向上させている。

ノーズ先端を前方に25mm、下方に40mmほど延長するとともにバンパーを逆スラントさせることで、ラジエターへの空気導入量を向上。サイドへの流れも考慮し、カナードの効果を最大化。
リヤバンパーはサイドに張り出させ、走行風を綺麗に剥離させることでCd値を低減。また、整流効果を高めるために大型化され、3分割となったリヤスポイラーもNISMO専用となっている。

だが、車名に「フェアレディ」(=貴婦人)を冠する以上、GT-Rのように機能を徹底的に追求するだけではなく、美しさも兼ね備えていなければならない。そのため基準車の開発が始まったわずか3ヵ月後にNISMOの開発もスタートさせ、空力エンジニアとも密接に連携しながら、NISMO専用のエクステリアを構築していったそうだ。

また、現在のNISMO各車の戦略色とされているボディカラー「NISMOステルスグレー」にも、特別なこだわりが込められている。というのも、基準車にも「ステルスグレー」というボディカラーが設定されているのだが、こちらはパール顔料入り。だが「NISMOステルスグレー」は「加飾的要素を排除して機能を研ぎ澄ませた(森田さん)」NISMOデザインを象徴するボディカラーとして、あえてソリッド色としている。

こちらは基準車の「ステルスグレー/スーパーブラック 2トーン」。名前は似ていても、「NISMOステルスグレー」とは見た目の印象はかなり異なる。

加えて、レーシングテクノロジーを血統に持つNISMOが最も映える環境であるサーキットのシーンで、「路面のグレーよりも青く、青空よりもグレーに見える色相」(森田さん)として開発。非常にストイックでメカニカルな色なので、「男性には人気でも女性の反応はどうか」と当初は心配だったそうだが、女性からもその無機質さが「可愛い、お洒落」と好評価を得ており、今やNISMO全体の新車販売における約5割がこの「NISMOステルスグレー」なのだという。

GT-Rはモビルスーツ、フェアレディZはダンスパートナー

そして、RZ34型フェアレディZは基準車であれNISMOであれ、速さをある程度大事にしつつも、デザインや走りの楽しさをより重視。駆動方式は4WDではなくFRを堅持したほか、今や効率だけ考えれば確実に勝っている9速ATのみならず、3ペダルの6速MTもあえて残し、ドライバーが操る余地を大事にしている。

それもまた、GT-Rの「モビルスーツ」に対しフェアレディZは「ダンスパートナー」と、両車の開発を手がけた田村さんが自ら表現する、RZ34ならではの魅力であることは間違いない。

RZ34では6速MTも選択が可能。プリミティブなクルマを操る楽しさ、という面ではやはりマニュアルトランスミッションに軍配が上がる(松田さんのRZ34も6速MTだとか)。
ダッシュボードの三連メーターもZのセオリー。日本仕様のRZ34では左から電圧、ターボ回転数、ブースト圧が並ぶ。
シートにはレースで培われたノウハウも取り入れ、身体の接触面積を広く取って上半身のぶれを抑制。とはいえタイト過ぎず、ロングドライブにも応える程よいホールド感を備える。
足まわりはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤがマルチリンク。モノチューブダンパーの採用により、操安性と乗り心地の両面を高度にバランスさせている。

ところで、念願の受注再開が叶った2025年モデルだが、果たして今度こそ、欲しい人が本当に購入できるのだろうか? マーケティングを担当する笠井康弘さんと木村龍哉さんに聞くと、頼もしい言葉が返ってきた。

「フェアレディZは想定以上の受注をいただいたことで長納期化し、大変ご迷惑をおかけして参りましたが、部品の供給が改善したため、ようやくバックオーダー解消の目処がつきました。また生産能力を増強し、より短期間でお客様にお届けできる体制を整えております」

2025年度内生産分を注文できれば、遅くとも2026年3月までには生産され、その後の登録手続きや納車前整備を経て手元に届くと考えてよさそう。ダンスパートナーとお手合わせ願えるときが来るのが、今から待ち遠しい。

日産自動車・日本マーケティング本部の笠井康弘さん(左)と木村龍哉さん(右)。

日産フェアレディZ・ラインナップ

フェアレディZ 549万7800円(6速MT)/549万7800円(9速AT)
フェアレディZ Version T 595万9800円(6速AT)
フェアレディZ Version S 634万7000円(6速MT)
フェアレディZ Version ST 675万9500円(6速MT)/675万9500円(9速AT)
フェアレディZ NISMO 930万2700円(9速AT)

日産自動車ホームページ フェアレディZ Webカタログ https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/z.html

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著者プロフィール

遠藤正賢 近影

遠藤正賢

1977年生まれ。神奈川県横浜市出身。2001年早稲田大学商学部卒業後、自動車ディーラー営業、国産新車誌編…