デビューから12年で生産終了

ヤマハ発動機は、2014年に発売された初代「TRICITY125(トリシティ125)」を皮切りに、フロント2輪という独自の機構を持つLMW(リーニング・マルチ・ホイール)モデルを精力的に展開してきた。しかし、同社は2026年をもって、トリシティ全モデルの国内生産を終了することを決定した。

「トリシティ155」および「トリシティ125」に関しては、2025年に発売以来初となる外観スタイリングの大幅な刷新が行われたばかりである。プロダクトサイクルとして円熟期を迎え、さらなる普及が期待されていた矢先の生産終了発表は、既存のファンのみならず、多くの二輪ユーザーにとって極めて衝撃的なニュースとなった。

進化を遂げた最終モデルの特長

最新の「トリシティ155/125」には、単なる移動手段を超えた付加価値が数多く盛り込まれている。

スタイリングの刷新: SUVのエッセンスを随所に散りばめ、より力強く現代的なデザインへと変貌を遂げた。

コネクティビティの向上: スマートフォン連携機能を備えた4.2インチTFTディスプレイを新たに採用。

利便性と安全性の追求: USB Type-C端子に対応した充電ソケットの装備に加え、緊急制動を後続に知らせるESS(エマージェンシーストップシグナル)や、滑りやすい路面での安定性を高めるTCS(トラクションコントロールシステム)を導入し、都市型コミューターとしての完成度を極限まで高めている。

LMWテクノロジーの本質とその終焉

左からトリシティ300、NIKEN GT、トリシティ155

ここで改めてLMWテクノロジーについて定義すれば、それはフロント2輪・リア1輪の構造を持ち、コーナリング時にフロントの2輪が車体と同調して傾斜旋回する、3輪以上の車両の総称である。この機構は、圧倒的な接地感と転倒しにくい安定性を提供し、二輪車の概念を大きく変える画期的な技術であった。

しかし、2018年に登場し世界を驚かせた大型スポーツLMW「NIKEN(NIKEN GT)」が、すでに2024年をもって日本市場から姿を消している事実を鑑みれば、今回の「TRICITY300/155/125」全ラインナップの国内生産終了は、ヤマハのLMW戦略における大きな転換点、あるいはひとつの時代の終焉を意味していると言わざるを得ない。

今後の流通状況に目を向けると、「トリシティ300」についてはすでに生産を終了しており、現在販売店の店頭にある在庫分が最後の一台となる見込みである。また、「トリシティ125」についても2026年夏、「トリシティ155」も2026年秋をもって生産の幕を閉じることが確定している。

独創的な技術が生んだ比類なき乗り味が、新車として手に入らなくなる日は刻一刻と近づいているのである。