価格差は約100万円!? パワー差は140馬力!? 初代スバル・インプレッサのリトナとWRXを比べて見た!! 【リトナ誕生30年目の再検証】

GC型と称される初代インプレッサ(セダン・クーペ)のトップモデルが世界ラリー選手権や国内での競技ユースを前提としたWRXであることは言うまでもない。しかし、WRXを頂点としつつも1.5Lクラスのベーシックカーとして幅広いモデルとグレードを展開したのもまた事実であり、クーペのリトナは最もベーシックなモデルの1台だ。そこで、そのリトナと頂点であるWRXをあえて比べてみた。
REPORT:井元貴幸(IMOTO Takayuki) PHOTO:MotorFan.jp/SUBARU 取材協力:@BOXER_GrA_GC8

リトナとWRX……1.5Lでも2.0Lターボでも骨格は基本的に同じ?

インプレッサ・リトナ

1990年代に一世を風靡したセクレタリーカーというカテゴリーに参入するため、スバルが投入したインプレッサ リトナ。シンプルで軽量というパッケージにより生み出される軽快な走りは、現代のモデルでは味わえない初代インプレッサならではのフィーリングだった。

インプレッサ・リトナがどんなクルマだったかはこちらを参照。

初代インプレッサといえば、WRCの活躍の影響もあり、真っ先に連想するのはWRXシリーズだ。毎年改良を重ね、ライバルであるランサーエボリューションと鎬を削った戦いも注目を集めた。

インプレッサWRX(1993年WRC1000湖ラリー)
ランサーエボリューション(1993年サファリラリー)

3代目インプレッサまでは、こうした実用グレードとスポーツモデルであるWRXシリーズというラインナップだったこともあり、1.5Lエンジンを搭載するエントリーグレードでもシャシー性能はWRCで通用するものであったことが特徴だ。

リトナはFFモデルに1.5L SOHCのEJ15を、(パートタイム)4WDモデルに1.6L SOHCのEJ16を搭載。

ボディ剛性をはじめとした基本性能は同一ながら、エンジンのスペックや駆動系の違い、装備の差異で多彩なグレード展開を広げていたインプレッサ。改めて車種やグレードの整理が行われる現代において、トップグレードであるWRXとベーシックなエントリーモデルに近いリトナの違いを改めて見ていこう。

リトナ(左)とWRX(右)
リトナは4WDのGC4。取材車両のアプライドモデルはC型。
WRXは言わずと知れたGC8。取材車両のアプライドモデルは初期型のA。

リトナとWRX……エクステリアを比べてみる

インプレッサ・リトナ(アクティブレッド)
インプレッサWRX(ブラックマイカ)
インプレッサ・リトナ
インプレッサWRX

まずはエクステリアだが、セダンとクーペという違いはあれど、ホイールベースなど基本的なディメンションは同一。設定されているボディカラーも、ライトシルバーメタリックのみ同一カラーだが、リトナのアクティブレッドに対し、WRXにはヴィヴィアンレッドと微妙に異なる赤色だ。

インプレッサ・リトナ。フロントバンパー形状のためWRXより全長が10mm長い4350mm。
インプレッサWRXの全長は4340mm。

またリトナにはブラックマイカの設定が存在しない代わりに、スプラッシュグリーンメタリックという専用色が与えられる。

リトナのアクティブレッド(1995年)。
WRXのヴィヴィアンレッド(写真はスポーツワゴンWRX-STiバージョン/1994年)。
リトナのスプラッシュグリーンメタリック(1995年)。

デザインで大きく異なる部分でいえば、フロントバンパーとグリル、ボンネット。バンパーに関しては、WRXがスポーティな印象のデザインで標準装備となる丸型の大型フォグランプが入り、ラリーカーとしてのイメージも強い印象。一方のリトナはほかのNAモデルと同一のオーソドックスなデザイン。

インプレッサ・リトナのナンバープレートはバンパー上に設置。
インプレッサWRXはバンパーの開口部内に収まる。

フォグランプも異形の標準的なサイズで、ディーラーオプションとして当時の価格で、2万1000円で設定されているもの。フロントバンパーもWRX用のものが7万3500円でディーラーオプションとして装着が可能だったが、全長が変わるために車検証の記載変更が必要となるアイテムだった。

C型から登場したリトナのドアハンドルはボディ同色になっている。
A型のWRXは無塗装でブラックの樹脂地のまま。WRXもC型からはボディ同色になる。

リヤ周りではコンビランプのデザインはセダン、クーペ共に同一。リヤスポイラーは、一見同一形状に見えるが、WRXに標準装備されるものが大型タイプ、リトナに装着されるものがディーラーオプションの中型タイプと微妙に形状が異なるのがポイント。ちなみに大型タイプは6万円、中型タイプは5万9000円で設定されていた。

インプレッサ・リトナの全高はFFで1405mm、4WDで1415mm。
インプレッサWRXは4WDながらFFのリトナと同じ1405mm。
インプレッサ・リトナのリヤスポイラーはオプション。
インプレッサWRXに標準装備されるリヤスポイラー。

足元では登場初期のA型と呼ばれるWRXが15×6JJのアルミホイールが標準装備(C型と呼ばれる2度目の改良モデルからは16インチ)。リトナは13インチのスチールホイールにフルホイールカバーが標準装備となっていたが、撮影車にはディーラーオプションのディッシュタイプ14×5.5JJのホイールが装着されていた。

リトナ撮影車両のホイールはオプションの14インチ(14×5.5JJ)アルミホイールを装着。
WRXは15インチ(15×6JJ)アルミホイールが標準装備。

リトナとWRX……インテリアを比べてみる

インプレッサ・リトナのステアリングはウレタン。シフトノブには4WD切り替えスイッチがある。
インプレッサWRXはナルディのレザーステアリングとシフトノブが用意された。

インテリアでは撮影車のリトナには限定車のVリミテッド用が装着されているが、標準シートはサポートも控えめなオーソドックスなシートが装着されている。ステアリングはWRXもリトナも3本スポークではあるが、ウレタンと本革という素材の違いはもちろん、WRXにはシフトノブと併せてナルディ製がおごられる。

インプレッサ・リトナ。センターコンソールボックスも省略され、コイントレーとオープントレーを設置。
インプレッサWRXはトップグレードらしくセンターコンソールボックスを装備。

ダッシュボード形状などは同一ながら、WRXにはオートエアコンを装備。リトナにはマニュアルエアコンが標準となる。メーターパネルも基本デザインが同一ながら、指針がWRXでは赤、リトナは白とキャラクターに合わせた細かな違いがみられる。

リトナのマニュアルエアコン。
WRXのオートエアコン。
リトナのメーター。レイアウトはWRXと共通だが、タコメーターは8000rpmまででレッドゾーンは6250rpm(WRXは9000rpmの7000rpm)と控えめ。
WRXのメーター。メーター左下にはリトナにはないフォグランプとインタークーラーウォータースプレーのスイッチがある。

装備面ではWRXは4スピーカー、リトナはフロントドア左右のみの2スピーカーの設定。また、リトナはAWDモデルでもリヤワイパーが装備されない。のちに発売されたWRX STiバージョン タイプRには装備されており、廉価グレードのため省略されていたようだ。

リトナのフロントいシート。撮影車両はVリミテッド用のシートを装着していた。
WRXのフロントシート。バケットタイプで、グレー地にレッド/ブラック模様が入る。
リトナのリヤシート。
WRXのリヤシート。
リトナはリヤワイパーレス。
WRXのリヤワイパー。
リトナのトランク。リヤワイパーが無いのでリヤウォッシャー用のタンクもなく、給水口は塞がれている。
WRXのトランク。リヤワイパー用のウォッシャータンクが右側にあり、リトナにはない給水口のキャップが見える。
全くの余談ではあるが、WRXの撮影車両にはオプションの三菱電機製空気清浄機が装着されていた。当時どれだけのオーナーが装着して、現在どれだけ残っているのか……かなりレアな装備なのは間違いない。

比ぶべくもないが軽快さはまさしくインプレッサ

実際の走りの性能においては、400cc+ターボの差は大きく、WRXとリトナでは140psの差があるが、前回の試乗記でも記した通り、1080kgという車重のおかげか、たった100psで軽快に走るリトナは、まさに思わぬ伏兵感が強い(笑)

WRX譲りのしっかりとしたボディとシンプルゆえの軽さのおかげでエントリーグレードであることを感じさせない軽快な走りを味わえるリトナ。

もちろん、WRXはリトナよりも120kgほど車両重量があるものの、その名に恥じぬ圧倒的なパワーと道を選ばない気持ちの良いコーナリングや、安定感はリトナにはないアドバンテージといえる。

現代でも240psといえばかなりのハイパワーなモデルであり、そこへ1200kgという軽量ボディの組み合わせで、最近のクルマでは味わえない強烈なパワー感と軽快な走りが魅力である。

リトナのEJ16型1.6L水平対向4気筒SOHC16バルブエンジンは100ps/6000rpm・14.1kgm/4500rpm。
WRXのEJ20(G)型2.0L水平対向4気筒DOHCインタークーラーターボエンジンは240ps/6000rpm・31.0kgm/5000rpm。
リトナの下まわりをフロントから見る。排気系のレイアウトはWRXに比べるとシンプル。
WRXはターボ(写真右寄りに配置)なので排気系の配管が複雑になっている。
リトナの下まわりをリヤから見る。
WRXにはリトナには無いスタビライザーが追加されている。

現代の衝突安全基準や環境性能を踏まえると、初代インプレッサWRXのようなモデルの登場は難しいといえる。それだけに困難な環境の中、スバルファンが歓喜するようなモデルの登場に期待したい。

車名・グレードインプレッサ・リトナ(1.5)インプレッサ・リトナ(1.6)インプレッサWRXセダン
型式GC1GC4GC8
全長4350mm4350mm4340mm
全幅1690mm1690mm1690mm
全高1405mm1415mm1405mm
ホイールベース2520mm2520mm2520mm
車両重量MT:1020kgMT:1080kg1220kg
AT:1060kgAT:1120kg
エンジンEJ15型EJ16型EJ20型
水平対向4気筒SOHC16バルブ水平対向4気筒SOHC16バルブ水平対向4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボ
排気量1493cc1597cc1994cc
最大出力97ps/6000rpm100ps/6000rpm240ps/6000rpm
最大トルク13.2kgm/4500rpm14.1kgm/4500rpm31.0kgm/5000rpm
タンク容量(燃料)50L(レギュラー)50L(レギュラー)60L(ハイオク)
トランスミッション5速MT/4速AT5速MT/4速AT5速MT
駆動方式FFMT :パートタイム4WDフルタイム4WD
AT:フルタイム4WD
サスペンション前:マクファーソンストラット前:マクファーソンストラット前:マクファーソンストラット
後:デュアルリンクストラット後:デュアルリンクストラット後:デュアルリンクストラット
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク前:ベンチレーテッドディスク前後:ベンチレーテッドディスク
後:ドラム後:ドラム
タイヤサイズ165SR13165SR13205/55R15
最小回転半径5.1m5.1m5.2m
新車価格(当時)MT:119万8000円MT:136万円229万8000円
AT:129万1000円AT:148万3000円
リトナは1995年モデル、WRXは1992年モデルの諸元

キーワードで検索する

著者プロフィール

井元 貴幸 近影

井元 貴幸

母親いわくママと発した次の言葉はパパではなくブーブだったという生まれながらのクルマ好き。中学生の時…