クルマを操る楽しみに浸れるRS「ホンダ・シビック」【最新国産新型車 車種別解説 HONDA CIVIC】

マイナーチェンジでファンならずとも待望のモデルの登場と注目を集めた「ホンダ・シビック」。標準モデルよりスポーティに、タイプRほどレーシーではなく、という走ることを楽しみたいドライバーにとって間違いなく心待ちにしてきた「RS」が追加された。全体としてもさらに洗練されたスタイリングと先進運転支援システムなどで大きく進化し、販売好調も納得。
REPORT:石井昌道(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:星香

MTは「RS」に一本化へ 足まわりなどは独自の味付け

11代目となる現行シビックが発表されたのは2021年8月。3年の時を経た24年9月にモデルサイクル半ばのマイナーチェンジが行なわれた。当初の月販目標は1000台だったが、今回は500台へと半減され、日本のセダン離れはまだ底づいていないことを実感させられるが、うれしいニュースでもある。

エクステリア

2024年のマイナーチェンジにおけるスタイリングの最大の特徴は、フロントバンパーの意匠が変更されたこと(全車とも刷新)。「RS」はホイール、シャークフィンアンテナ、リヤバンパー下部、そしてサイドウインドウの周囲などをブラック化。車高はハイブリッド車に対し5㎜低い。最小回転半径は5.7m。

今回のマイナーチェンジの目玉である新設の「RS」が発売から約1ヵ月で約2000台と好調で、しかも20代の若者が中心なのだ。従来から1.5ℓターボ+6速MTの仕様は存在し、貴重なMT車としてそれなりに人気があったが、よりドライビングが楽しめるようにと手が入れられたことで人気が急上昇した。シビック全体としてはフロントフェイスが端正なデザインとなり、ハイブリッドのe:HEVeはモノグレードから2グレードへ。また、Googleを搭載した9インチのホンダコネクトディスプレイが採用された。手持ちのスマートフォンのアプリなどもシームレスに使えることでより利便性が高くなっている。

乗降性

先進運転支援システムも進化し、急アクセル抑制機能の追加、衝突被害軽減ブレーキの機能・領域拡大などを受けている。昨今の傾向の通り、車両価格は約20万円上昇している。「RS」はヘッドライトリング、ドアミラーカバーをはじめ各部にブラック加飾が施され、車両前後に赤いRSのロゴが入るなどスポーティさを強調。エンジンはパワー&トルクこそ従来どおりなものの、慣性モーメント30%低減したシングルマス軽量フライホイールの採用で素早い回転落ちを実現。シフトチェンジ時のエンジン回転を自動制御するレブマッチシステムも採用された。サスペンションは専用セッティングでブレーキも大径化された。

インストルメントパネル

ハニカムネットの奥にエアコン吹き出し口を隠したダッシュボードはシンプルで好印象だ。空調操作の大型ダイヤルも使いやすい。パーキングブレーキは全車電動式となっている。「RS」は6速MTのみ設定。

MT車を運転する上でエンジンの回転落ちは確かに気になるものだ。最近の環境対応を施すとどうしても鈍くなりがちだが、新しい「RS」は回転落ちが素早く、シフトアップでもシフトダウンでも小気味良い。ブレーキを踏む必要はない高速コーナー入り口で、アクセルオフによる姿勢づくりもやりやすい。

居住性

コーナーでの振る舞いは明らかにスポーティだ。「RS」より上位に「タイプR」があるため、つい比較してしまいがちだが、街中から都市高速、ワインディングロードを適度に楽しむにはむしろ「RS」の方が向いている。ノーズが軽やかでスッスッとミズスマシのようにコーナーを駆け抜けていけるのが楽しい。ステアリングまわりの剛性感が高まったこともあってライントレースの正確性が高いのも「RS」の魅力だろう。1.5ℓターボの182PSというパワーもちょうどいい。タイトコーナーなどで姿勢を整えてから脱出へ向けてアクセルを踏み込んでいくと、軽くホイールスピンを誘発するぐらいで攻めている実感はあるものの手の内に収められている実感があるのだ。「タイプR」だと手に余ることがあるし、公道では非現実的なスピード域に達しないと、濃密な対話にはなりづらい。

うれしい装備

ラゲッジルームの床下収納は全車に採用するが、ガソリン車とハイブリッドで容量(深さ)が異なる。前者は深さが200㎜程あって42ℓという大容量。後者は底が浅くて5ℓに留まるが三角表示板などは収まる。
マイナーチェンジ発表     24年9月12日 
月間販売台数      1226台(24年6月~11月平均)
WLTCモード燃費    24.2km/ℓ ※e:HEV

ラゲッジルーム

乗る人すべてが爽快になる、というのが11代目シビックのコンセプトだが、「RS」のハンドリングの一体感の高さはまさに爽快そのものだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.165「2025年 最新国産新型車のすべて」の再構成です。

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