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■純粋にカッコよさを追求した第2弾WiLL VS
2001(平成13)年4月6日、トヨタから異業種プロジェクトWiLLシリーズ第2弾「WiLL VS」がデビューした。第1弾の“かぼちゃの馬車”をイメージした可愛い「Wil Vi(ウィル・ヴィアィ)」に対して一転、第2弾はステルス戦闘機をイメージしたスパルタンなスタイリングの尖ったモデルである。

異業種プロジェクトから生まれたWiLLシリーズ
WiLLプロジェクトは、トヨタが中心となって花王や松下電器、アサヒビール、近畿日本ツーリストと共同で進めた異業種プロジェクトで、20代~30代の若い層をターゲットにした魅力的な商品開発を推進する取り組み。そこで企画された新しいクルマづくり“WiLLシリーズ”の第1弾が「WiLL Vi(2000年~)」、続いて「WiLL VS(2001年~)」、第3弾が「WiLL CYPHA(サイファ)(2002年~)」だった。

WiLLシリーズのような個性的なデザインに特化したクルマは、“パイクカー”と呼ばれ、台数を狙った一般的な市販車とは異なる限定的なスペシャルカーである。1990年頃に日産自動車は、ミニクーパー風の「Be-1」、レトロなオフロード風「パオ」、懐かしいスポーツクーペ「フィガロ」といったレトロ調のパイクカーシリーズを投入して人気を集めた。




対するトヨタのWiLLシリーズは、レトロ調とは対照的な先鋭的で近未来的なデザインに特化したパイクカーである。
かぼちゃの馬車をイメージしたWiLL Vi

2000年にデビューした第1弾WiLL Viは、「ヴィッツ」のプラットフォームを利用した4ドアセダン。何よりもシンデレラ物語に出てくる“かぼちゃの馬車”をイメージしたような可愛くて奇抜なスタイルが特徴だった。

ハンドルやメーター、シフトノブなどの内装も、女性が好みそうなお洒落な造りとなっている。パワートレインは、1.3L直4 DOHCと4速ATの組み合わせ。ヴィッツよりも100kg近く重かったため走りは不満が残ったが、そもそも走りをウンヌンするようなクルマではない。
目論見通り、購入者の半数以上は20~30代の女性だったそうで、一方でスタイリング重視のクルマなので、取り回しが良くないという不満もあったようだ。Will Viは、誰が見ても可愛いと言われて注目されたが、それが販売には結びつかず、「パッソ」や「ヴィッツ」の登場とともに僅か2年の短命で幕を下ろした。
限定販売ではなかったが、もともと短期販売の計画だったのだろう。
WiLL Viに続いた、第2弾WiLL VS
WiLL Viに続いた第2弾が、2001年4月のこの日にデビューしたスパルタンなスタイリングが特徴のWiLL VSである。

Will VSは、「カローラ」をベースにした5ドアハッチバックスタイルで、全幅が170mmを超える3ナンバー登録だった。中央に尖ったフロントとリア、迫力あるツリ目のヘッドランプとリアコンビランプなど、平面で構成された近未来的なスタイリングが特徴だった。

米国のステルス戦闘機をイメージしていただけに、エクステリアだけでなくインテリについても、ステアリングホイールやメーター、シフトノブなどのインテリアも戦闘機のコクピットを意識した構成。また16インチタイヤを履き、足回りについてはマクファーソンストラット(前)、トーションビーム(後)のサスペンションは、スポーティな専用セッティングが施された。

パワートレインは、1.8L直4 DOHC VVT-iで、最高出力92ps(4WD)、100ps(2WD)、FFスポーツ仕様の140ps(FFスポーツ)の3種エンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFとビスカスカップリング式4WDが用意された。
車両価格は、175万円(2WD標準グレード)/190万円(4WDグレード)/201.5万円(2WDスポーツグレード)に設定された。

2002年にデビューした第3弾WiLL CYPHA(サイファ)は、個性的なスタイリングでディスプレイ一体型デザインに、当時最先端のテレマティクスシステム“トヨタG-BOOK”対応ナビを搭載していることが特徴だった。
2005年2月に、ヴィッツが2代目にモデルチェンジされたときに、サイファは販売を終了し、同時にWiLLプロジェクトも終焉を迎えた。
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異業種プロジェクトの成果は、WiLLシリーズの3台のクルマだったが、成果物以上に普段まったく交流機会のない異業種の若手技術者が、さまざまな意見を出し合い、話し合いの場が持てたことが何よりも大きな成果だったと思われる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。