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■センチュリーの前身となる大型高級車クラウン・エイト誕生
1964(昭和39)年4月20日、トヨタは2代目「クラウン」をベースに国産乗用車初のV8エンジン(2.6L)を搭載したひと回り大きな「クラウン・エイト」を発売した。米国車および欧州車の独占状態にあった官公庁や法人のための大型高級車、ショーファーカー市場に向けたモデルである。

国産ショーファーカーを目指した日産セドリック・スペシャル
1960年代、日本は高度経済成長期を迎えて、一般庶民にも手の届く純国産自動車が続々と登場し、日本のモータリーゼーションが幕開けた。

そのような中、米国車および欧州車の独占状態にあった政治家や会社幹部などを送迎する国産車のショーファーカーへの期待が寄せられた。ただ当時の日本メーカーでは、米国メ-カーや欧州メーカーのような大型高級車を製造する技術はなかったので、既存の高級車の拡大モデルで対応するしかなかった。

これに応えて最初に登場したのは、日産の「セドリック・スペシャル」で1963年に発売された。セドリック・スペシャルは、セドリックのホイールベースを205mm延ばした全長4855mmのボディに、最高出力115ps/最大トルク21kgmの2.8L直6エンジンを搭載。前後3人乗車の6人乗りで、高級織物で覆ったシートやパワーシート、パワーウインドウなどを装備し、その大きさと豪華さから日本初の大型高級乗用車と位置付けられている。



国産初のV8エンジン搭載の大型高級車クラウン・エイト登場
セドリック・スペシャルに対抗して、翌1964年にはトヨタから大型高級車「クラウン・エイト」がデビューした。

クラウン・エイトは、2代目クラウンをベースにして全長を+110mm、全幅を+150mm、ホイールベースを+50mm拡大し、そのボディサイズは4720/1845/1460mm(全長/全幅/全高)。ちなみにベースの2代目クラウンは、4610/1695/1465mmだった。
パワートレインは、最高出力115ps/最大トルク20kgmを発揮する国産乗用車初のアルミ製2.6L V8エンジンと、トヨタの独自開発によるトヨグライド2速ATの組み合わせで、最高速度150km/h、0-400m加速20.8秒の力強い走りを記録。さらに、パワーウインドウやオートヘッドライト、ドア自動ロック、熱線吸収ガラス、オプション設定でオートドライブ、パワーシートなど、高級車らしい装備も目を見張るものがあった。

車両価格は、大型高級車に相応しい165万円。これは1966年にデビューした「カローラ」の43.2万円の4倍近い設定であり、当時の大卒初任給は2.1万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約1807万円に相当する。

セドリック・スペシャルとクラウン・エイトの登場で、日本の大型高級車市場が幕開けたのだ。

本格ショーファーカーのトヨタ・センチュリー誕生

その後、日産は1965年にセドリック・スペシャルをさらに大きく豪華にした最高級車「プレジデント」を発売。5045/1795/460mm(全長/全幅/全高)の堂々たるボディに、4.0L V8エンジンを搭載した日本初の本格ショーファーカーとなった。

対するトヨタは、その2年後の1967年にクラウン・エイトに代わって「センチュリー」を投入。そのボディサイズは、クラウン・エイトよりも全長+260mm、全幅+45mm、ホイールベースを+120mm拡大した4980/1890/1450mmである(参考:現行クラウンクロスオーバーは4930/1840/1540mm)。
センチュリーは、宇治平等院の鳳凰をモチーフにしたエンブレムや独特のボディカラーを採用して比類なき高級感と重厚感で他を圧倒する雰囲気を醸し出していた。パワートレインは、最高出力150ps/最大トルク24.0kgmを発揮する新開発のアルミ製3.0L V8エンジンと、コラム式3速ATおよび3速MT、フロア式4速MTの組み合わせ。その他にもドア自動ロック(30km/h)、ビルトインエアコンディショナー、オートライトなど、性能、乗り心地、居住性などトヨタの技術の粋を結集したのだ。

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クラウン・エイトは、大型高級車に欠かせないV8エンジンや先進技術、豪華な装備を採用するなどして、日本の自動車メーカーが大衆車だけでなく、ステップアップして高級車づくりの道を切り開き、その礎を作ったモデルである。
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