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雨天時は事故件数が増えるため、より一層の安全運転が推奨される

気象庁は、2025年5月16日に九州南部が全国で最初に梅雨入りしたことを発表した。同年4月24日に、日本気象協会が発表した「2025梅雨入り予想」では、5月下旬と予想されていたが、実際は平年より14日、前年より23日早い梅雨入りとなったようだ。
そして、九州南部の梅雨入りを皮切りに5月19日に奄美、5月22日には沖縄の梅雨入りも発表されることとなった。
自身が住んでいる地域でないとはいえ、梅雨入りの発表で、本格的な長雨の季節の近づきを意識する人も少なくないだろう。梅雨は年間を通じてもっとも雨の日が集中し、道路環境が大きく変化する季節である。路面が濡れて滑りやすくなるうえに、視界も悪化しやすい。
このような状況が続いた結果、交通事故のリスクが上昇することは言うまでもない。
実際、首都高速道路株式会社の調査によれば、雨天時の事故件数は晴天時と比較しておよそ4倍にも達しているという。そのため、スリップ防止のためにカーブ手前での減速、早めのワイパー作動、車間距離を十分に取ることなどが推奨されている。
とくに、高速道路や幹線道路ではスピードが出ている分、わずかなブレーキの遅れやハンドル操作のミスが大事故につながるおそれがある。梅雨期の運転においては、普段以上に減速・車間距離の確保を徹底することが必須と言えるだろう。
ドライバーは「泥はね運転」にも注意が必要
では、他にもドライバーが注意しておくべきポイントはあるのだろうか。
JAFの担当者は、「水たまりができている道路では、ドライバーはタイヤがはね上げた水しぶきが歩行者にかからないよう、十分に注意して走行する必要があります」と話す。通行時の水しぶきが歩行者にかかると、「泥はね運転違反」に問われるおそれがあるためだ。
泥はね運転違反は、違反点数こそないが反則金7000円が科せられる、れっきとした違反行為である。さらに、泥はね運転で対向車が巻き上げた水しぶきによって、前方の視界が妨げられるおそれがあるなど、事故を招く重大な要因にもなりかねない。
JAFが2016年におこなった実験では、速度ごとの水しぶきの挙動が明らかになっている。
たとえば、時速40kmの場合は、身長約150cmの歩行者の肩の高さまで水しぶきが上がり、車両の側方へは約2mにわたって水がはねることが確認された。この結果、歩行者の衣類が濡れ、歩行が明らかに妨げられるという実害が生じたという。
そして、時速20kmでは水しぶきの勢いはやや抑えられたものの、歩行者の足元に水がかかることが確認されているなど、依然としてリスクがあることがわかる。一方、時速10kmでは、水しぶきが歩道に届くことはなく、歩行者への影響はほぼ見られなかった。
これらの結果から、歩行者がいる場合には水たまり付近で十分に減速し、極力低速で通過することが重要であるといえるだろう。
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このように、雨天時の走行には多くの危険が潜んでいるため、交通事故のリスクは晴天時と比べて格段に高まる。路面の滑りやすさ、視界の悪化、水たまりによるハンドル操作の乱れ、水はねによる歩行者への影響など、注意すべき要因は枚挙にいとまがない。
さらに、周囲の歩行者や他の車両の動きも読みにくくなるため、わずかな油断が重大な事故に直結する。こうした状況下では、いつも以上に慎重な運転を意識し、減速・車間距離の確保・早めのブレーキ操作を徹底する必要があるだろう。